肥満を放置するとどうなるの? ~肥満が引き起こす健康リスクとは~

この記事のポイント

  1. 同じBMIでも脂肪がついている部分によって健康リスクが異なる。
  2. 肥満を放置しておくと、深刻な病気になる危険が高くなる。
  3. ご自身の肥満度を知り、専門家と計画を立てて治療することが大切。

「肥満」とは、体に必要以上の脂肪が溜まっている状態のことを指します。現在はBMI(体格指数)が基準に用いられ、BMI25以上が肥満と判定されます。
肥満は他の病気に比べると軽く見られがちですが、放置すると生活習慣病を発症するリスクが高まります。

今回は、肥満が健康にどのような影響を与えるのかを解説します。

「肥満」の診断

肥満度の判定に使用するBMIは次のように求めます。

BMI=体重(kg)÷(身長m×身長m)

例えば、身長170cmで体重70kgの場合、70÷(1.7×1.7)=24.22
つまり、BMIは24.22となるわけです。

しかし、これは身長と体重から単純に計算された値です。そのため、BMIだけでは筋肉質なのか脂肪過多なのか区別することは難しいのです。たとえば、BMIは標準であっても筋肉や骨などと比べて脂肪が多い状態、つまり「隠れ肥満」の方もいらっしゃいます。また、同じBMIでも体のどの部分に脂肪がついているかで健康への危険性は大きく異なってきます。例えば、筋肉の内側の腹腔内に脂肪が多く蓄積する「内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)」の人は、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などを発症する確率が高くなります。一方、腰まわりや太ももなど下半身を中心に皮下脂肪が多く溜まっているものの内臓脂肪は少ない「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型肥満)」の人は、こうした症状はあまりみられません。

肥満がもたらす健康リスクとは?

肥満は他の病気より軽くとらえられがちです。「少し太ってきたかな?」と思っても病院に行く人はほとんどいらっしゃらないでしょう。
しかし、肥満を放置しておくと、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病、腎不全など、深刻な病気になる危険が高くなります。

「肥満に起因したり関連する11の健康障害」として日本肥満学会が「肥満症治療ガイドライン」に掲げているものが以下の通りです。

  1. 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
  2. 脂質異常症
  3. 高血圧
  4. 高尿酸血症、痛風
  5. 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)
  6. 脳梗塞、脳血栓症、一過性脳虚血発作(TIA)
  7. 脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患、NAFLD)
  8. 月経異常、不妊
  9. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
  10. 変形性脊椎症、変形性関節症
  11. 肥満関連腎臓病

以上のように、肥満はさまざまな問題を引き起こすことがわかってます。
リスク増加の程度は、肥満である期間がどれくらいであるか、また、他にどのような疾患を抱えているかによって異なります。健診を受け自分の肥満度を知り、自身にあった治療を行うことが大切です。
では、それぞれの病気について詳しく見ていきましょう。

耐糖能障害

糖尿病予備軍や境界型糖尿病ともいわれる、放置すると糖尿病になる可能性が高まります。血糖値が正常より高い状態にあり、空腹時血糖が110~125mg/dl、もしくは経口ブドウ糖負荷試験を実施した後の血糖値が140~199mg/dlだった場合に、耐糖能障害(異常)と診断されます。この段階で生活習慣の見直しや食事の改善を図ることがとても大切です。

脂質異常症

脂質異常症とは、細胞膜やホルモンの材料として、あるいはエネルギー源として使われる脂肪分が過剰に作られ、コレステロールや中性脂肪が高くなる病気です。自覚症状はありませんが、放置していると動脈硬化が速く進みます。 肥満は脂肪が過剰に溜まっている状態ですので、血液中に供給される脂肪の量も増えます。脂質異常症とは、細胞膜やホルモンの材料として、あるいはエネルギー源として使われる脂肪分が過剰に作られ、コレステロールや中性脂肪が高くなる病気です。自覚症状はありませんが、放置していると動脈硬化が速く進みます。 肥満は脂肪が過剰に溜まっている状態ですので、血液中に供給される脂肪の量も増えます。

高血圧

血管の中を血液が流れるときに、血管の壁に通常よりも強い圧力がかかる状態が長く続く のが、「高血圧」です。肥満であると、血液の量が通常より多くなり、血管壁に強い圧力がかかります。また、内臓脂肪型肥満の場合はインスリンの働きが低下するために、血管が収縮しやすくなります。
高血圧は自覚症状はありませんが、放置していると動脈硬化が速く進んだり、腎臓や心臓の働きが低下したり、目の病気を引き起こしたり、、脳出血など命に関わる病気に発展することがあります。

高尿酸血症・痛風

血液中の尿酸値が高くなる病気です。 肥満であると、インスリン抵抗性のために、体内で尿酸が過剰に作られたり、尿酸を尿の中に排出する働きが低下して、尿酸値が高くなることがあります。 尿酸値が高い状態がしばらく続いていると痛風の発作が現れるようになります。発作が起きなくても、腎臓の働きが徐々に低下していき、尿路結石ができやすくなります。また、高尿酸血症は、動脈硬化のリスクになるとも言われています。

脳梗塞

脳が虚血になる病気で、からだの麻痺などが現れます。脳の血管の動脈硬化で起きる場合と、心臓など脳以外の血管にできていた血の塊が剥がれて脳に運ばれ血流を塞いで起こる場合があります。

脂肪肝

肝臓に脂肪が過剰に溜まる病気です。自覚症状はありませんが、糖尿病や脂質異常症など、 複数の生活習慣病を起こしやすくします。近年、肥満の人はアルコールをあまり飲まなくても脂肪肝になりやすく、その場合、肝臓の働きが悪化しやすい ケースがあることが注目されています。
また、脂肪が蓄積し慢性的な炎症を引き起こすと肝臓が硬くなり(肝硬変)、癌化をもたらす場合があります。肝硬変を経ずに癌化する場合もあることから、遺伝子や環境要因など、様々な原因が関連して癌化するともいわれています。

月経異常・不妊

肥満によって卵胞の発育不良や生殖機能が低下し、生理不順になることがあります。また、肥満は無月経や不妊症といった様々な症状も引き起こします。そして、肥満の妊婦は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠合併症にかかるリスクが高くなります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、眠っているときに、一時的に呼吸が止まってしまう病気です。呼吸が止まることで、血液中の酸素濃度が下がったり、血圧が急上昇したりするため、高血圧、糖尿病などの生活習慣病や、心筋梗塞、不整脈、脳梗塞など命にかかわる病気を引き起こします。

変形性脊椎症・変形性関節症

重い体重が体に負担となり、骨や関節に障害を起こします。とくに変形性膝関節症との関係が強く、体重が5kg増すごとに発症の危険性が35%増えるといった調査があります。

肥満関連腎臓病

肥満になると血液量の変化や血圧の上昇 などにより腎臓の血液の流れが変化し、腎臓の 働きに影響が生じてきます。その影響の一つとして、血液中の蛋白質が尿に排泄され、むくみが生じやすくなります。

肥満によるリスクを減らすには?

肥満の治療は、食事や運動などの生活習慣改善療法が基本となります。薬による治療ももちろんありますが、まずは生活習慣をよりよくすることが求められます。(肥満の食事療法はこちら
体脂肪率も測定できる体重計が発売され、ご家庭でも簡単に測定することができますが、機種によって推定方法や判定基準が異なることがあり、体脂肪率の正確な測定は困難です。まずは健康診断を受け、自身の状態をしっかりと把握することが大切です。
食事制限や運動をして体重を減らすことは簡単ではありません。自己流のダイエットではなく、医師や管理栄養士に相談し、運動や食事の計画を立てて治療を進めることが一番です。
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