尿路結石はジャンプすれば治るって本当?~尿路結石の治療法についてご紹介~

この記事のポイント

  1. 尿管結石は自然排石できる可能性がある
  2. 尿酸結石とシスチン結石以外は薬で溶かすことはできない
  3. ESWL、TUL、PNLという外科的治療をすることが多い
  4. 早期発見・再発防止のためには医療機関にご相談を!

無症状だったり激痛だったり、実は無症状の方が後々危険だったり…。早く治してしまいたい尿路結石。実はさまざまな治療法があることはご存知ですか?今回は尿路結石の治療についてご紹介します。

尿路結石とは

尿が通る、腎臓・尿管・膀胱・尿道のことを「尿路」と言います。その尿路の途中で、尿の中の特定の成分が固まって石のようになってしまうことがあります。これを「結石」と呼びます。尿路に結石が停留している状態が、尿路結石症です。

尿路結石は成分や大きさ、症状も様々で、腎臓の中にある腎結石の場合は無症状のことが多いですが、日本人に最も多く見られる尿管結石は「世界三大激痛」と言われるまでの痛みを伴います。今回は尿路結石の治療についてご紹介します。

尿路結石は治療しないとダメ?

疝痛発作という激痛発作が起こる尿管結石はもちろん、排尿痛や血尿などの症状を伴う膀胱結石や尿道結石も、早く症状をなくしたいですよね。では、多くの場合が無症状である腎結石は治療しなくても良いのかというと、そうではありません。腎結石は無症状であるがゆえに、健康診断などで偶然発見されない限り、自覚のないまま長期間放置してしまうケースが多くあります。放置してしまうと、小さい腎結石は尿管に落ちて尿管結石となり疝痛発作が起こるようになる可能性があります。尿管に落ちずとも腎臓の中で大きくなってしまうと、水腎症や腎盂腎炎などを引き起こすことがあります。そのため、10mm以上の結石や疼痛などの症状を伴うもの、片腎や腎機能低下など合併症による危険性が高い患者さんに関しては積極的治療適応の対象となります

結石の治療方法

結石は特別な治療をしなくても、尿と一緒に自然に排石されることがあります。外科的な処置を行わず自然排石を目指す治療を「保存的治療」、あとでご紹介する外科的方法で砕石する治療を「積極的治療」と呼びます。

保存的治療

自然排石

自然排石を第一選択とするのは尿管結石です。長径が10mm未満であれば自然排石が期待できるとされています。自然排石ができるかどうかは結石の大きさと深く関わっています。海外の研究では結石の長径が1mmでは87%、2~4mmでは76%、5~7mmでは60%、8mm以上になると39%が自然排石されたという結果が出ており、日本でも同様に、小さいほど自然排石率が高くなる報告がなされています。また、長径10mm以下の尿管結石の約3分の2は1ヶ月以内に排石されますが、1ヶ月経っても自然排石されない場合は積極的治療に切り替える必要があります。

自然排石を促すために最も大切なのは水分補給です。たくさん水を飲んで尿量を増やし、尿管の動きを活発にして結石を運び、排出を促します。1日に2リットル以上飲むと良いとされていますが、体格や生活習慣、持病によっても異なるため、自分にとっての適量は医療機関で相談するのがおすすめです。ここで注意していただきたいのは、飲み物にも結石の成分となるシュウ酸が入っているものが多いことです。可能であれば、水かシュウ酸含有量の少ない麦茶などを飲むようにしましょう。また、縄跳びや階段降下、ジャンプをするなど重力のかかる適度な運動をすることで結石が下りて来やすくなり、早く出す方法として有効であるとも言われています。

薬物療法

自然排石を促す薬

α1遮断薬とカルシウム拮抗薬は尿管拡張作用により10mm以下の結石の自然排石率を高め、排石までにかかる日数も有意に短縮されると報告されています。

尿管結石の痛みを抑える薬

尿管結石は自然排石を目指すにしても、疝痛発作に耐え続けるのは難しいでしょう。そこで、NSAIDsやモルヒネ製剤、ペンタジンといった薬剤で疝痛発作の痛みを和らげながら自然排石を目指すことが多くあります。また、先に挙げたα1遮断薬は排石を促進するとともに、痛みを抑える効果もあります。

結石溶解療法

様々な種類がある尿路結石の中で、尿酸結石とシスチン結石は薬を使って溶かすことができます。どちらもアルカリ性の尿に溶けやすい性質があるため、クエン酸製剤を用いて尿のpHを調整します。しかし、あまりアルカリ性に傾きすぎると、今度はリン酸カルシウム結石ができやすくなるので注意が必要です。尿酸結石の場合は他の薬も併用しながら治療すると、数ヶ月~1年程度で完全に結石が消失するとされています。シスチン結石はサイズを小さくすることは可能でも完全に消失させたり、自然排石させることが難しい場合が多く、その場合は積極的治療をおこなうことになります。

積極的治療

ESWL(体外衝撃波結石破砕術)

身体の外から特殊な装置で衝撃波を結石に照射し、結石を小さく砕いてから自然排石を促します。10mmの結石の場合、約80%の確率で4mm以下の大きさに砕くことができます。1回の治療は30分~60分と短く全身麻酔も使わないので、日帰りで行うこともできます。レントゲンで場所が特定できる腎結石と尿管結石のほとんどが適応となり、年齢制限もないため気軽な点がメリットですが、以下のようなデメリットもあります。

  • 結石が硬いと砕石できない
  • 砕石から排石までに2~3ヶ月かかり、その間に激痛発作が起こることも
  • 破砕片が尿管に詰まったままだと感染症や腎機能低下のリスクが高まる
  • 妊娠中は禁忌

ESWLの成功の鍵を握る要因は複数特定されていて、たとえば腎臓の中でも、腎盂という場所に結石がある場合は完全排石率が高いとされています。また、高齢者は腎組織の硬化などにより結石に届く衝撃波が弱くなってしまうため、若年である方が成功しやすいなどの特徴もあります。

TUL(経尿道的尿管結石砕石術)

内視鏡を使って行う治療には、TUL(経尿道的尿管結石砕石術)とPNL(経皮的腎砕石術)の2種類があります。かつてはESWLでの治療がメインでしたが、最近は内視鏡が進歩したため、TULが積極的治療の主流となっています。

TULは尿道から内視鏡を挿入して砕石装置で結石を砕く方法です。モニターで確認しながら破砕し、砕いた石を特殊なカテーテルを使ってそのまま外へ摘出することができます。ESWLでは破砕できない硬い結石にも対応できますが、全身麻酔を使うことが多く、数日~1週間の入院が必要となります。また、尿管を傷つけてしまうなどの合併症も稀にあるため、しっかり医師と相談しリスクとベネフィットを確認したうえで治療に臨む必要があります。

PNL(経皮的腎砕石術)

背中から腎臓まで穴を開けてそこから特殊な内視鏡を挿入し、破砕する方法です。砕かれた石はその場で内視鏡で吸引して摘出するため、取り残しの心配も少なく済みます。他の方法では解決できない大きな腎結石でも治療できることがPNLの強みです。特にサンゴ状結石は、ESWLとPNLの併用が効果的であるという報告があります。デメリットとしては、身体への負担が大きく7~10日間程度の入院が必要になることです。また、結石が大きく手術に時間がかかると、腎血管の破損による出血や敗血症などの合併症のリスクがあります。

結石の場所ごとの治療方針

腎結石と尿管結石は「上部尿路結石」、膀胱結石と尿道結石は「下部尿路結石」と呼ばれますが、日本尿路結石学会の調査によると、日本人の尿路結石は約96%は上部尿路結石であるそうです。以下では、上部尿路結石の治療方針について部位別・種類別にご紹介します。

腎結石の治療方針

腎結石を自然排石しようとすると、これまで無症状でおさまっていたものも、結石が尿管に落ちて疝痛発作が起こってしまうため保存的治療は使えず、積極的治療をおこなうことになります。どの治療をするかは結石の大きさによって変わります。

  • 10mm未満…ESWL
  • 10mm~20mm未満…ESWL、TUL、PNL
  • 20mm以上…PNL

10mm未満の腎結石は結石の位置によらずESWLが適用できるため、比較的簡単な処置で治療することができます。20mm以上になると、背中から腎臓まで穴を開けるPNLをおこなう必要が出てきます。その間の10mm~20mm未満の大きさに関しては、結石の状態や位置によって治療法が変わります。結石が小さいうちに痛み無く治療を行うためにも、定期的な検査が重要です。

また、腎結石はごく小さいものの場合はすぐに積極的治療をするのではなく、経過観察で良いという見方もあります。その場合、年に一度は検査をして、大きくなっていないか等、確認するようにしましょう。

サンゴ状結石の治療方針

サンゴ状結石とは、結石が腎臓全体を埋め尽くすまで大きくなってしまった腎結石の一種です。サンゴ状結石を無治療で放置した場合、多くは腎機能低下や敗血症などを招くため、直ちに積極的治療を行うことが望ましいとされています。PNLをおこなったあと、残っている結石に対してESWLを行うか、再度PNLを行うという方法が取られます。小さいものではTULが用いられることもあります。結石が極めて大きく重度の水腎症を併発しているなど、より困難な状況の場合には、腎臓を摘出せざるを得ないこともあります。

 

尿管結石の治療方針

尿管結石は先にも述べたように、まずは自然排石を目指します。しかし、1ヶ月経っても排石されない場合や結石が10mm以上の場合、積極的治療をおこなう必要があります。どの方法を取るかは結石の大きさと位置によって決まります。

  • 上部尿管/10mm未満…ESWL
  • 上部尿管/10mm以上…ESWLかTUL
  • 中部尿管/長径不問  …ESWLかTUL
  • 下部尿管/10mm未満…ESWLかTUL
  • 下部尿管/10mm以上…TUL

尿管結石の自然排石は、2mm未満のもので8.2日、2~~4mmで12.2日、4mm以上で22.1日が排石までの平均日数という報告もあるため、できるだけ小さいうちに自然排石を目指し、大きさと平均日数を見て積極的治療への切り替え時を適切に判断したいものです。

 

尿路結石を疑ったら

サルスクリニックでは尿路結石を発見するための、尿検査、血液検査、X線検査、超音波検査のいずれも実施可能です。更に、サルスクリニック有明には、どの成分の結石であっても結石の硬さまで特定できるCTを導入しています。

また、尿路結石は一度患うと再発しやすいことで知られています。再発させないためには食生活の改善が重要です。「今はないけど以前結石ができたことがある」という方、再発予防策はとっていますか?サルスクリニックには食事や栄養の指導をおこなう管理栄養士が常駐しています。不安な方はぜひ、サルスクリニックの医師と管理栄養士にご相談ください。

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