脂質異常症の食事療法~高TG血症、高LDL-C血症ごとの違いって?~

この記事のポイント

  1. TGとLDL-Cでは、上昇原因と改善要因はともに異なる
  2. TGとLDL-Cにはどちらもメリットがあるので、適量を摂取することが大切
  3. 高TG血症と高LDL-C血症では「バランスが取れた食事」をすることが最重要!

「脂質異常症」の診断基準にも含まれている「高TG血症」と「高LDL-C血症」。どちらも血液中の脂質量の異常に関する疾患です。しかし一括りに「脂質量の異常」といっても、数値改善に必要なポイントは異なります。また、これらの治療は食事を変えていくことが、数値改善への近道になります。
そこで今回は高TG血症と高LDL-C血症における食事療法の違いをご紹介します。

TGとは?

名称は「トリグリセライド」です。「中性脂肪」とも呼ばれています。
普段の食事で口にする肉や魚・食用油などの食品中に含まれている脂質や体脂肪の大部分を占めている物質がこれにあたります。
中性脂肪には人や動物の重要なエネルギー源として糖質の不足分補充の役割と、皮下脂肪として体温の保持や内臓を衝撃から守る役割があります。これらの役割は、全て身体にとって必要なものです。しかし、正常範囲を超えると身体に悪影響を及ぼします。

高TG血症とは?

中性脂肪の正常値は30~149mg/dl未満です。
高TG血症は、空腹時採血でTG 150mg/dl以上・随時採血でTG 175mg/dl以上の状態を指し、冠動脈疾患の発症や死亡に対するリスク上昇の恐れがあります。
TGの値の上昇原因としては、食べ過ぎや運動不足による、食事中の糖質・脂質・たんぱく質をエネルギー源として使い切れないことがあげられます。加えて、アルコールの過剰摂取はアルコール分解による中性脂肪の合成促進や脂肪肝に繋がります。

TG値を改善するためには?

トリグリセライドは、肝臓によって余分な糖質から合成されています。TG値を改善するためにはこの余分な糖質を減らすことが大切です。

余分な糖質を減らすために、具体的にどのようなことをしたら良いのか見ていきましょう。

①糖質制限

炭水化物には糖質と食物繊維が含まれています。そのうち、糖質を適正量にすることがTG値改善に有効です。糖質は主食であるご飯・パン・麺類の他にも、果物類や菓子類に多く含まれています。これらの食品を頻繁に食べている方、糖質中心の食生活を送っている方は特に注意が必要です。

②節酒・禁酒

アルコールに糖質が含まれていることから、節酒や禁酒が数値改善に有効です。

③消費カロリーを増やす

食事から得た栄養のうち消費できなかった分がTG値上昇に繋がるため、運動などで活動量を増やすことが有効です。階段を使う・腕を大きく振って歩くだけでも、消費カロリーを増やすことができます。

④減量

肥満を解消することはTG値改善に有効です。目標として、適正体重を目指せると良いでしょう。適正体重は[身長 m2×22]で計算することができます。高齢者の方はフレイルや低栄養予防のため、[身長 m2×25]で計算してください。ぜひ一度、ご自分の適正体重を調べ、その体重を目標に減量に取り組んでみましょう。

LDL-Cとは?

名称は「LDL-コレステロール」です。「悪玉コレステロール」とも呼ばれています。
細胞膜形成やホルモンなどの材料になるコレステロールを運搬する役割があり、生きていく上で必要なものです。
しかし、TGと同様に正常範囲を超えると身体に悪影響を及ぼします。

高LDL-C血症とは?

LDL-コレステロールの正常値140mg/dLを超えた状態を指し、冠動脈疾患の発症や死亡リスク上昇の恐れがあります。なお、先述したTG値の上昇と比較して、LDL-コレステロール値の上昇は動脈硬化を進行させる力が強いということも厚生労働省より発表されています。

LDL-コレステロール値の上昇原因としては、食事中における飽和脂肪酸の過剰摂取があげられます。「LDL-コレステロール」という名前から「コレステロールが原因ではないか」と思われがちですが、コレステロールの摂取量は飽和脂肪酸の摂取量ほどの影響力はありません。

LDL-コレステロール値の上昇を抑えるには、先述したように飽和脂肪酸の過剰摂取を控えることと、多価不飽和脂肪酸の摂取量が減らないように注意することが必要です。
飽和脂肪酸は肉類の脂身や生クリーム・バターなどの乳製品、加工品に含まれているパーム油やココアバターなどに多く含まれています。反対に魚や大豆油などの植物油等には、多価不飽和脂肪酸が多く含まれており、LDL-コレステロール値の改善に有効です。
しかし、植物油に多く含まれてる、多価不飽和脂肪酸の一つであるリノール酸は酸化しやすく、酸化したリノール酸を摂取すると動脈硬化に対して逆効果が現れることが示唆されています。また、魚や植物油に多く含まれているのは良質な油ではありますが、大量に摂取すると逆効果になってしまうため、適量を摂取することでプラスの効果に繋がります。

なお、LDL-コレステロールはトリグリセライドと比較すると、適正体重の維持による数値改善への効果は低いです。そのため、食事の質や内容を意識することで数値改善が期待されます。

LDL-コレステロール値を改善するためには?

具体的にどういった食事をしたら良いのか見ていきましょう。

①食事に魚を取り入れる

肉中心の食事の方は普段の食事に魚を取り入れることが有効です。しかし、毎日生魚や焼き魚を用意することは大変です。その場合、缶詰などの加工品を使うと良いでしょう。ただし、缶詰には塩分が多く含まれているため塩分のとりすぎに繋がりやすく、注意が必要です。缶詰を食べる際はタレの使用量を減らしたり、他の調味料は使わない・野菜などで味を薄めるなどの工夫をしましょう。

②加工品の摂取量を減らす

加工品の摂取量を減らすことも有効です。先述したように、加工品には飽和脂肪酸が多く含まれています。菓子パンや惣菜パン、菓子類など多くのものに飽和脂肪酸は含まれています。普段から加工品を多く摂取している方は摂取量を減らしましょう。

理想的な食事とは?

最後に、高TG血症と高LDL-C血症などの慢性疾患を罹患している方や採血結果で異常値が出た方に限らず、すべての人にとって有効な食事のポイントとして“理想的な食事”をご紹介します。

理想的な食事とは、主食主菜副菜が揃ったバランスの取れた食事を1日3回食べることです。

ご自身の食事を振り返ってみましょう。主食だけになっていたり、主菜や副菜に偏ったりはしていませんか?いま一度、食事のバランスや内容に目を向け、理想の食事に近づけるように食事を変えてみましょう。
この「バランスの取れた食事」をすることは、必要な栄養素だけではなく、ビタミンやミネラルを満遍なく摂取することと、病気のリスク低下への効果も期待できます。
詳細は、農林水産省の「食事バランスガイド」にも掲載されています。

サルスクリニックには管理栄養士がいます!

当院には管理栄養士が常駐しています。高TG血症や高LDL-C血症に限らず、慢性疾患をお持ちの方、健康診断で食事の改善を勧められた方、健康的に痩せたい方などへの栄養指導を医師と連携しおこなっています。食事をなんとかしたい、栄養管理と言われても難しくてよくわからない…という方は当院までご相談ください。病気の予防から生活習慣病の治療・改善までサポートさせていただきます。

 

【参考文献】
・(社)日本栄養士会全国病院栄養士協議会, 「脂質異常症の食事療法」, https://www.dietitian.or.jp/assets/data/learn/marterial/eiyo-kanri-leaflet-H23.pdf
・山岸良匡/「脂質異常症」, e-ヘルスネット, 厚生労働省, 2022年12月23日, https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html

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