尿路結石は十人十色!?~尿路結石についての基礎情報をご紹介~

この記事のポイント

  1. 尿路結石には無症状のものと激痛のものがあるが、無症状こそ危険な場合も!
  2. 尿路結石には様々な種類があり、原因や対処法が異なる
  3. 尿路結石は、尿検査やエコーなど、比較的気軽な方法で発見できることが多い
  4. サルスクリニックは健康診断パックだけでなく、単体の検査メニューも豊富!

「尿路結石」という言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし尿路結石には、自覚症状の全くないものから、「世界三大激痛」と言われる激痛を伴うものまで、様々な種類があることを知っていますか?今回は、尿路結石とは何なのか、どんな種類があるのか、という基本的な部分に焦点を当てて解説いたします。

尿路結石とは

尿は腎臓でつくられ、尿管、膀胱、尿道を通って排泄されます。尿の通り道である、腎臓から尿道のことを合わせて「尿路」と呼びます。
腎臓は体にとって不要なものを体外に排出しようと血液を濾過するので、尿の中には様々な老廃物が溶け込んでいます。しかし、尿の中で特定の成分が飽和状態になってしまうと、それらが集まって結晶となります。この結晶が大きくなったり集まって固まったりすると、石のように固い塊である「結石」となります。尿路結石は、尿路のどこかに結石が存在する疾患です。

尿路結石の症状

尿路結石は、結石のできる場所、結石の成分に基づいて、いくつかの種類に分類できます。種類や結石の大きさによって症状は異なり、無症状のこともあれば、下腹部に「疝痛発作」と呼ばれる激痛が起こることもあります。尿路結石の疝痛発作は、「世界三大激痛」と言われることもあるほどで、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。しばらくすると痛みは落ち着きますが、一度で終わるパターンもあれば数時間おきに発作が起こることもあります。血尿・頻尿・残尿感・排尿痛なども典型的な症状です。
また、尿路結石によって尿の流れが停滞した場合、細菌感染を引き起こしやすくなります。腎臓まで炎症が波及した場合(急性腎盂腎炎)、高熱が出る上、治療が遅れると敗血症(細菌が血流に乗って全身に広がり、多くの臓器の障害を引き起こす疾患)となって命に関わる危険性もあります。また、石が大きく尿の通り道を塞いでしまうような場合、水腎症といって腎臓の出口が拡張し、場合によっては腎臓の機能低下につながるおそれがあります。
そのため、治療の必要性は症状以外にも、石の大きさ、場所により検討することになります。

尿路結石ができる場所

尿路結石は、

  • 存在する場所・大きさ
  • 結石の成分

などによって症状や治療法、再発防止策も異なってきます。
場所により尿路結石を分類すると、腎結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石の大きく4つに分けられます。このうち腎結石と尿管結石は「上部尿路結石」、膀胱結石と尿道結石は「下部尿路結石」とも呼ばれます。日本尿路結石学会の調査によって、日本人の尿路結石は約96%が上部尿路結石であると明らかになっています。

①腎結石

日本人に多い上部尿路結石は、腎臓で生成されます。尿管に流れず腎臓に留まったままのものが腎結石です。腎結石は鈍痛が起こる場合もありますが、多くの場合が無症状です。しかし、偶然腎結石が発見された無症状の患者さんの約3分の1は、3年以内に結石に関連した何らかの症状を発症し、そのうち約半数は結石に対する外科的治療が必要となったという調査結果もあるため、無症状のうちに発見し、すぐに薬剤治療等を始めることが最善です。
無症状であるがゆえに、気づかないうちに結石が腎臓全体を埋め尽くすまで大きくなることもあります。サンゴのような形の結石であるため、「サンゴ状結石」と呼ばれます。サンゴ状結石も無症状の場合がほとんどで、健康診断などで偶然発見されない限り自覚のないまま長期間放置してしまうケースが多くあります。すると、尿がうまく流れなくなり、背中や脇腹に強い痛みを生じる水腎症や、38.5度以上、ときには40度近くの高熱や腰部の強い痛みを伴う腎盂腎炎などを引き起こします。これらは腎機能低下に繋がり、腎臓を摘出せざるを得なくなることもあります。特に急性腎盂腎炎は治療が遅れると、細菌が全身へと広がって全身的な臓器障害を引き起こす敗血症となり、命に関わることもあります。

②尿管結石

腎臓でつくられた尿を膀胱に運ぶ25~30cmの管である尿管に、腎結石が流れ落ちたものです。尿管は腎臓とのつなぎ目部分、腸骨動脈(骨盤部分にある血管)と尿管が交わる部分、尿管と膀胱のつなぎ目の部分の3箇所が特に狭くなっています。尿路結石全体で見ても、これらの場所で結石が発見されることが多く、結石が詰まることで、疝痛発作が起こり、血尿も見られます。最も詰まりやすい「膀胱とのつなぎ目の部分」では残尿感など膀胱炎に似た症状も伴うこともありますが、結石がうまく膀胱に流れ落ちてくれば症状は急に消失し、多くの場合は尿とともに自然に排出されます。
先に紹介した腎結石と比べると、自覚症状に大きな差があります。気付かないうちに腎臓にダメージを与えないためにも、激痛発作に見舞われないためにも、定期的に検査して腎結石を早期に発見することも重要です。

③膀胱結石

腎臓で作られた結石が膀胱まで落ちてきて尿道へ流れずに留まってしまうものと、膀胱内で作られるものの二種類があります。膀胱内に溜まった尿の濃度が高くなるなどいくつかの原因が重なり、尿の成分がかたまりやすくなって結石がつくられます。頻尿、排尿困難、排尿痛、残尿感、血尿など、膀胱炎と似た症状が出ます。実際に膀胱炎を合併することも多くあります。高齢の男性に多く見られます。

④尿道結石

落ちてきた膀胱結石が尿道内に詰まって排出されないものです。尿道の長さの違いから、女性の発症は少なくほとんどが男性です。強い排尿痛や血尿が生じるほか、結石によって尿道が塞がれるため尿が出にくくなります。完全に塞がれると尿が全く出なくなってしまうので、緊急処置が必要になります。

結石の成分

結石のもとになるのは以下の成分です。
 

  • シュウ酸
  • リン酸
  • カルシウム
  • 尿酸
  • リン酸マグネシウムアンモニウム
  • シスチン

これらの成分が尿中に多くなりすぎると、尿に溶けきれなくなって成分同士が結合し、結石となってしまいます。
ただし、多ければ必ず結石になるというわけではありません。たとえばシュウ酸は、カルシウムと結合すると「シュウ酸カルシウム」という溶けにくい物質となり、やがて結石となってしまいます。しかし、尿中にマグネシウムが存在すると話は変わります。シュウ酸はカルシウムよりもマグネシウムと結合しやすいため、「シュウ酸カルシウム」にはならず、「シュウ酸マグネシウム」という別の物質が生み出されます。シュウ酸マグネシウムは溶けやすく自然に排出されるため、結石ができずに済みます。シュウ酸は仲良しなマグネシウムと一緒にいれば悪さはしないものの、周りがカルシウムばかりだと、一緒に悪さをしてしまう、というイメージです。
つまり、結石のもとになる成分が尿中にあっても、それらと結合して一緒に排出させてくれるマグネシウムやクエン酸などが十分にあれば結石とならずに済むのです。

①カルシウム結石

カルシウムが関わる結石には「シュウ酸カルシウム結石」と「リン酸カルシウム結石」があります。これらは表面がギザギザしているため尿管に引っかかって排出されにくい上、粘膜を傷つけて血尿が出やすい特徴があります。尿路結石全体の約8割がシュウ酸カルシウムと言われています。尿路結石の具体的な原因についてはまた別の記事でご説明しますが、「カルシウムが悪さをするなら、カルシウム摂取量を減らせば良いんだ!」というわけではありません。不思議に感じるかもしれませんが、カルシウム結石はむしろカルシウムが不足している場合にできやすくなるという研究結果が明らかになっています。

②尿酸結石

尿酸は、プリン体という物質が肝臓で分解されるときに生じる老廃物です。尿酸は通常、尿とともに排出されますが、尿が酸性に傾いていると溶けにくい性質があるため、排出されずに尿酸結石となってしまうことがあります。尿酸結石は尿路結石全体のうち5パーセントほどを占め、罹患者の多くが40~50代の男性です。詳しくは別の記事でお伝えしますが、酸性尿を防ぐことが尿酸結石をつくらないポイントとなります。

③リン酸マグネシウムアンモニウム結石

尿素分解菌という菌が尿路に感染することでできる結石です。尿酸結石全体の約7パーセントがこれに当たります。尿道が短い方が菌に感染しやすいため、女性に多く見られます。
菌が原因で尿が強いアルカリ性に傾きますが、リン酸マグネシウムアンモニウムはアルカリ性の尿に溶けにくい性質を持っているため、上手く溶けずに結石となってしまいます。
この結石は細菌を増やして短期間で結石を大きくしていくため、自覚症状のないまま腎臓全体を埋め尽くす「サンゴ状結石」となりやすい特徴があります。


④シスチン結石

シスチン尿症という、1万8千人に1人の割合で発症する遺伝性疾患により引き起こされます。尿細管の機能異常で4種類のアミノ酸が過剰に尿中に排泄されますが、そのうちシスチンのみ水に溶けにくい性質を持っており、結石をつくります。青年期に発症して再発をくり返す特徴があります。

結石の場所と成分の関係

尿路結石が「上部尿路結石」(腎結石・尿管結石)と「下部尿路結石」(膀胱結石・尿道結石)に大別される理由の一つに、結石の成分に違いがあることが挙げられます。

上部尿路結石:ほとんどがカルシウム結石
下部尿路結石:リン酸マグネシウムアンモニウム結石、尿酸結石が多い

(ただし上部尿路結石の中でも、腎臓いっぱいに広がる「サンゴ状結石」になりやすいのは、シスチン結石や尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石です。)

また別の回で解説していきますが、結石の位置や成分が異なれば、具体的な原因や予防法・治療法も大きく異なります。何か異変を感じたら必ず医療機関で検査をして適切な治療を行うことや、無症状であっても早期に発見できるように、定期的に健康診断をすることを強くおすすめいたします。

できやすいのはどんな人?

男性の7人に1人、女性の15人に1人が一生のうちに尿路結石を経験するとされており、男性の方がかかりやすいことがわかります。特に下部尿路結石に関しては大部分が男性です。細かく見ると、男性は30代~50代に多く、女性は女性ホルモンの変動の関係で、50代以降に多く発症します。
また、日本における上部尿路結石の増加原因は食事や生活様式の欧米化によるところが大きいと『尿路結石症診療ガイドライン』にも明記され、食生活や運動などの生活習慣が尿路結石の発症と密接に関係していることが伺えます。肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある人の発症リスクが高いことも明らかになっています。生活習慣についても結石の種類によって気をつけるべき点が異なりますので、専門家のアドバイスを受けることが解決の近道です。

尿路結石の検査

尿路結石について様々な種類があるということをメインにお伝えしてきましたが、「実際に尿路結石を見つけるためにはどのような検査が必要なの?」ということについて最後にご紹介します。

①尿検査

尿検査をした際に、健康な人は黄色っぽい尿ですが、尿路のどこかに異常があると、赤っぽかったり白っぽく濁っていたりすることがあります。正常な尿は弱酸性ですが、尿酸結石やシスチン結石の場合は酸性、リン酸カルシウム結石やリン酸マグネシウムアンモニウム結石の場合はアルカリ性になることがあります。尿を遠心分離機にかけて沈殿したものを顕微鏡で見ると、結石のもとになる成分が発見されて尿路結石と診断できることもあります。

②血液検査

血液検査も尿路結石の発見に役立ちます。直接的に尿路結石を特定できるというよりは、たとえば白血球やCRPという、体内のどこかで炎症が起こっている場合に数値が上がる項目の値が高いと、尿路感染症の疑いが出てきます。尿路感染症と尿路結石は併発する場合が多いため、そこから尿路結石を発見できることがあります。他にもこのような間接的に尿路結石の存在を示す項目は複数あるため、血液検査の結果は医師にしっかり説明してもらい、「再検査した方が良い」などと言われた場合には、必ず指示に従いましょう。

③単純X線検査

いわゆるレントゲン撮影のことです。これによって、シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石ははっきりと写るため、容易に発見できます。しかし尿酸結石などは写らず、2mm以下の小さな結石も写らないため、全てを発見できるわけではありません。

④超音波検査

いわゆるエコー検査です。結石の成分に関係なく発見できるため、レントゲンには写らなかった尿酸結石やシスチン結石などにも気づくことができます。結石が5mm以下の場合や結石の場所によっては見つけられないこともあります。

⑤CT

様々な角度から身体にX線を当てて断層画像化する検査です。どの成分の結石であっても確認できます(スライスの厚さによっては小さな石は発見できないこともあります)。更に、結石の硬さを特定できるため、治療する際にも役立つデータが得られます。

サルスの豊富な検査メニューをご活用ください!

サルスクリニックの健康診断では、複数項目がセットになっている一般的な健康診断の他、必要なものだけ選択して受けられる検査メニューを豊富に取り揃えております。
また、今回の記事ではご紹介しきれませんでしたが、尿路結石の治療や再発予防には栄養管理が非常に重要です。管理栄養士が常駐しているサルスクリニックでは、ストレスを溜めずに治療に取り組めるような食生活改善のご提案を心がけております。
すでに何かしらの症状がある方はもちろん、特に不調がない方も、定期的に健康診断を受けて自分の身体と向き合うことは将来の健康への投資となりますので、ぜひお気軽にお越しください。

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