糖尿病で透析治療が必要になるのはなぜ? ~人工的に血液を綺麗にする理由を解説~

この記事のポイント

  1. 糖尿病の合併症“糖尿病性腎症”が進行すると、透析治療や腎移植が必要になることがある
  2. 透析治療を避けるためには、糖尿病の治療を継続し生活習慣を改善することが大切
  3. 透析治療には“血液透析”と“腹膜透析”がある

糖尿病は、初期の段階では自覚症状がないものの、進行するとさまざまな合併症を引き起こします。ただ漠然と「糖尿病が進行すると透析治療が必要となる」というイメージを抱いている方は少なくないのではないでしょうか。

このページでは、糖尿病が進行するとなぜ透析治療が必要になるのかご紹介します。

糖尿病が進行すると透析治療が必要になるのはなぜ?

糖尿病が進行して血糖値が上昇した状態が続くと、血液中の老廃物や塩分をろ過する役割を持つ”糸球体”(腎臓内の毛細血管の塊)に圧がかかり、少しずつ破壊されていきます。その結果、腎臓の機能が低下してしまった状態を糖尿病性腎症と呼びます。一度壊れた糸球体の回復は困難なため、進行しないようにすることが重要です。

糖尿病性腎症は糖尿病と同様に初期症状はほとんどありませんが、進行すると体のむくみや食欲の低下、疲れやすさなどの症状がみられるようになります。ただし、こうした症状が出ない場合もあるため注意が必要です。

糖尿病性腎症が進行して体内の水分や老廃物、塩分やミネラルバランスを調整する腎臓の機能が消失してしまうと体液のバランスを保てなくなり命にかかわることになります。透析治療とは、そうした腎臓のはたらきを人工的に補う治療方法のことをいいます。

また、体液のバランスが乱れることで心不全や肺気腫などの病気につながって息切れなどが生じるほか、時に命にかかわることもあります。そのため、進行した糖尿病性腎症では腎臓のはたらきを透析治療で補う必要があります。

糖尿病性腎症の治療方法は透析治療以外にもある

前述のとおり、糖尿病性腎症にかかってもすぐに透析治療が必要になるわけではありません。以下では、糖尿病性腎症の治療方法についてご紹介します。

糖尿病性腎症の主な治療方法

  • 薬物療法

血糖や血圧・脂質などをコントロールするために薬物療法が検討されます。ただし、腎臓の機能が低下すると薬の成分が体に残りやすくなるため、治療薬の処方がこれまでと変化する可能性があります。

  • 食事療法

医師や管理栄養士の指導の下、腎臓に負担のかかりやすい塩分やたんぱく質、腎臓の機能が低下すると排出が難しくなるカリウムの摂取量を制限することが検討されます。病気の進行度合いによって指導内容は異なります。

  • 運動療法

食事療法と同様に病気の進行度合いによって指導内容は異なります。適度な運動を行い、適正な体重を維持したり体の機能を保ったりすることが大切です。

  • その他

禁煙を行うほか、お酒の飲みすぎを避けること、ストレスや過労を避けることも大切です。

糖尿病性腎症で透析治療が必要になるのはどんなとき?

糖尿病性腎症では、症状の有無にかかわらず定期的な尿検査・血液検査などから病気の進行度合いを調べ、それに合わせた治療方法を検討します。

透析治療を検討する際は、実際に現れている症状や血液検査で分かる腎臓の機能の程度、日常生活でみられる障害の程度などを総合的にみて判断します。

また、透析治療以外にも、腎臓を提供できる家族がいる場合など、状況が許せば生体腎移植を行うこともできます。そのほか亡くなった方から腎臓の提供を受ける献腎移植の希望登録を行い、移植可能な腎臓を待っている間に透析治療を行う場合もあります。

腎移植は透析治療に比べて治療後の生活の質(QOL)や生命予後が優れている一方で、免疫抑制薬を飲み続けたり、糖尿病の管理を厳格に行ったりする必要があります。そうした管理がうまく行かないと移植した腎臓が機能しなくなってしまう場合もあるため注意が必要です。また、家族の腎臓を移植した場合は、患者さん本人に加えて提供した家族も一緒に血圧や生活習慣の管理を行っていく必要があります。

透析治療の種類

透析治療には“血液透析”と“腹膜透析”があり、それぞれ特徴が異なります。

血液透析

血液透析とは、ポンプを使って血液を体の外へ押し出し、機械を通過させることによって血液中の老廃物や余分な水分を除去した後、再び血液を体の中へ戻す治療方法です。透析治療が必要となる頻度は週に3回程度で、その都度医療機関への通院が必要となります。また、1回の透析にかかる時間は4~5時間程度です。

なお、施設によっては在宅での血液透析の導入に対応できることもあります。その場合は、透析の頻度や時間も患者さんに合わせて調整することが可能となります。

血液透析を行うためには、より太い血管を作る手術が行われます。この血管を“内シャント”といいます。懸念される合併症には内シャントの閉塞へいそくや感染症のほか、透析中の血圧低下や筋けいれん、頭痛などがあります。

腹膜透析

腹膜透析とは、お腹にある腹膜に透析液を注入して一定時間を置いた後、体の外に排出することで腹膜にたまった老廃物を取り除く治療方法です。通院の頻度は1か月に1回程度です。患者さんの生活リズムに合わせて、日中や就寝中などに毎日透析を行う必要があります。

腹膜透析を行うためには、透析液の出し入れをする“カテーテル”という管を埋め込む手術が行われます。合併症としては、腹膜炎やカテーテルを埋め込むことによる感染症などがあります。

糖尿病を悪化させないために

透析治療が必要になるまで糖尿病を悪化させないためには、糖尿病性腎症にかからないよう血糖値のコントロールや動脈硬化を予防することが大切です。糖尿病の治療を継続的に受け、生活習慣の改善を心がけましょう。

また、糖尿病性腎症には初期症状がないため、糖尿病の方は定期的に血液検査や尿検査などの検査を受けることが大切です。

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