減量外来では、減量外科医による個々の方に応じたテーラーメイドの治療ができます。食事療法、運動療法、薬物療法、手術など、様々な選択肢から治療を提供します。
一般に、肥満とはBMIが25以上の方です。さらに、高度肥満はBMIが35以上の方です。肥満度が高くなると、肥満に関連する重篤な合併症を有する可能性が高くなり、それが命を脅かす可能性も高くなります。
BMIとは Body Mass Index の略で、身長あたりの体重指数です。
BMI(kg/㎡) = 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
分類 | BMI値 |
---|---|
痩せている | 〜18.5未満 |
普通 | 18.5〜25.0未満 |
肥満1度 | 25.0〜30.0未満 |
肥満2度 | 30.0〜35.0未満 |
肥満3度 | 35.0〜40.0未満 |
肥満4度 | 40.0〜 |
肥満になる原因は、非常に複雑です。それは単に食べ過ぎの結果ではありません。一度、高度肥満が確立されてしまうと、食事制限や運動療法だけでは、長期間の減量効果は乏しいことが報告されています。
高度肥満の患者さんの平均寿命は明らかに短く、健常人と比較して2倍の死亡率であり、糖尿病や心臓発作による死亡の危険率は5倍から7倍といわれています。米国では年間40万人以上が、肥満が原因で亡くなっています。高度肥満の患者さんが糖尿病や心血管疾患のリスクが高くなるのは想像できると思いますが、がんになるリスクも2倍以上と言われています。
※国立がん研究センターによる発表
高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を治療している多くの方が、加えて生活指導を受けていると思います。高度肥満が確立する前に内科治療で減量を行うことは非常に有用です。薬物療法もありますが、副作用が多く、さらに継続的な減量を得られないことから一部の方しか継続することができません。
まずは内科的治療を受けていただきます。内科的治療は食事制限、運動療法、カウンセリングに基づいて行われます。
提携している医療機関では、減量手術の前に2週間「超低カロリーダイエット」を行っています。個人差はありますが、5〜10%の減量を得ることができます。現在、日本の保険制度ではBMI35以下の方は手術を選択するのが難しい状況にありますが、減量によって得られる恩恵を考慮すると、減量は必要なことであるといえます。一人ひとりに合わせて入院期間は調整しますが、基本的には2週間のご提案となります。興味のある方は一度ご相談ください。
1日3食低カロリー & バランスの取れた食事で体重管理
ストレッチや筋トレなどで筋肉を鍛え、脂肪燃焼を促進
管理栄養士による退院後も太りにくい体質改善の指導
高度肥満に対する手術は決して安易に行うものではありません。手術の対象となる患者さんは、このままだと命を落とすような危険性が高い患者さんです。決して楽をしてやせるための手術ではなく、患者さんの命を守るための手術であることをご理解ください。
多くの患者さんにとって、手術を受けずに肥満に関連する合併症で死亡する危険率の方が、手術の合併症で死亡する確率よりもはるかに高いといわれています。
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術に限り、以下すべてに該当する方は保険適応となります。
BMIが35以上の場合
BMIが32.5~34.9の場合
スリーブ状胃切除術では約2年で平均20-30%の体重減少が得られます。ただそれぞれの食生活や運動が大きく関わります。決められた食生活を守り、継続的に運動をした方は50%以上の体重減少も得ることができます。
また、スリーブ状胃切除術では減量効果に加えて、生活習慣病を治癒する効果もあります。治癒とは、内服薬がない状態で病気などが完全に治ることを意味します。
減量手術後の合併疾患治癒(寛解)率
Pories, et al. Ann Surg 1995, Sugerman, et al. Ann Surg 2003, Schauer, et al. Ann Surg 2003, Rasheid, et al. Obes Surg 2003, George SM, et al. World J Surg 1998, Buchwald, et al JAMA 2004.
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2022年10月9日
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