百日咳はワクチンで予防が重要~新生児を守るための「コクーン戦略」とは?~

この記事のポイント

  1. 生後3ヶ月未満の百日咳の感染は重症化・死亡リスクが高い
  2. 百日咳は家族ぐるみの予防(コクーン戦略)がカギ
  3. 百日咳のワクチン接種は「今」がベストタイミング

2025年、日本では百日咳の感染拡大が懸念されています。特に注意すべきは、生後間もない赤ちゃんへの感染です。百日咳は大人では軽症で済むことが多いものの、赤ちゃんに感染すると重症化し、最悪の場合は命を落とすこともあります。では、なぜ赤ちゃんは重症化しやすいのでしょうか。

新生児はワクチン接種ができない

百日咳のワクチン(DPTワクチン)は通常、生後2ヶ月以降に接種が開始されます。しかしそれまでの間、赤ちゃんは百日咳に対して無防備な状態です。感染した際には、無呼吸発作、肺炎、脳症などを引き起こすこともあります。特に生後3ヶ月未満の赤ちゃんの死亡率は高く、感染予防が不可欠です。

コクーン(繭)戦略とワクチンの安全性

「コクーン(繭)戦略」とは、新生児を取り囲む大人たち(家族、親戚、医療スタッフなど)が事前に百日咳の予防接種を受けることで、赤ちゃんへの感染を防ぐという戦略です。これは、アメリカやヨーロッパでも推奨されており、妊婦自身の妊娠後期のTdapワクチン接種(妊娠27~36週)も含まれます。これにより、母体から胎児へ抗体が移行し、生後すぐから一定期間の免疫を獲得できます。

Tdapワクチンは、破傷風、ジフテリア、百日咳の3つを予防するための安全性の高いワクチンです。副反応は軽度の発熱や接種部位の痛みが主であり、重篤な副作用はきわめて稀です。妊婦が接種しても胎児への影響は報告されておらず、出生直後から免疫を与えるという点で推奨されています。

一方で、日本では成人用のTdapワクチン(Boostrix®、Adacel®)は未承認であり、代わりに小児用の成分比である三種混合ワクチン(トリビック®)が、成人も含めた治験を経て全年齢向けに承認されています。

家族ぐるみの予防がカギ

百日咳の感染源の多くは、家族内での接触です。実際、母親や兄姉、祖父母からの感染例が多く報告されています。家族全体で予防接種を受けることで、赤ちゃんの周囲に「免疫のバリア」を張ることができるのです。

医療機関の取り組み

当院では、妊婦およびその家族に対して、百日咳ワクチンの接種を積極的に推奨しています。また、妊娠中のワクチン接種に関する相談、接種スケジュールの提案、出産前後の家族全体へのワクチン接種のサポートを行っています。当院では国産のトリビック®を主に使用しています。

ワクチン接種は「今」がベストタイミング

百日咳は春から夏にかけて流行のピークを迎えることが多いですが、年中を通じて散発的な発生があります。妊娠後期を迎えている方、これから出産を予定している方は、今この瞬間がワクチン接種のタイミングです。ワクチン接種が遅れると、赤ちゃんが感染の危機にさらされる可能性があります。

ワクチン接種によって守れる命があります

赤ちゃんを守るためには、まずは周りの大人が行動することが重要です。予防接種は、自分のためであると同時に、最も無防備な命を守るための第一歩でもあります。ぜひ、家族皆でワクチンについて考え、接種を検討してみてください。

サルスクリニックでは予防接種を実施しています

サルスクリニックでは百日咳のワクチン「三種混合ワクチン(トリビック®)」の接種を実施しています。
平日は最大21時まで、土日祝も開院しておりますので、お仕事終わりにもお立ち寄りいただけます。
(接種をご希望の方はお電話にてご予約ください。)

三種混合ワクチン(トリビック®):5,500円(税込)

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