ダニ退治法で脱アレルギー症状!ー通年性アレルギー性鼻炎の原因ー

この記事のポイント

  1. ダニは剥がれ落ちた人間の皮膚やフケなどを食べ、空気中の水分を吸収して生存・繁殖する
  2. ダニの死骸や糞もアレルゲンとなる
  3. 最もダニの住処になりやすいのは寝具
  4. アレルギー検査をしたい方や舌下免疫療法で根治を目指したい方は是非相談を

花粉症の方がマスクやメガネを装着するなどして花粉を回避することは、症状を抑えるために必須の対策です。通年性アレルギー性鼻炎でも同様に、アレルゲンの回避・除去を日常的に心がけることで、症状の軽減が期待できます。今回は通年性アレルギー性鼻炎の最大の原因であるダニを除去する方法についてご紹介します。

ダニの生態

家の中に潜むダニの80%以上は「ヒョウヒダニ」(「チリダニ」とも呼ばれる)であると言われており、日本では「コナヒョウヒダニ」と「ヤケヒョウヒダニ」の2種類がその大半を占めています。これらのダニは咬むことはなく、ダニの体や糞がアレルギーを引き起こす以外には、人間に害を及ぼすことはありません。マットレスなどの寝具、カーペット、その他布張りの家具に特に多く存在し、空気中の水分を吸収したり、人間から排出される皮膚やフケを食べたりして生息・繁殖しています。

ヒョウヒダニは気温が高くなる夏に数を増やしますが、単に温度が高いだけではなく、湿度の高さが非常に重要となります。日当たりの良い南側の部屋は温度は高いものの湿度が低いため、むしろ温度が少し低くても湿度の高い北側の部屋の方がダニの数が多い傾向にあります。一般的にダニは湿度50%以下になると大幅に増殖が抑えられると言われているので、梅雨から夏にかけては特に、除湿機などを使った湿度のコントロールが効果的です。

また、生きているダニだけでなく、ダニの死骸や糞もアレルゲンとなることを覚えておきましょう。たとえば布団乾燥機等の高熱モードでダニを殺したとしても、それだけでは死骸が残ったままなので、アレルゲンをきちんと除去できたことにはなりません。最後に掃除機で吸い取るなどの工夫をしましょう。

寝具

アレルギーが起きるとされるダニの最低数は40匹/㎡ですが、ある調査によると、

  • ベッドマット 21714匹/㎡
  • 敷き布団 10288匹/㎡
  • ベットパッド 1948匹/㎡

と、寝具に膨大な数のダニが観測されたそうです。

最近では、直径1ミクロン以上の粒子を通さずに空気の流れを可能にする不織合成繊維などが開発されており、これらを使った寝具カバーを使用することで、ダニの通過を完全に阻止できることもあるそうです。また、シーツ・枕カバー・布団カバー・毛布等の寝具は、毎週洗濯することで、ダニの数が減少することも実験で分かっています。できるだけ高温で乾燥させることも重要です。

日本では敷布団を干す習慣がありますが、目的は布団内の湿度を下げることです。そのため日中の湿度が低い時間帯に干し、15時くらいまでに取り込む必要があります。その上で掃除機を使ってダニの死骸や糞も除去すると、よりアレルゲンを減らせるでしょう。ちなみに敷布団は中央の表層部に、掛け布団は四隅にダニやダニの死骸が集まる傾向にあるため、掃除機で吸引する際など参考にしてみてください。

布団の中は多くの人にとって一日で最も長い時間を過ごす場所であるため、ダニのエサとなる皮膚やフケなどが非常に多く付着します。そのため寝具の管理はダニ対策において最も重要と考えられています。

寝具以外

カーペットや布張りのソファー、カーテン、ぬいぐるみなどをできるだけ減らすことでもダニを除去できます。カーペットは裏側に多くダニが存在するとも言われています。

湿度

ダニは空気中から水分補給をするため、ダニにとって居心地が良くならないよう部屋の湿度を50%以下に保つことがダニアレルギー対策の観点からは推奨されています。エアコンを使うことで湿度を下げられるため、特に蒸し暑い夏には適宜使用しましょう。日本の冬は乾燥するため加湿器を用いる方も多いかと思いますが、湿度を必要以上に上げすぎるとダニの増殖に繋がってしまうため、注意しましょう。

これらの対策はすぐに効果が出るとは限らないため、長期的に取り組むことが重要です。自分にとって継続できそうなものから取り組んでみましょう。

日本のガイドラインでの推奨

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会が発行する『鼻アレルギー診療ガイドライン』の中でもダニの除去方法について細かく述べられています。以下に引用しますので、ぜひ参考にしてみてください。

  1. 床面の掃除がけは、吸引部をゆっくりと動かし、換気しながら1㎡当たり20秒以上の時間をかけ、週に2回以上行う。
  2. 布団を天日干しや布団乾燥機で乾燥させる。週に1回以上、布団に掃除機をかけ、表と裏両面から丁寧に吸い取る。
  3. シーツ類、カバー類、ベッドパッド類、毛布類はこまめに洗濯する。
  4. 高密度繊維の防ダニシーツやカバーを使用する。
  5. じゅうたんやカーペットは敷かず、布製のソファーはできる限り避ける。
  6. 定期的に窓を開け換気し、部屋の湿度が60%を超えないようにする。除湿器なども活用する。
  7. フローリングなどのホコリのたちやすい場所は、拭き掃除の後に掃除機をかける。
  8. ぬいぐるみ、カーテンなど水洗いできるものはこまめに洗濯する。
  9. エアコンのフィルターを定期的に清掃する。
  10. 空気清浄機は浮遊しているアレルゲンの除去には有効である。
    (『鼻アレルギー診療ガイドライン2023』p.43)

根本的に治したい場合は舌下免疫療法も視野に

今回はダニアレルギー対策としてのダニの除去方法をメインに解説しましたが、アレルゲンに対する許容度は個人差が大きいので、「ダニアレルギーがあることで、家を掃除していない不潔な人だと思われてしまうのでは?」などと不安に思う必要はありません。安心して症状の改善を目指しましょう。

アレルギーは薬を服用しても根本的に改善することはできませんし、ダニの除去に取り組んでも目には見えないものなので思うように効果が出ないこともあるかもしれません。現在唯一根治が期待できる方法は「アレルゲン免疫療法」です。アレルゲンを長時間かけて少しずつ体内に取り入れることで徐々に身体をアレルゲンに慣れさせ、症状が出にくい体質へと変化させます。アレルゲン免疫療法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

アレルゲン免疫療法は、皮下注射で投与する「皮下免疫療法」と、錠剤を使用する「舌下免疫療法」の2種類があります。舌下免疫療法はサルスクリニックでも、ダニアレルギー用の「ミティキュア」と、スギ花粉症用の「シダキュア」の2種類を取り扱っています。3年以上根気強く服用を続ける必要がありますが、辛い症状と決別したい方は是非ご相談ください。


【参考文献】
Allergen avoidance in the treatment of asthma and allergic rhinitis
Allergen sampling in the environment
厚生労働省補助事業(アレルギー情報センター事業)『わかりやすいアレルギーの手引き(2023年版)』
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会『鼻アレルギー診療ガイドラインー通年性鼻炎と花粉症ー』,2023,
・髙岡正敏『お父さん、お母さんが知っておきたいダニとアレルギーの話』,株式会社あさ出版,2021.11

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