高血圧は薬で治せる?~生活習慣の改善と降圧薬の必要性~

この記事のポイント

  1. 降圧薬の種類と特徴
  2. 薬を飲んでいても、生活習慣の修正は必要
  3. QOLを下げずに治療を乗り切るためにも、クリニックに相談を!

高血圧治療において生活習慣の改善は必ず行わなければなりませんが、血圧値が非常に高い場合は生活習慣の改善のみでは思うように血圧が下がらないことがあります。そのような場合は、適切な薬を服用して治療していくことになります。今回は、高血圧治療のための降圧薬についてご説明します。

高血圧に、薬は必要?

高齢者の死亡原因として、実は脳心血管病(脳卒中や心疾患)はがんに次いで大きな割合を占める疾患となっています。この、脳心血管病の大きな要因となっているのが、高血圧症です。減塩を心がける、アルコールを控えるなど、生活習慣に気をつけるだけで血圧を下げられる場合もありますが、血圧値が高くなるほど生活習慣の改善のみで目標となる値まで血圧を下げることは困難になります。その場合、降圧薬(血圧を下げる薬)による治療が必要となってきます。

高血圧という状態だけでは自覚症状のない方が多いため、治療の必要性を感じられない、という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、治療の目的は現在の体調を改善することだけではありません。高血圧症により引き起こされる可能性のある脳卒中や急性心不全は命に関わりますし、後遺症が残ることもあります。つまり、その後のQOLに大きくマイナスの影響を与える疾患です。今ではなく未来のために降圧薬で血圧をコントロールし、脳心血管病の発症を予防し「健康に長生きしよう」ということが治療の目的となります。

薬は一生飲み続けないといけないの?

薬を始めたら一生やめられないのでは?と思う方も多いかもしれませんが、そんなことはありません。治療や生活習慣改善の結果、原因が取り除かれた場合には血圧が改善することもあります。薬は状態に合わせて量の増減や種類の変更、中止をすることもあります。

降圧薬って、どんなもの?

降圧薬がどのように血圧に影響を及ぼすかの作用(作用機序)が異なる、たくさんの種類が存在します。その中から、患者さんそれぞれにとって最も降圧効果(血圧を下げる効果)が高い薬を選択することが非常に重要です。少量から開始して、副作用が出たり効果が得られなかったりする場合には他の薬に変更します。

また、効果がないわけではないが不十分という場合には、同種類の薬を増量するよりも、他の種類の降圧薬を組み合わせて使う方が効果的というのが降圧薬の特徴です。さらに、合併症がある場合はその病態に適した薬を選択しないといけません。

降圧薬の種類

では具体的に、降圧薬にはどのようなものがあるのでしょうか。主要なものは次の5種類です。

  • Ca拮抗薬
  • ARB
  • ACE阻害薬
  • 利尿薬
  • β遮断薬

これらはどれも、脳心血管病を抑制する効果が証明されています。作用機序(薬が治療効果を発揮する仕組み)や副作用の出方がそれぞれ異なるため、どの薬が適しているかは人によって違ってきます。

また、それぞれの薬について、積極的適応(使用が特に推奨されるもの)・禁忌(使ってはいけないもの)・慎重投与(用法・用量の決定に特に注意が必要なもの)となる病態が存在します。つまり、誰もがどの薬でも使えるわけではなく、条件に合致した降圧薬を慎重に選択しなければなりません。積極的適応に該当するものがない場合は、Ca拮抗薬・ARB・ACE阻害薬・利尿薬が第一選択薬(最初に投与すべき薬)となり、そこからその方に合う薬を様子を見ながら選んでいくことになります。

ここで主要な5種類の薬について、どのようなものか簡単に見てみましょう。

Ca拮抗薬

高血圧とは、血液が血管の内側に加える圧力が強い状態です。この薬は、血管を広げて血液の通り道を広げ血圧を下げるものです。臓器障害を合併している場合や高齢者でも使うことができ、長時間に渡って作用するメリットがあるため、多くの症例で第一選択薬として用いられています。

ARB

Ca拮抗薬の次によく使われる薬です。血管を収縮させて血圧を上げてしまう物質の働きを抑制することによって血圧を下げる薬です。用量に関わらず副作用は低頻度で、心臓や腎臓に病気がある場合などに積極的に用いられます。妊娠中の方は使用できません。

ACE阻害薬

血圧を上げる物質を抑制するとともに、血圧を下げる物質を増強することで降圧する薬です。冠動脈疾患の発症リスクを抑える効果も認められています。副作用は空咳があり、日本人を含む東アジア人に多く出るため、日本では最大投与量は欧米と比較して少量に設定されています。一部の血液透析中の方や、妊娠中の方は使用できません。

利尿薬

尿の排出を促す薬です。尿と一緒に余分なナトリウムを体外に出すことで血圧を下げます。長期的には末梢血管抵抗を低下させることで、血圧を下げていきます。高齢者や糖尿病患者など、特に塩分の影響を受けやすいタイプの高血圧に効果が期待できます。また、心不全の予防効果もあります。

β遮断薬

心臓の過剰な働きを抑えることによって血圧を下げる薬です。交感神経活性の亢進が認められる若年者の高血圧などに対して積極的に使用します。脳心血管病の発症抑制に関しては他の降圧薬と同等の効果がありますが、高齢者の脳卒中発症予防効果の点で劣ることや降圧効果の程度が弱いことから、通常の第一選択薬には含まれていません。

この他にも、降圧薬はたくさんの種類があります。もともと慢性心不全の薬として使われていたネプリライシン阻害薬も、高血圧症に対して効果を発揮するということが2021年9月に認められました。

降圧薬の飲み合わせ・食べ合わせ

降圧薬同士の相互作用には降圧効果を高めたり、副作用を相殺するなど好ましい組み合わせもある反面、副作用が増強される場合もあります。また、薬だけでなく食品の中にも注意すべきものがあります。グレープフルーツやグレープフルーツジュースを飲んだ後に、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬を服用すると血中濃度が上昇してしまいます。

降圧薬は高血圧症の解消に大変有益ですが、薬の種類の選択はとても複雑です。医師としっかりコミュニケーションを取り、ベストな治療法を探していくことが大切です。


薬だけで治る?

では、薬さえ飲めば生活習慣に気を配る必要はないのかというと、そうではありません。薬でのコントロールには限界がありますし、生活習慣の改善は降圧薬の作用を増強し減薬に繋げることもできます。服薬の有無に関わらず、生活習慣を改善することは血圧をコントロールする上で重要な課題です。例えば、次のようなことは血圧のコントロールに大きな影響を及ぼすことが確認されています。

減塩

日本人の一日当たりの平均食塩摂取量は、平成29年の国民健康・栄養調査では、男性10.8g、女性9.1gと報告されています。これに対して高血圧治療のための減塩目標値は、一日あたり食塩6g未満であるため、意識的に取り組まないとクリアできません。減塩で血圧を下げるコツを紹介した記事もあるので、ぜひ参考にしてみてください。

運動療法

ACSM(米国スポーツ医学会)とAHA(米国心臓協会)は、運動を1回につき少なくとも10分以上持続し、合計して1日40分以上行うように推奨しています。ただし、高齢者や脳心血管病を合併している場合などは、事前に適切な運動負荷量を設定する必要があるので、クリニックでしっかり相談してから取り組みましょう。

適正体重の維持

肥満になると血圧は高くなりやすい傾向にあります。高血圧発症のリスクは、BMIが20未満の人と比べて、BMI25.0~29.9の人では1.5~2.5倍高くなります。体重を3%以上減量することで、有意に血圧が下がるとされています。肥満を合併する高血圧の人は、まず包括的生活習慣改善をして適正体重を目指しましょう。

正しい睡眠

睡眠障害は、交感神経系や視床下部-下垂体-副腎系の活動性を亢進し、長期的な影響として高血圧・脂質異常症・心血管疾患・糖尿病などの生活習慣病を発症させたり、体重増加につながります。また、中等度以上の睡眠時無呼吸症候群によっても血圧上昇が引き起こされます。十分な時間、質の良い睡眠がとれているかどうか、見直してみる必要がありますね。

ストレス解消

心理的・社会的ストレスによって高血圧の発症が2倍以上高まってしまうという研究結果もあります。ストレスが主な原因で血圧が上がっている場合は、降圧薬だけで血圧をコントロールするのは困難な場合も多く、メンタルヘルスケア専門医による精神・心理的アプローチの併用も考慮します。

防寒

冬に計ると血圧が高めに出るという経験がある方もいるかもしれません。寒いと身体が体温を保とうとして血管を収縮させてしまうため、血圧が上がってしまいます。脳心血管病による冬季の死亡率は、暖房や防寒が不十分な場合ほど高くなります。リビングや寝室は暖かくしていても、トイレや浴室・脱衣所などの暖房が見落とされやすいので見直してみましょう。

この他にも、野菜や果物を積極的に摂取したり、アルコールを控える、禁煙するなども心がける必要があります。これらのうちどれか一つだけを行うのではなく、複合的に取り組むことでより高い効果が得られます。

二次性高血圧

二次性高血圧は、腎臓機能の低下やホルモン障害など特定の病気が原因で血圧が高い状態のときに疑われます。この場合、原因となる病気を特定してそれを治療することが、血圧を降下させる方法となるため、先に述べてきたものとは対処法が異なります。高血圧の裏に別の病気が隠れている場合があるため、やはり医療機関でしっかり相談する必要があるということです。

家庭血圧測定

高血圧には様々な原因があり、治療薬も多くの種類と複雑な制限があります。高血圧を改善するまでには長い時間がかかることが多くあります。そこで大切なのが自分自身が病気や治療の必要性について理解し、自発的・積極的に治療を続ける姿勢を維持していくことです。

ここで役に立つのが家庭での血圧測定です。通院時だけ測定するよりも日常的に測定することで、常に自分の生活と血圧がどのように結びついているのかを実感することができます。また、降圧薬治療による過剰な降圧や不十分な降圧にも気付くことができます。特に薬の効果が何時間持続しているかを知るためには、家庭での血圧測定は非常に有用です。

まずは何よりも、自分自身の日頃の血圧状況を知ること。長期間、家庭血圧測定を続けると一日の中での血圧変動や季節による血圧変動も分かってくるので、家庭での測定を日課にすると良いですね。

クリニックに相談して、最適な治療を!

高血圧治療は、薬物療法にしても生活習慣の改善にしても、うまくいかないと副作用や食事制限などのストレスでQOLが下がってしまいます。できるだけ自分らしく楽しめる生活を保ちながら、前向きに治療していける方法を見つけていけるかどうかが肝心です。
日本橋と武蔵境にあるサルスクリニックでは、医師や看護師のほか、管理栄養士も含めた医療チームがサポートいたします。ライフスタイルやご職業などの背景も踏まえ、患者さんそれぞれに寄り添った治療をご提案させていただきます。挫折しがちな高血圧の治療でも、長く続けられるよう一緒に考えていきましょう。ぜひ一度お越しください!