間食とは
みなさんは、「間食」とはどのようなものをイメージしますか?一般的には「15時のおやつ」をイメージする方が多いと思いますが、厚生労働省のe-ヘルスネットには、「間食とは、食事(朝食・昼食・夕食)以外に摂取するエネルギー源となる食べ物と飲み物のこと」と記載されています。
つまり、「15時のおやつ」に限らず、お菓子やジュース、お酒、果物、おにぎり、パン、カップラーメンなどを1日3回の食事以外で食べることは、「間食」になります。
糖尿病の患者さんが間食をすると、どうなるの?
- 血糖値が上昇する
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。
食べたものはやがてブドウ糖となり、腸で吸収され、血液に入ることで、血糖値が上昇します。例えば、15時に間食をすると、昼食で上昇した血糖値に間食分の血糖値が加わり、さらに上昇します。
仮に、血糖値が下がりきらないまま夕食をとると、さらに血糖値が上昇することとなり、就寝中も高血糖状態が続き、血糖コントロール不良に陥りやすくなります。
このような高血糖状態が長期間継続することで、糖尿病合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病神経障害など)を引き起こしやすくなります。 - 肥満になりやすい
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、内臓脂肪が蓄積され、体重が増加し、肥満となります。食事以外に間食をすることで、摂取エネルギーが過剰となり、肥満になる可能性が高くなります。
さらに、肥満はインスリン抵抗性(血糖値を下げるホルモンが効きにくい状態)を増大させるため、血糖コントロールに悪影響を及ぼします。 - 高血圧になりやすい
そもそも糖尿病の患者さんは、高血圧になりやすいです。
血圧とは、心臓から送り出される血液が全身へと流れていく際に血管の内壁を押す力(圧力)のことで、血流量が多いと、血圧が高くなります。
血管をホースで例えてみましょう。ホースを蛇口につなげ、細い口から水の量を一気に押し出そうとすると、ホースがパンパンに膨らみますよね。このように血管がパンパンに膨れた状態になること、これが高血圧状態です。
前述の通り、間食をすると、血液中に大量のブドウ糖がある状態(高血糖状態)になります。そのため、大量のブドウ糖で濃くなった血液(浸透圧が高い)を薄めて濃度を等しくしようと、血管の外側から内側へ水分が移動します(浸透圧を下げようとする)。その結果、血管の外側から内側へ水が入った分だけ血液の量が増え、血圧が高くなってしまいます。さらに、間食で塩分を余分に摂取すると、その分血圧が上昇しやすくなります。
上記の理由から、基本的に間食はおすすめできません。しかし、間食が唯一の楽しみであったり、ストレス発散になっている方もいると思います。そこで、食べ方や時間帯、摂取量等に注意することで、身体への影響を少なくする間食の注意点やポイントをご紹介します。
間食する際のポイント
- 頻度
毎日ではなく、月1や週1のご褒美にしたり、2〜3日に1回にするなど、頻度を調整しましょう。頻度が多ければ多いほど、血糖コントロールは悪くなります。
また、「お腹が空いたから」といってダラダラ食べ続けると、それだけ高血糖状態が続いてしまいます。食べる時間を決めて、メリハリのある間食にしましょう。 - 質
前述で「間食をすると血糖値が上昇しやすい」と説明しましたが、特に糖質は、たんぱく質や脂質と比べてほぼ100%がブドウ糖に変化するため、血糖値を急上昇させます。いわゆる「お菓子」は糖質や脂質を多く含むため、おすすめできません。
栄養指導をしていると、「洋菓子ではなく和菓子ならいいのでは?」とおっしゃる方もいますが、和菓子は洋菓子と比較するとエネルギーや脂質は少ないものの、糖質が多く、血糖値を上昇させやすいため注意が必要です。
そのため、間食には、お菓子よりもエネルギー・糖質・脂質が少ない生の果物や、糖質が少ないヨーグルト、チーズ、ナッツ類、小魚などがおすすめです。お菓子を食べたい場合は、量を調整したり、糖質量を考慮したロカボ商品がコンビニやドラッグストアなどで販売されているため、選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。 - 量
質を考慮していても食べる量が多いと、その分血糖値や血圧に影響を与えたり、体重増加につながってしまいます。例えば、「〇kcal以内にする」「小袋1袋にする」「1個までにする」など、量を調整しましょう。
健康な方を対象にした食事バランスガイドでは、間食はエネルギー量200kcal程度を目安にすることが推奨されています。これは、1日の摂取エネルギー量の1割程度にあたります。糖尿病の患者さんは、医師から指示されたエネルギー量の1割と考えると、分かりやすいでしょう。
(例)指示エネルギー量が1600kcalの方は、間食を160kcal以内にする。 - 時間帯
時間帯は、夜間より昼間がおすすめです。体内時計を調節するたんぱく質の1つである「BMAL1(ビーマルワン)」は、脂肪をため込む働きがあり、夜間に増加し、朝日を浴びると減少します。
BMAL1は、午後10時から午前2時が最も多く、午後3時頃に最も少なくなることがわかっています。
BMAL1は、午後10時以降は日中の約20倍分泌されているため、夜間に食べると約20倍太りやすいと言えます。
また、夜間は活動量が少ないため、間食をすると高血糖状態から血糖値がなかなか下がらず、血糖コントロールに悪影響を及ぼします。
良好な血糖コントロールを維持できるよう、間食をする際は医師や管理栄養士と相談し、自分なりのルールを決めて楽しみましょう。
サルスクリニックにはいつも管理栄養士がいます
サルスクリニックには医師や看護師だけでなく、管理栄養士が常駐しています。
食生活だけでなく、ライフスタイルやご職業などの背景を踏まえ、実行できる内容を患者さんと共に考え、その継続をサポートします。
【参考サイト】
・厚生労働省HP:生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット, https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/
・糖尿病患者さんと医療スタッフのための情報サイト 糖尿病ネットワーク
https://dm-net.co.jp/
・農林水産省 食事バランスガイド
https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/index.html
・平尾彰子,柴田重信 早稲田大学先進理工学部生理・薬理研究室:体内時計を用いた理想的な食生活作りのために 顕微鏡 vol.47,No.2 (2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenbikyo/47/2/47_83/_pdf/-char/ja