サルコペニアとフレイルの違いは? ~フレイルではサルコペニアより広範囲な衰弱がある~

この記事のポイント

  1. サルコペニアとフレイルはどちらも筋力や身体機能が低下した状態
  2. フレイルは、さらに精神心理面、社会生活面を含むより広範囲な衰弱や機能低下がある状態
  3. サルコペニアやフレイルは放置すると介護が必要になってしまうこともあるので、早期発見と治療が大切

サルコペニアとフレイルは、どちらも筋肉の量が減ることによって筋力や身体機能が低下した状態です。ただし、フレイルは体への影響に加えて、精神的な側面や社会生活面も含む広範囲な機能低下がある状態を指します。

今回は、サルコペニアとフレイルの違いやそれぞれの原因、予防方法について解説します。

サルコペニアとフレイルの違いとは?

サルコペニアとフレイルの大きな違いは、サルコペニアが主に体の機能が低下した状態であることに対して、フレイルは精神的にも衰弱してしまっている状態であることです。ここからは、サルコペニアとフレイルそれぞれの特徴と原因について解説します。

サルコペニアとは?

サルコペニアとは、筋肉量の減少と筋力の低下、または身体能力が低下している状態のことを指します。加齢に伴う筋肉量の減少は誰にでも起こる老化現象ですが、それにより日常生活に支障をきたしたり、病的なレベルでの筋力・筋肉量の減少があったりする状態をサルコペニアといいます。

たとえば、歩くスピードが遅くなる、頻繁につまずく、ビンの蓋が開けられないなど、以前はできていた動作が難しくなることが代表的な症状です。

サルコペニアの原因

サルコペニアは原因によって、一次性と二次性に分けられます。

一次性サルコペニア

加齢によるサルコペニアは一次性サルコペニアと呼ばれます。高齢になると体内で筋肉をつくるタンパク質を生み出す量が減り分解が促進されるため、サルコペニアの発生率は年齢とともに高くなります。

二次性サルコペニア

低栄養や低活動、けがや病気(重度の臓器不全やがん、炎症性疾患など)といった加齢以外も原因となるサルコペニアは二次性サルコペニアといいます。一次性サルコペニアと違い、年齢に関係なく起こるため若年者も注意が必要です。

フレイルとは?

フレイルとは、サルコペニアと同様に身体能力が低下していることに加えて、精神的および社会生活面にも衰えがみられる“虚弱状態”のことです。フレイルの診断基準に統一されたものはありませんが、以下のような基準を組み合わせて診断を行うことが一般的です。

フレイルの診断基準:Fried(表現型モデル)

以下の5つの症状のうち2つまで当てはまる場合をプレフレイル(フレイルの前段階)、3つ以上当てはまる場合をフレイルと診断します。

  • 大幅な体重減少(1年間で4.5kgまたは5%以上)
  • 疲れやすさを感じる(1週間で3~4日以上)
  • 身体活動の低下
  • 歩行速度の低下
  • 握力の低下

また、最初に説明したとおり、フレイルの症状には精神的な衰えも含みます。そのため、精神的または社会的要因による気力の低下などもフレイルの症状に含まれます。

フレイルの診断基準:Frailty Index(欠損累積モデル)

欠損累積モデルは加齢に伴って生じる障害がどれくらい累積しているかを測ることで、フレイルの状態を評価する方法です。症状、日常生活動作の障害、病気、認知機能など30〜40個の項目を組み合わせて、問題がない場合を0点、問題がある場合を1点として計算することで、患者さんの状態を評価します。

通常フレイルと診断されるのは、該当する項目の総合点÷評価した項目の数(30〜40)が0.25以上になる場合です。

フレイルの診断基準:厚生労働省の基本チェックリスト

厚生労働省では、2006年よりフレイルに対する“基本チェックリスト”を導入し、フレイルの評価の1つの手段として役立てています。この基本チェックリストは日常生活の動作、運動機能、栄養、口腔機能、閉じこもり、認知機能、抑うつといった7つの分野に関して全25個の質問に“はい”“いいえ”で答えることにより、現在の状況を把握します。

フレイルの原因

フレイルは、主に身体的、精神的、社会的な3つの側面から原因が考えられます。

身体的な原因

  • 活動量の低下
  • 筋力、身体機能の低下
  • サルコペニアの進行
  • 病気や手術による長期安静

など

精神的な原因

  • 認知機能の低下
  • 気力の低下
  • 疲れを感じやすくなる

など

社会的な原因

  • 収入の変化
  • 家族役割の変化
  • 閉じこもり

など

フレイルへの入り口として、歯科口腔領域の機能低下や食事摂取量の減少(オーラルフレイル)のほか、身体機能の低下や精神・心理面の不調から連鎖的にフレイルが始まることもあります。

たとえば、身体機能の低下によって転び骨折で入院が必要になった場合は、入院中に体力がさらに低下して食欲や活力の低下にもつながることがあります。また、環境の変化や社会からの孤立が原因で認知機能を低下させることもあります。

サルコペニア・フレイルにならないためには?

身体機能の低下を防ぎ、サルコペニアやフレイルにならないためには、バランスのよい食事や適度な運動、フレイルの場合は適切な社会参加も必要とされています。

適度な運動

自分の体重を負荷にして行うレジスタンス運動(スクワットや膝をついた腕立て伏せなど)と運動中に簡単な会話ができる程度の有酸素運動(軽いジョギングなど)を組み合わせることで、効果的に筋力を維持できます。また、室内でのストレッチでも予防効果があるといわれています。

栄養バランスのよい食事

主食と主菜、副菜をそろえたバランスのよい食事を目指します。特に、筋肉を生み出すタンパク質や、骨折や転倒の予防のためのカルシウムとビタミン D も意識的に取るようにしましょう。必要な食事の量や種類、注意が必要なことは人それぞれ異なるため、医師や管理栄養士と相談しながらメニューを決めることがすすめられます。

また、食後から30~60分程度の時間をあけて運動を行った後、鶏肉や赤身マグロなどの体内で合成できないタンパク質や、乳製品や海藻類などのカルシウムとビタミンDを含む食品を摂取することは運動効果を高め、骨格筋力の維持につながります。

社会参加

友人や家族との外出や趣味活動、地域のボランティア活動への参加、就労など、他者と気軽に交流できる場をもつことで、社会からの孤立や閉じこもりを防ぎます。孤独にならないことで精神的、社会的健康の維持につながります。

その他の生活習慣の改善

過度な飲酒や喫煙、睡眠不足、ストレス過多な生活は生活習慣病や慢性疾患などを引き起こす危険があり、サルコペニアやフレイルの要因にもなります。生活リズムを見直し、禁煙や飲酒量を減らすことが効果的な予防策の1つとなります。

サルコペニアやフレイルの受診目安

以下のような症状を自覚したら、サルコペニアやフレイルが疑われます。

  • 転びやすくなった
  • 疲れやすくなった
  • 歩くのが遅くなった
  • 理由もなく痩せた
  • 閉じこもりがち
  • 5分前のことが思い出せない

サルコペニアやフレイルは発症前の予防が重要ですが、たとえ発症後でも食事改善や運動に加え必要に応じた薬物療法で改善させることが可能です。このような症状を自覚したら、早めに受診することをおすすめします。

サルコペニアやフレイルが心配な方はサルスクリニックへご相談を

サルコペニアやフレイルを放置すると、介護が必要な状態になってしまう場合があります。また、すでに診断された場合でも、早くから生活習慣や食事の改善、運動・薬物療法を行うことにより、進行を抑えて元の健康な体へと回復することも可能です。

サルコペニアやフレイルの原因や症状に心当たりがある方、あるいはご家族にサルコペニアやフレイルの兆候がみられる方などは、まず医師に相談してみましょう。

日本橋と武蔵境にあるサルスクリニックは、駅近の通いやすい立地とカフェのような院内でくつろいで受診いただけます。サルスクリニックでは、たとえ病気であっても患者さんがその人らしく生活できるようにサポートしています。各種検査、健診も行っていますので、サルコペニアやフレイルが心配、将来的にサルコペニアやフレイルにならないように早くから予防したいという方も是非お気軽にご相談ください。

※サルスクリニックの健康診断(保険適用外)について、詳しくはこちらをご覧ください。

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