体内でアルコールが分解される仕組みとは?  飲み過ぎによるリスクも解説します

この記事のポイント

  1. アルコールは体内に入ると肝臓で処理される
  2. アルコールを摂取し過ぎると肝臓に負担がかかり肝臓病につながる
  3. 肝臓の障害は症状が出づらいため、定期的な血液検査が大切

アルコールは体内でどのように分解・吸収され、飲み過ぎると体にどのような影響があるのでしょうか。今回はアルコールの分解の仕組みと肝臓のはたらき、気を付けたい肝臓の障害などについて解説します。

アルコールの分解経路

アルコールは、まず胃や小腸で吸収されます。吸収されるとともに肝臓での分解が始まり、その後は筋肉や心臓などでも分解されます。

吸収

口から入ったアルコールのおよそ20%は胃で吸収されるといわれ、残りは小腸上部から吸収されます。アルコールの吸収にかかる時間は、飲酒後1~2時間程度と考えられています。

しかし、空腹時の飲酒ではアルコールの吸収速度が上がり、血液中のアルコール濃度も上がることから悪酔いしやすくなるといわれます。

分解

胃や小腸で吸収されたアルコールは、まず肝臓で分解されるのが一般的です。肝臓では“アルコール脱水素酵素(ADH)”のはたらきにより、アルコールをアセトアルデヒドと呼ばれる有毒な物質に変えます。次に“2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)”を中心とした酵素のはたらきにより、アセトアルデヒドを酢酸と呼ばれる無害の物質に変化させます。

アルコールが肝臓で分解されたことにより生じた酢酸は、血液の流れに乗って筋肉や心臓へ移動します。そこでさらに熱エネルギーを発しながら分解され、最終的に炭酸ガスや水へと変化します。アルコールの分解にかかる時間は、肝臓の大きさや持っている酵素のタイプ、年齢などによって大きく異なることが分かっています。

なお、口から入ったアルコールの数%は肝臓で分解される前に汗や尿、便などから直接体外に排出されるといわれています。

お酒の飲み過ぎは肝臓に悪影響を及ぼす可能性がある

前述のとおり、肝臓はアルコールの分解においてさまざまな役割を果たします。お酒を飲み過ぎてしまうと、有害物質であるアセトアルデヒドが多く作られることなどにより、肝臓にさまざまな悪影響をもたらすため注意が必要です。

以下では、お酒を飲み過ぎることによって生じる恐れがある代表的な肝臓の病気についてご紹介します。

脂肪肝

お酒の飲み過ぎによって懸念される病気の1つが脂肪肝です。脂肪肝とは、肝臓内に中性脂肪が多く蓄積した状態を指します。

脂肪肝にはお酒を飲み過ぎた人がなるアルコール性脂肪肝と、お酒に関係なく肥満や糖尿病によって肝臓に脂肪がたまる非アルコール性脂肪肝があるため、診断時は原因を突き止めることが大切です。どちらも症状がない場合がほとんどで、腹部超音波検査などをきっかけに発見されることが多いです。

アルコール性肝炎

アルコール性の脂肪肝を持つ方がさらに大量の飲酒を続けると、アルコール性肝炎という状態になります。アルコール性肝炎の主な症状は、腹痛や発熱などで、時に命に関わることもあります。また、白目の部分や皮膚が黄色くなる黄疸おうだんの症状がみられることもあります。

アルコール性肝炎と診断される方の多くは、その時点ですでにアルコール依存症になっており、飲酒をやめることが困難な可能性があります。

肝硬変

アルコール性肝炎と診断された方がさらに飲酒を続けると、肝硬変へと移行していきます。肝硬変とは、肝臓に長く炎症が生じることにより、肝臓の組織が硬くなり本来の機能を果たせなくなった状態のことです。最終的に肝臓がんを発症する方もいます。肝硬変はウイルス感染や自己免疫などによって起こることもありますが、長期に多量の飲酒をすることでも発症します。

主な症状としてはお腹に水がたまる腹水、黄疸、吐血などがみられます。肝硬変の中には一度かかると肝臓の状態が改善しないものもあります。しかし、アルコールによる肝硬変の場合、断酒を続けていれば肝硬変が改善することがあります。

アルコールと肝臓の検査

肝臓の病気は、ある程度進行するまで自覚症状が現れないことが一般的です。そのため、肝臓の病気や異常を早期に調べるためには、血液検査をする必要があります。血液検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ₋GTPなどの数値が指標になります。

AST(GOT)・ALT(GPT)

肝細胞がどのくらい破壊されているかを知るための数値です。数値が高いほど肝細胞が損傷していると判断されます。特にASTはアルコール性脂肪肝、ALTは慢性肝炎や肥満による脂肪肝の状態が分かります。

γ₋GTP

肝細胞の障害や胆汁がスムーズに流れているかどうかを調べるための数値です。お酒の飲み過ぎによって肝臓や胆道などのはたらきが悪くなり、胆汁の流れが悪くなると、数値が大きく上昇することが特徴的です。

アルコールを常習的に飲む人は定期的に検査を

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、障害が起こってもよほどのことがなければ症状が現れません。そのため飲酒習慣がある方は、お酒の量を適量にとどめることはもちろん、定期的に血液検査を受け、肝臓に異常がないかどうかこまめに確認するようにしましょう。

日本橋と武蔵境にあるサルスクリニックは、駅近の通いやすい立地とカフェのような院内でくつろいで受診いただけます。血液検査をはじめとした各種検査はもちろん、その結果を元に現在の肝臓の状態について説明したり、日常生活でのお酒との付き合い方について提案したりすることができます。

日常的にお酒を飲むという方や肝臓の状態が心配という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

※サルスクリニックの健康診断について、詳しくはこちらをご覧ください。

フローティングバナー フローティングバナー