一年中鼻がむずむず。通年性アレルギー性鼻炎かも!? ー通年性アレルギー性鼻炎の基本を解説ー

この記事のポイント

  1. 通年性アレルギー性鼻炎の主な原因はダニ
  2. 通年性アレルギー性鼻炎では主に、くしゃみ・鼻水・鼻づまりの症状が特に秋に強く出やすい
  3. 通年性アレルギー性鼻炎と喘息は合併しやすい
  4. 鼻炎には多くの種類があるため医療機関に相談を

毎年春や秋になるとくしゃみが止まらない場合、検査をしなくても「きっと花粉症だ」と想像がつく場合も多くあるかと思います。しかし、風邪ではなさそうなのになぜか季節を問わず鼻症状に悩まされているという方、いらっしゃいませんか?鼻炎には様々な種類があるので正確に知るには医療機関を受診する必要がありますが、「通年性アレルギー性鼻炎」の可能性があります。今回は通年性アレルギー性鼻炎について、基本的な部分をご紹介します。

通年性アレルギー性鼻炎とは?

アレルギーが原因でくしゃみや鼻水、鼻づまりといった鼻症状が出る「アレルギー性鼻炎」は、特定の時期にだけ発症する「季節性アレルギー性鼻炎」と、一年を通して症状が認められる「通年性アレルギー性鼻炎」とに大別されます。このうち季節性アレルギー性鼻炎の原因物質は樹木等の花粉です。季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に関しては別の記事で紹介しておりますのでぜひご覧ください。


今回はもう一つのアレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎について解説します。
通年性アレルギー性鼻炎を引き起こす物質は、ダニ・真菌・ペットの毛等が挙げられますが、最大の原因はダニです。厚生労働省による、免疫アレルギー疾患政策研究事業の一環で2023年1月6日~ 2月18日に実施された調査では、調査協力者24444人のうち63%の人が何らかのアレルギー疾患があると回答しています。その中で最も多かったアレルギー疾患は花粉症(41.4%)、次いで通年性アレルギー性鼻炎(31.2%)という結果が得られました。

通年性アレルギー性鼻炎の症状

通年性アレルギー性鼻炎の主な症状は花粉症と同じく、くしゃみ・鼻水・鼻づまりです。花粉症は原因となる花粉の飛散時期のみに発症するのに対して、通年性アレルギー性鼻炎の場合は一年を通して発症します。ただし、症状の強さは一定とは限らず、秋に悪化するケースが多く見られます。これは、高温多湿を好むダニは夏に増加しますが、死骸や糞は秋にも残ること、寒くなってくると取り出す冬用の布団にもダニやダニの死骸・糞が大量に付着していることが原因だと考えられます。

また、通年性アレルギー性鼻炎と比較すると花粉症の方が、一時期だけのものとはいえ、短期間に大量の花粉が飛散するため、症状が重くなる傾向にあります。

通年性アレルギー性鼻炎の合併症

もう一つ花粉症と異なる点として、眼の痒みや充血等の症状を併発することが少なく、一方で喘息を合併している人の割合が多いということが挙げられます。これは、喘息の原因のひとつが通年性アレルギー性鼻炎と同じく「ダニ」であることに起因します。特に小児喘息の大半(70~90%)はダニアレルギーを原因とする「アトピー型喘息」と呼ばれるものとなっています。喘息の人がアレルゲンの少ない住居に移り住むことで症状が大きく改善した、喘息患者の最大50%がアレルギー性鼻炎を合併していた、という調査結果もあり、ダニと鼻炎と喘息の関連性が分かります。

通年性アレルギー性鼻炎になりやすいのはどんな人?

喘息やアレルギー性鼻炎の家族歴がある人は、アレルギー性鼻炎を発症するリスクが非常に高くなる、すなわち、遺伝的要素が大きく関わっていると言われています。加えて環境的要素もアレルギー性鼻炎の発症を左右します。一般的に、住環境のアレルゲンが少ないほど、アレルギー症状の発現リスクが低くなるとされています。

しかし残念なことに、通年性アレルギー性鼻炎を引き起こす主なアレルゲンであるダニは、温度20~35度、湿度60~85%の環境で最も繁殖します。つまり高温多湿気候の日本はダニにとって大変居心地の良い場所となってしまっているのです。欧米などと比較して日本のダニの量はきわめて多いため、正しい知識を持って対策を施さなければ、日本に住む限り、ダニによる通年性アレルギー性鼻炎になりやすいとも言えるでしょう。

また、花粉症は10~20代での発症が多いのに対し、通年性アレルギー性鼻炎は3歳頃~10代と、若いうちに発症しやすい傾向にあります。これは、特定のシーズンにしか飛散しない花粉よりも、寝具などに常時潜んでいるダニの方が早い時期にたくさん曝露するためであると考えられます。

アレルギーが発症するメカニズムについては、以下の記事でより詳しくご紹介しております。


通年性アレルギー性鼻炎の診断

花粉症は花粉の飛散時期に限って鼻症状や眼症状が強く出ていれば、詳しく検査をしなくても病歴のみで診断が可能です。しかし、通年性アレルギー性鼻炎は多くの場合、病歴だけでは何が原因であるかわかりません。鼻炎の原因はアレルギーかも?と思ったら、様々な検査がありますので、必要に応じてアレルギー検査の実施を検討してみても良いかもしれません。各種検査についてはこちらの記事をご参考ください。

通年性アレルギー性鼻炎の薬物療法

通年性アレルギー性鼻炎の薬物療法として用いられることが多い薬をご紹介します。

  1. 鼻噴霧用ステロイド薬
    ・症状改善効果が強い
    ・くしゃみ・鼻水・鼻づまりのいずれにも有効
    ・副作用が少ない

  2. 第 2 世代抗ヒスタミン薬
    ・特にくしゃみや鼻水に対して即効性がある
    ・鼻づまりへの効果はやや弱い
    ・眠気等の副作用が第1世代から大幅に改善されている

  3. ケミカルメディエーター遊離抑制薬
    ・アレルギー症状を引き起こす体内物質を抑制する
    ・経口薬・点鼻薬・点眼薬がある
    ・効果が出るまでに2週間程度かかる

  4. Th2 サイトカイン阻害薬
    ・くしゃみ・鼻水よりも鼻づまりに効果がある
    ・他の薬剤との併用で効果が増強される

小さな不調にも向き合って、QOLの高い毎日を!

通年性アレルギー性鼻炎は、花粉症よりも症状は軽い傾向にあります。しかし、原因を特定せずにいると、不快な症状によってストレスが溜まってしまいます。風邪でも花粉症でもなさそうなのに鼻症状のある方は、医療機関で相談してみましょう。もしも通年性アレルギー性鼻炎であった場合、「アレルギーの原因となる物質を除去する」ということも症状の緩和にとって大変重要となります。当院では、各種検査を実施していますので、諸症状にお悩みの方や検査をご希望の方はお気軽にご相談下さい。

サルスクリニックの各種診療案内はこちら

 

【参考文献】
・富山大学医学部小児科学教室 アレルギー疾患疫学調査事務局 アレルギー疾患に関するアンケート調査 調査結果
・日本アレルギー学会『ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引き』
・平成22年度リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト
・Allergen avoidance in the treatment of asthma and allergic rhinitis
・Patient education: Allergic rhinitis (Beyond the Basics)
・Allergen sampling in the environment
・厚生労働省補助事業(アレルギー情報センター事業)『わかりやすいアレルギーの手引き(2023年版)』
・日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会『鼻アレルギー診療ガイドラインー通年性鼻炎と花粉症ー』,2023,
・髙岡正敏『お父さん、お母さんが知っておきたいダニとアレルギーの話』,株式会社あさ出版,2021.11

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