複雑だけど覚えておきたい尿路結石の食事療法

この記事のポイント

  1. カルシウム・クエン酸・水分は多めに摂取する
  2. シュウ酸の多く含まれる食品は避けるか調理法を工夫する
  3. 肉食に偏らない食事を心がける
  4. 具体的な食べ合わせや調理方法などはサルスクリニックの栄養指導で!

尿路結石には、自覚症状の全くないものから「世界三大激痛」と言われる激痛を伴うものまで、様々な種類が存在します。そして、再発率のとても高い疾患でもあります。今回は尿路結石にならないために、再発させないために、食事面でどのようなことに気をつけるべきかをご紹介します。

カルシウムを多めに摂取する

尿路結石全体の約8割は、シュウ酸とカルシウムが結合したシュウ酸カルシウム結石であると言われています。カルシウムの摂取量を減らせばシュウ酸カルシウム結石ができにくくなると言われていたこともありましたが、むしろカルシウムが不足するとシュウ酸カルシウム結石ができやすくなってしまうということが現在では明らかになっています。
カルシウムを多く摂取すると、尿中に排出される前段階である腸の中でシュウ酸とカルシウムが結合します。するとそのまま便として排泄されるので、シュウ酸もカルシウムも尿に運ばれなくなり、結石になりづらくなるのです。

水分を多めに摂取する

水分摂取量が少ないと尿量も少なくなり、尿が濃くなります。するとカルシウムやシュウ酸などの結石生成物質の濃度が高くなり、結石ができやすくなります。逆に水分を多く摂取すると結石を抑制する成分の濃度も低下しますが、それでも水分摂取によって尿量を増加させることは結石予防に有効であることが明らかになっています。1日の尿量が1000mL以下であると結石のリスクは高まり、2000mL以上になると低下するとされています。飲んだ水分が全て尿として排泄されるわけではないので、2リットルよりも多く水を飲むように心がけると予防効果が高まりやすいでしょう。ただし、腎臓病や心臓病をお持ちの方は、水分摂取量に注意が必要ですので、必ず主治医に確認してください。そのほか、個人の体格や生活スタイル、住んでいる地域の気候によっても必要水分摂取量は異なりますので、医療機関で相談して目標摂取量を定めた方が良いでしょう。

また、飲料であれば何を飲んでも良いわけではないという点に十分注意してください。コーヒー、ウーロン茶、紅茶、緑茶、ビールなどにはカルシウム結石の原因となるシュウ酸が多く含まれています。ビールには尿酸結石のもととなるプリン体も多く含まれるため、より注意が必要です。砂糖入りの清涼飲料水も結石のリスクを増大させると言われています。海外の研究では、1日1本以上コーラを飲む人では23~33%腎結石の発症リスクが高かったという報告もあります。オレンジジュースやレモネードは、尿路結石のリスクを低下させるカリウムやクエン酸を多く含みます。しかし、ビタミンCの過剰摂取により尿中シュウ酸排出量が増える、エネルギー過多が肥満に繋がって結石のリスクも上がる、という見解もあり、現状はこれらの良し悪しについて明確な結論は出ていません。何事もほどほどに、と心がけることが大切かもしれませんね。

クエン酸を摂取する

クエン酸は尿中でシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムの結晶化を抑制する働きがある上、尿のアルカリ化を促進して酸性尿を改善し、尿酸結石やシスチン結石ができるのを防ぐ効果もあります。みかん、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類や、酢、梅干しなど酸味のある食物に多く含まれます。
ただし、果物はシュウ酸含有量が多い傾向にあるため、食べ過ぎにも注意が必要です。クエン酸入りの清涼飲料水も多く販売されていますが、糖分の過剰摂取とならないようにしましょう。
また、尿中のクエン酸量は動物性たんぱく質を多く含む食生活によって減少するため、肉食に偏らない食事を心がけたいですね。

 

摂取量に注意が必要なもの

シュウ酸

シュウ酸カルシウム結石の割合の多さからもわかるように、結石形成のリスクは尿中のシュウ酸量が鍵を握っています。しかし、シュウ酸は様々な食品に含まれるため、食事におけるシュウ酸量の管理を厳密に行うことは現実的ではありません。
そこで、シュウ酸の少ない食べ物を選んで食べるのではなく、特に多くシュウ酸を含む食品を控えめにしましょう。尿路結石症診療ガイドラインによるとシュウ酸は野菜類やお茶類に多く含まれるものがあります。いくつかの食品の可食部100gあたりの含有量を見てみましょう。

野菜類

  • ほうれん草…800mg
  • キャベツ、レタス、ブロッコリー、カリフラワー…300mg
  • ナス…200mg
  • 大根、小松菜、カブ…50mg

お茶類

  • 玉露…1350mg
  • 煎茶、抹茶…1000mg
  • ほうじ茶…286mg

野菜類ではほうれん草が群を抜いて含有量が多いとわかります。見た目が似ていても、小松菜はほうれん草の16分の1しかシュウ酸が含まれていません。
日本茶類も玉露や煎茶などと比べて、それらの茶葉の色が変わるまで焙煎して作るほうじ茶の方が圧倒的に含有量が少ないことがわかります。
しかし、これらのシュウ酸が多い食品を一切摂らないというわけにもいきません。調理法や食べ合わせを工夫することで悪影響を減らしましょう。

たとえば、シュウ酸は水に溶けやすいため、ほうれん草はしっかり茹でて水にさらすことでシュウ酸を半分程度の量まで減らすことができます。また、シュウ酸を多く摂取してもカルシウムも同時に多く摂れば腸の時点で結合するため、尿中で結合して結石となるのを防ぐことができます。よって、カルシウムが多く含まれる食品を一緒に食べるのも効果的と言えるでしょう。動物性の脂肪は腸内でのシュウ酸とカルシウムの結合を阻害するため、動物性脂肪を同時に摂らないという意識も大切です。
このように調理法や食べ合わせを工夫し「食べてはいけない食品」を減らすことが、ストレスを抱えずに食事療法を続けるコツの一つです。

 

動物性たんぱく質

動物性たんぱく質を摂取すると、大抵の場合は動物性の脂肪も摂取することになります。脂肪は体内で脂肪酸に分解されて腸に届きます。脂肪酸はカルシウムと結合しやすい性質があるため、結合し便として排泄されます。すると、腸内でカルシウムと結合すれば無害であったはずのシュウ酸が脂肪酸にカルシウムを奪われてしまう形となり、尿の中へ流れていかざるを得なくなり、結石のリスクが高まります。

プリン体

プリン体とは尿酸のもとになる物質です。尿酸は通常、尿とともに排出されますが、尿が酸性に傾いていると溶けにくい性質があるため、排出されずに尿酸結石となってしまうことがあります。プリン体は食品から摂取する以外に、体内でもつくられています。アルコール飲料はそれ自体にプリン体を多く含む上、体内でのプリン体生成を促進する作用と、腎臓での尿酸排泄を低下させる作用もあり尿酸結石の生成リスクが特に高いため注意しましょう。食品100gあたりプリン体が200mg以上含まれるものを「高プリン体食品」と呼びます。肉類、特にレバーなど内臓部位には多く含まれるため、肉食に偏りすぎない食生活を心がけましょう。

ビタミンC

ビタミンCは身体に良いという印象がある方も多いのではないでしょうか。しかし、尿路結石症に対しては、ビタミンCの摂り過ぎはリスクを増大させると言われています。1日に2000mg以上ビタミンCを摂取することはシュウ酸の尿中への排泄量を有意に増加させ、結石の生成リスクを上昇させると実証した研究もあります。特にシュウ酸カルシウム結石の既往歴がある方は、ビタミンCの摂取を1日100mg以下に制限することが推奨されています。

食事に悩んだらぜひご相談を!

「シュウ酸が多い食品って他に何があるの?」「これを食べるときにはどんな食べ合わせがいいの?」「高プリン体食品って具体的に何があるの?」「他の慢性疾患があるからそれも考えると何を食べていいのかわからなくなる!」など、尿路結石の食事療法は複雑です。ほうれん草やビタミンCの多い食品など、健康に良さそうなイメージのものが尿路結石にとっては悪影響ともなると、何を食べたら良いのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。
サルスクリニックには管理栄養士が常駐しており、できるだけ我慢が少なく食べたいものを食べながら食事療法が実践できるよう、一人ひとりに合わせたアドバイスをすることが可能です。尿路結石ができてしまった方も、再発させたくない方も、今は元気だけど日々の食事が適切であるか相談したいという方も、ぜひお気軽にお越しください。
調理法や食べ合わせを工夫する、どの食品も適度な量に抑える、という基本を自然と守り楽しくおいしく食事ができるよう、医師と管理栄養士が連携してお手伝いいたします。

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