高血圧とは
血液が血管の中を流れる時に、血管の壁に正常よりも強い圧力がかかり、それが持続する状態です。高血圧が続くと血管が硬く厚く、もろくなり、これを動脈硬化と呼びます。動脈硬化になると、ある日突然、脳卒中や心臓病など生死に関わる危険な事態を招きやすくなります。高血圧は自覚症状がほとんどないまま進行し、命を脅かすことから「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と呼ばれています。日々の生活習慣が大きく影響しているため、危険な事態が起きる前に生活習慣を改善し、予防することが大事です。
塩分と血圧の関係
高血圧につながる習慣には塩分の摂りすぎがあげられます。詳しくは細かい身体の仕組みが関係しますが、簡潔に言うと「塩分が増えると水分が増えて、圧力が高まるから」です。
私たち人間には「ホメオスタシス(生体恒常性)と呼ばれる身体の外から受ける環境や内部の変化にかかわらず、身体の状態(体温・血糖・免疫)を一定に保つ仕組みがあります。この仕組みにより、人の血液中の塩分濃度は一定に保たれています(塩分濃度0.9%)。
そのため、塩分の摂取量が増えるとそれに比例して、身体に一定量多くの水分が溜め込まれます。身体の水分が多くなると血液量が増え、血管にかかる圧力が増し、血圧が上がります。たとえば塩分を1g摂った場合、血液中の塩分濃度を一定にするために120mlの水が必要です。
みなさんは外食や旅行などで普段よりたくさん食べたあと、体重が2~3kg増えたことがあるのではないでしょうか。もちろん食べすぎによるカロリー過剰もありますが、脂肪が1日で1kgつくことはほぼありません。これは「太った」というより、塩分の摂り過ぎで体内の水分が増えている、いわゆる「むくみ」で体重が増加していると言えるでしょう。そのため、食べすぎたあと数日間食事を節制すると徐々に身体から塩分が排出され、体重が戻っていきます。
1日の塩分の適正な摂取量は?
1日の適正な食塩摂取量は男性で7.5g、女性は6.5g、高血圧のある人は6g未満が目標となります。
しかし、日本人の平均塩分摂取量は1日10~11gと言われています。普段、何気なく食べていると目標値より3~5g程度はオーバーしてしまっているため、工夫と努力が必要です。塩分が気になる方は、1食あたり2~3gを目安にしてみましょう。
外食やコンビニ食が多い人は塩分量をチェック
加工食品などの商品のパッケージには「栄養成分表示」として「食塩相当量」の表記が義務化されており、食品のパッケージを見ればどれくらいの食塩が含まれているかがわかります。
最近では、提供する食事の栄養成分を表示する飲食店も増えています。特にチェーン展開している店ではホームページや店舗のメニュー表に成分が表示されていることが多いため、外食時は栄養成分表示がされている店を選び、塩分の少ないものを探すことも大切です。また、加工食品を購入、あるいは外食のときには、1食2~3gを目安に塩分量を確認する習慣を付けていくとよいでしょう。
栄養指導でこのようにアドバイスをすると、皆さん口を揃えて「食べるものがなくなる」とおっしゃるほど外食・コンビニ食は塩分が多い状態です。味付けがしっかりしていたほうが万人受けしやすく、顧客満足度が高くなるためです。コンビニや外食は多く売ることを目的としているので、健康に反して嗜好を重視した「味付けを濃くして満足度を上げる」という戦略が隠れているので注意しましょう。
それでは、具体的にコンビニ・外食の塩分を見てみましょう。
コンビニ食の塩分
- おにぎり 1~2g
- サンドウィッチ 1.5~2.5g
- 幕の内弁当 2.5~3g
- うどん・そば(汁あり) 4~5g
- サラダチキン 1.5~2g
- カップスープ・味噌汁 1.5~2g
- カップラーメン 5~6g
- ドレッシング・減塩 0.5g
- 青しそ 2g
- ひじき煮 1~1.5g
最近、サラダチキンなど高たんぱく商品が流行っていますが、実は塩分がとても多く含まれています。例えば、おにぎり、サラダチキン、味噌汁という低カロリーで400~500kcal程度に収まる組み合わせも、塩分量で見ると5g程度に相当します。とはいえ、仕事の都合などでどうしても外食、コンビニを避けられない方も多いでしょう。そういった方は、毎食外食やコンビニ食にならないように意識するほか、1日を通して塩分の調整をしてみましょう。
また「少し残す」という習慣も作れると良いかもしれません。カップスープの粉は全部使わないようにしたり、サラダのドレッシングは半分だけにするなど、自分で調整できることもあります。
意外と注意したいのが、ノンオイルのドレッシングです。低カロリーではありますが、塩分量は多くなりがちです。「減塩」の商品を活用すると上手に減塩できるので探してみましょう。
また、色々と組み合わせていると塩分が増えてしまうので、お弁当をチョイスするのも手です。できるだけ野菜がたくさん入ったお弁当を選べば、追加でサラダを購入しなくて済みます。幕の内弁当の場合は、付け合せの漬物を残すだけで塩分を0.5g程度カットできます。
外食の塩分
- ラーメン 7~8g
- うどん、そば 5~6g
- ミニ丼 1~2g
ラーメンやうどんなどの麺類は汁に塩分が多く含まれます。汁を半分残すだけでも3g程度塩分を削減できます。また、麺類は満足感がなく、つい大盛りや丼物のセットにしてしまうのではないでしょうか。麺類はスルスルとすすってしまうため、噛む回数が少なくなり、早食いになりがちです。できるだけよく噛むこと、セットにしないことが大事です。
- 寿司10貫 醤油なし 4~6g
味噌汁 2g
寿司はシャリに塩分が含まれるため、醤油がなくても知らないうちに塩分を摂取しています。さらにガリや味噌汁等が追加されるとどんどん塩分摂取量も多くなります。醤油はできるだけ控え、使うときにはネタに少しだけつけるようにしましょう。
- 定食(味噌汁・小鉢・漬物付き) 5~6g
- 丼もの(味噌汁・漬物付き) 4~5g
定食メニューは小鉢で野菜を摂取できますが、その分塩分摂取量も増えてしまいます。また、丼ものは汁がご飯に染み込んでしまうため、少しご飯を残すようにすると良いでしょう。定食・丼ものは漬物・味噌汁を残すことで、塩分を2g程度削減できます。
健康を維持するために、塩分の摂り過ぎは好ましくありませんが、外食を厳しく制限することで人生の楽しみが奪われてしまうこともあります。味付けの濃いものが多い外食でも、塩分の少ない食べ物を選んだり、「少し残す」などの食べ方を工夫するなど減塩を意識しながら楽しく食事をしましょう。
摂りすぎた塩分を身体から出す方法
塩分を摂り過ぎないようにすることも大事ですが、前述したように塩分の過剰摂取を避けられないこともあります。そのような時は塩分を排出することにも意識を向けてみましょう。
食事から摂る食塩の主成分は「ナトリウム」ですが、ナトリウムの排出を促すのが「カリウム」です。カリウムは多くの食品に含まれていますが、野菜や海藻、きのこ類、果物、豆類などに豊富です。特に野菜は不足している方が多いので、たくさん食べることを意識してみてください。野菜は毎食、生の状態で両手の平1杯分が目安量です。野菜を摂取する時はできるだけドレッシングなどの味付けは薄めにしましょう。
※腎機能が低下している方は、腎機能の状態によってカリウムの制限が必要になります。治療中の方は担当の医師、管理栄養士にご相談ください。
日々の測定習慣をつけましょう
自分の血圧が高いのか、体重が増えているのか減っているのか…。毎日測定する事も大事です。
日々体重を測定し変動を見て、普段より体重の増えが多かった時は前日までの食事内容を振り返ってみると良いでしょう。また、家庭用の血圧計で血圧も測定しましょう。
食事の塩分、わからないことは、ご相談を!
サルスクリニックには医師や看護師だけでなく、管理栄養士が常駐しています。食生活だけでなく、ライフスタイルやご職業などの背景を踏まえ、実行できる内容を患者様と共に考え、その継続をサポートします。高血圧気味の方、日々の食事の塩分にお悩みの方などもお気軽にご相談ください。
【参考文献】
・牧野直子/監修「第5版 いつも食べる量の塩分がひと目でわかる 塩分は早わかり」女子栄養大学出版部, 2022年2月
・特定非営利活動法人日本高血圧協会監修 沢井製薬株式会社「気をつけよう!血圧と生活習慣」, 2019年9月,
https://med.sawai.co.jp/request/mate_attachement.php?attachment_file=02dfef5e-9b0d-452b-9fd9-be66eb21619c00000000027E7565.pdf
【参考サイト】
・ローソン公式HP https://www.lawson.co.jp/
・セブンイレブン公式HP https://www.sej.co.jp/
・ファミリーマート公式HP https://www.family.co.jp/