COPDの症状とは?~軽い症状でも甘く見ないですぐ受診しましょう~

この記事のポイント

  1. 喫煙がCOPDを引き起こす原因になる
  2. COPDは肺だけの疾患ではない
  3. 軽い症状でも受診し、早期発見・治療が大切

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺の気道が炎症を起こして狭くなり、肺胞が損傷する病気です。COPDという言葉には、慢性気管支炎(気管支の炎症で咳が続く)や肺気腫(肺胞の損傷)も含まれます。
COPDの最も一般的な原因は喫煙です。肺のダメージが大きいと、血液中に十分な酸素を取り込んだり、余分な二酸化炭素を排出したりすることが難しくなります。これらの変化により、息切れなどの症状が現れます。

ここでは、COPDの症状について解説します。

COPDのメカニズム

COPDの症状を知る前に、なぜCOPDが発症するのか理解する必要があります。
まずは、肺の働きを紹介します。通常、私たちが吸った空気は、鼻や口から気道を通って、肺の中の「肺胞」に入ります。肺胞の中では、酸素が壁を通り抜けて血流に入ります。逆に、二酸化炭素は血液中から肺胞に戻り、息を吐くことで排出されます。
COPDは、刺激的なガスや粒子を長年にわたって吸い込むことで起こります。最も一般的な原因はタバコの喫煙ですが、受動的にタバコの煙を吸い込んだり(副流煙)、他のガスを吸い込んだり(火事による煙、大気汚染など)することも原因となります。また、タバコの煙などの刺激物にさらされると肺にダメージを受けやすい人がいるなど、遺伝的な要因も関係しています。
時間が経つと、気道の炎症が慢性化し、気道や肺組織に傷がついていきます。このような肺の損傷により、息を吸ったり吐いたりすることが困難になり、酸素や二酸化炭素が肺胞の壁を通過しにくくなります。
以上のようなことから、COPDを発症し少しの運動で息切れをしてしまうなど、さまざまな症状が現れるのです。

症状

COPDは通常、発症して間もない時には無症状か、軽い症状しか出ません。そのため、発症してすぐは自覚症状がなく、発症していることに気が付かないことが多くあります。COPDの患者さんは40歳以上の人口の8.6%、約530万人の患者が存在すると推定(NICE study:有病率)されていますが、大多数が未診断、未治療の状態であるのです。

では、詳しい症状を見ていきましょう。

COPDの初期

COPDの多くの患者さんは40代から症状が現れます。透明な痰がからんだ軽い咳が出るようになり、特に朝起床した直後にその症状がみられるようになります。また風邪でもないのに咳が一日中続いたり、少しの運動で息切れを起こしたりすることが増えてきます。そして、次第に階段を使わなくなったり、歩くスピードが遅くなったり、無意識に運動量が減っていくのです。
運動中の息切れが増えてくると、多くの人は加齢や体力の低下が原因だと考えるため、初期の段階でCOPDの可能性があることに気が付く方は少ないです。場合によっては、肺の感染症(通常は気管支炎)になって初めて息切れに気づくこともあります。

COPDの進行

COPDが進行していくと、咳の回数が増え、痰の量も多くなります。痰の色は、透明または白っぽい色から、黄色や緑色を帯びた色に変わります。息切れはさらにひどくなり、喫煙を続けている方の場合は特にその傾向が強くなります。時には、重い荷物を持っただけでも息切れを起こし、すぐに疲れてしまうことも増えてきます。また、呼吸時にヒューヒュー、キュッキュッと音がすることもあります。
睡眠中は呼吸が少なくなるため、血液中の二酸化炭素レベルが上昇し、酸素レベルが低下して、起床時に頭痛が起こる場合があります。

肺感染症

COPDが進行すると、頻繁に肺炎などの肺感染症を発症するようになります。感染したことによって、安静時にもひどい息切れが生じるようになり、入院が必要になる場合もあります。肺の感染症から回復した後も、トイレや入浴、着替えなどの日常的な動作をする際に息切れが続くことがあります。

体重の減少

COPDが進行すると、体重が大幅に減少することがあります。患者さん一人ひとりの原因は異なりますが、例として、息切れのために食事をとるのが困難なこと、血液中の腫瘍壊死因子と呼ばれる物質の濃度が上昇することなどが挙げられます。


COPDが進行するにつれ、口をすぼめて息を吐いたり、立ち姿勢で両腕を伸ばしテーブルに手や肘をついて体を支えたりするなど、比較的楽に呼吸ができる方法をとることが増えてきます。やがて、空気が肺にたまり続けるために肺が膨張し、胸がたる状に大きくなる現象(樽状胸)がみられるようになります。また、血液中の酸素レベルが低下することにより、皮膚が青っぽい色に変化することがあります。
肺のもろくなった部分が破裂し、肺から胸腔へ空気が漏れ出して気胸を患うこともあります。このような状態になってしまうと、痛みや息切れが突然現れます。そして、重症度にもよりますが、胸腔から空気を抜くために医師による処置が必要になる場合もあるのです。

COPDの増悪

COPDの増悪とは、咳や痰の増加、息切れなどの症状が悪化することをいいます。運動をしていない時でも息切れを起こすことがあり、また、発熱したり全身に痛みを感じたりします。重度の増悪が起こると、溺れてしまったかのような激しい息切れ、発汗、錯乱、皮膚が青くなるというような症状がでます。
増悪は、一般的なアレルゲン、ウイルスや細菌感染などが原因で起こることが多いです。手洗いうがい、マスクの着用はもちろん、人ごみや風邪をひいている人と接することは極力控えると良いでしょう。また、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンを接種するなどの感染症対策をすることも大切です。そして、運動量をなるべく減らさないような生活を送り睡眠時間をしっかり確保することで、体力を維持し、細菌やウイルスに対する抵抗力を普段から高めると良いでしょう。


リスクが高まる病気

COPDが進行していくと、合併症が起こる可能性が高くなります。例えば、喫煙者同士で同じ量を喫煙している場合でも、COPDの人はCOPDではない人に比べて、肺がんになるリスクが高まります。
さらに、COPDは肺だけの疾患ではありません。心臓のリズム異常(不整脈)がみられるリスクも高くなることがあります。また、糖尿病や骨粗鬆症、うつ病などのリスクも高まります。

その症状を軽く見ないで!

はじめにも説明した通り、COPDは通常、発症してすぐの時には何の症状も出ないか、軽い症状しか出ません。階段の上り下りなど、体を動かしたときに息切れを感じることは、年齢を重ねていくとよくあること、咳や痰が続いても「最近調子が少し悪いな?」、「部屋が乾燥しているのが原因かもしれない」などと思うことが多いでしょう。このように、COPD発症時は、ありふれた症状であるため、見過ごしてしまうのです。この見過ごしが、COPDの発見の遅れにつながってしまいます。発見が遅れると、特に喫煙をしている人はどんどん病気が進行していき、少し動いただけでも息切れを引き起こすようになります。日常生活を送ることがままならなくなってきてから、はじめて受診するケースもあります。

COPDは、進行すると呼吸不全や心不全を起こす命に関わる病気です。また、肺だけでなく全身に影響をもたらします。早期発見早期治療が最も重要になりますので、特に40歳以上で喫煙歴のある方は注意をしましょう。そして、最近咳が続く、階段がつらくなってきたなどの症状がみられましたら、軽く考えず早めにご相談ください。また、禁煙外来のほか、医師をはじめ看護師や管理栄養士が協力して患者さんのサポートを行います。難しい禁煙も、患者さん固有の生活背景や価値観を基に適切な治療プランを立て、実施することで治療の成功に繋がります。

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