慢性腎臓病(CKD)の食事療法~カリウム・リン~

この記事のポイント

  1. 慢性腎臓病の進行度によってカリウム・リンの摂取に注意
  2. 具体的な制限は個人の状況によって異なるため、医師や管理栄養士に相談したうえで行うことが大切

慢性腎臓病のたんぱく質・カリウム・リンなどの具体的な制限は個人の状況によって異なります。腎機能の状態や、合併している病気の状態、性別、年齢、身体活動レベルといった要素によって内容が大きく変わるため、いずれも自分で判断するのではなく医師や管理栄養士に相談したうえで行いましょう。

カリウムの働き

カリウムは体内のバランスを保つために欠かせないミネラルの一種です。細胞の外液に存在するナトリウムとバランスをとりながら細胞を正常に保ったり、血圧の調整、筋肉の収縮に関与し、常に一定したよい体内の状態を維持するのに役立っています。
また、ナトリウムを体の外に出す作用があるため、塩分の摂り過ぎを調整し血圧を下げる効果があります。

カリウムの作用についてはこちらの記事でもご紹介しています。

なぜカリウム制限が必要か

腎臓が正常に機能しているときは、多くのカリウムを摂取して尿とともにカリウムが排泄されます。むしろ、体内の余分なナトリウムを排泄するため、積極的に摂ることが推奨されています。
しかし、腎臓の機能が低下すると排泄が追いつかなくなり血液中に蓄積されます。その結果、血液中のカリウム濃度が高くなった状態を高カリウム血症といいます。高カリウム血症になると、不整脈や心停止の危険性が高まります。カリウム自体が腎臓に悪いわけではなく、腎臓の機能が低下するとカリウムが問題を起こす場合があるということです。
CKDのステージが上がるごとにカリウム制限が必要になります。

CKD ステージによる食事療法基準
(慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版より、一部改変)

 

※透析中の方を除く
※エネルギーや栄養素は,適正な量を設定するために,合併する疾患(糖尿病,肥満など)のガイドラインなどを参照して病態に応じて調整する.性別,年齢,身体活動度などにより異なる
※体重は基本的に標準体重(BMI=22)を用いる

上記表のガイドラインでは、ステージ G3a までは制限せず、G3bでは 2,000 mg/日以下、G4~G5 では1,500 mg/ 日以下がカリウム制限の目標とされています。しかし、検査結果でカリウム値が安定していれば制限が不要なこともあります。個々に応じてコントロールすることが重要です。

カリウム制限のポイント

カリウムはほとんど全ての食材に含まれています。
特に多く含まれるのは、生野菜、生果物、イモ類、海藻類、乾物、乳製品、豆類(豆腐は除く)、肉、魚、種実類、インスタントコーヒー、緑茶、野菜ジュースなどです。

生果物・生野菜・納豆

カリウム値が高いときには、生果物、生野菜、納豆などのカリウムが多い食品を控える必要があります。しかし、カリウム値が安定しているときであれば、量や頻度の調整を行い摂取することも可能です。

たんぱく質調整

たんぱく質を多く含む肉や魚などの食品にはカリウムも多く含まれています。たんぱく質を調整することでカリウム制限に繋がります。

調理方法の工夫

カリウムは水に溶けやすい性質のため、調理方法の工夫をすると良いでしょう。

  • 10~20分間水にさらす
    水にさらす時間が長ければ長いほどカリウムは減少します。さらに、途中で水を交換するとより効果的です。
  • 茹でこぼす
    たっぷりのお湯で茹でこぼします。茹で汁にはカリウムが溶けているため、しっかりと水気を切りましょう。ほうれん草などの葉物は、茹でることで約50%のカリウムが減少することがわかっています。
  • 食材の表面積を大きくする
    皮を剥く、細かく切る、薄く切る、さいの目切り、千切りなど、水に触れる面積を増やすことでカリウムが流れやすくなります。特にイモ類や根菜類は、茹でこぼしてもカリウムの減少率が約20%と低いため、さいの目切りなどに細かく切ってから茹でると効果的です。

※電子レンジや蒸し料理は水に通していないため、カリウムは減少しませんので注意が必要です

リンの働き

リンは体を構成するミネラルの一種です。カルシウムと結合して骨や歯を形成したり、エネルギーを作り出すもとになります。

なぜリン制限が必要か

腎臓ではリンの排泄と再吸収を行い、体内のリン酸量を一定に保っています。腎臓が正常に機能しているときは、多くのリンを摂取しても尿とともに排泄されます。
しかし、腎臓の機能が低下すると、リンの排泄が追いつかなくなり血液中に蓄積されます。その結果、血液中のリン濃度が高くなった状態を高リン血症といいます。高リン血症は骨がもろくなるほか、血管や腱などの骨ではないところでカルシウムと結合し、石灰化することによって動脈硬化を促してしまいます。

リン制限のポイント

一般に、たんぱく質1g当たり約15mgのリンが含まれ、リンの摂取量はたんぱく質の摂取量に大きく関係します。そのため、たんぱく質制限を行っていれば自然とリン制限にも繋がります。
リンには有機リンと無機リンの2種類があります。有機リンを多く含むものには肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などがあり、食品そのものに含まれています。一方、無機リンはハムやベーコン、練り物、インスタント食品、冷凍食品などの加工食品に添加物として使用されています。2種類のリンを比べると、無機リンは腸の吸収率が高いため、血液中のリン濃度が上昇しやすくなります。そのため、リン制限では無機リンを含む食材を減らした方が効率が良いと言えます。また、加工食品には塩分が多く含まれるため、リン制限を行うことで減塩にも繋がります。

サルスクリニックにはいつも管理栄養士がいます

腎臓の機能を維持するためには食事の管理が大切です。私たちが栄養指導で心がけていることは、無理しすぎず、続けられる提案をすることです。食生活だけでなく、ライフスタイルやご職業などの背景を踏まえ、実行できる内容を患者さんと共に考え、その継続をサポートします。

【参考文献】
慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版 日本腎臓学会
https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD-Dietaryrecommendations2014.pdf

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