脂質異常症の基礎知識~重大な病気に発展させないために~

この記事のポイント

  1. 脂質異常症は、血中のコレステロールやトリグリセライドの量が異常な状態のこと
  2. コレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールの2種類がある
  3. 原発性脂質異常症と続発性脂質異常症の2種類に大別できる
  4. 血液検査で現状を把握するには、サルスクリニックへ!

食品や油などのパッケージに「コレステロール0」と書いてあるのを見たことはありませんか?「詳しくはわからないけど、なんだか身体に良さそう」というイメージだけ使用しているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。血液に含まれるコレステロールが多すぎると「脂質異常症」と診断され、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など重大な病気に発展してしまう恐れがあります。今回は、脂質異常症についての基礎的な部分をご説明します。

脂質異常症とは?

血液に含まれるコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)の量が正常でない状態を、「脂質異常症」と言います。脂質異常症になっても通常は自覚症状はありません。ではなぜ脂質異常症が問題かというと、動脈の壁が硬く厚くなる「動脈硬化」の原因となるからです。血管が狭くなったり血栓(血の塊)ができてしまったりすると、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など、命に関わる病気に発展します。

診断基準

10時間以上絶食した上での採血結果が診断基準となります。ご自身の血液検査の結果がわかる方は、まずは次の項目の数値を確認してみましょう。

  • LDLコレステロール
     140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
     120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
  • HDLコレステロール
     40 mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
  • トリグリセライド
     150 mg/dL以上 高トリグリセライド血症
  • Non-HDLコレステロール
     170mg/dL以上 高non-HDLコレステロール血症
     150~169mg/dL 境界域高non-HDLコレステロール血症

そもそもコレステロールとは?

コレステロールは脂肪の一種で、細胞膜やホルモン、胆汁酸、ビタミンDなどをつくる材料になるため、一定量は身体にとって必要なものです。必要なコレステロールの7~8割は肝臓で作られるので、食事で摂取する必要があるのは残りの2~3割です。食事で過剰にコレステロールを摂取してしまうと脂質異常症を招きますが、コレステロール自体が悪者というわけではありません。また、先に示した診断基準の項目にもありましたが、コレステロールの中にも「LDLコレステロール」と「HDLコレステロール」があります。

LDLコレステロール

いわゆる「悪玉コレステロール」です。肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割があり、これが過剰になると血管壁にコレステロールが溜まって動脈硬化に繋がります。

HDLコレステロール

いわゆる「善玉コレステロール」です。余分なコレステロールを全身から回収し、血管壁に溜まってしまったコレステロールも取り除いて肝臓へ戻してくれます。よって、こちらは多い方が動脈硬化の抑制に繋がり、少ないと過剰なコレステロールを回収しきれず、結果的に動脈硬化を促進することになります。

トリグリセライドとは?

中性脂肪のことです。人間が身体を動かす時に最初にエネルギーとして使うのは糖ですが、中性脂肪は脂肪細胞の中に予備の燃料として蓄えられて、必要に応じてエネルギー源として使われます。また、体温を維持することにも役立ちます。しかし、摂取しすぎると肥満に繋がり生活習慣病になってしまいます。また、トリグリセライド値が非常に高い場合、急性膵炎を引き起こす可能性があります。

脂質異常症の原因

脂質異常症の原因は、原発性と続発性の2つに大別されます。

原発性脂質異常症

遺伝的な原因によるものです。代表的なものとしては「家族性高コレステロール血症」が挙げられます。生まれつきLDLコレステロールが異常に増えてしまう病気で、適切に治療がなされないと幼少期から動脈硬化が進行し、心筋梗塞などを発症する恐れがあります。
両親のうちどちらか一方からのみ異常遺伝子を受け継いだ場合を「ヘテロ接合体」、両親ともから異常遺伝子を受け継いだ場合を「ホモ接合体」と呼びます。 ヘテロ接合体は約500人に1人、ホモ接合体は100万人に1人程度の割合で患者さんがいるとされ、ホモ接合体の方が発症時期も早く、症状も重くなります。これらの場合には必ず医療機関を受診し、スタチン(LDLコレステロールを下げる薬)などを服薬して治療に取り組む必要があります。


続発性脂質異常症

遺伝とは関係なく脂質異常が起こっている場合はこちらに当たります。別の疾患が原因となって二次的に脂質異常となっているもの、薬の影響によるもの、生活習慣が原因となっているものが挙げられます。

  1. 疾患によるもの
    2型糖尿病、慢性腎臓病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、原発性胆汁性胆管炎、肥満などが原因となります。この場合、原因となっている疾患を治療することで脂質異常症も改善されます。
  2. 薬によるもの
    利尿薬、β遮断薬、コルチコステロイド、経口避妊薬、サイクロスポリン、などの服用によって脂質異常症となる場合があります。これらを飲んでいて脂質異常が出た場合には、医療機関に相談しましょう。
  3. 不適切な食生活によるもの
    飽和脂肪酸が多く含まれるものを過剰摂取すると、LDLコレステロールを上昇させます。別の記事で詳しく解説していきますが、飽和脂肪酸は肉の脂身やバター、生クリームなどに多く含まれます。これらを好んで食べている方は、食生活を見直してみましょう。トリグリセライドが高い方は、エネルギー摂取量が多すぎること、特に糖質を多く摂りすぎている場合が多くあります。
  4. 運動不足によるもの
    運動不足によりエネルギー消費量が少なくなると、トリグリセライドが体脂肪として溜め込まれ、肥満を招きます。ウォーキング以上の強度の運動を1日合計30分以上(少なくとも週3回)続けることで、血中のトリグリセライドを減少させ、HDLコレステロールを増加させることができると言われています。運動による脂質異常症の改善についても、別の記事で詳しくご紹介します。
  5. 喫煙によるもの
    喫煙は、過剰なLDLコレステロールを回収してくれるHDLコレステロールを減らしてしまいます。禁煙し始めてから1~2ヶ月で改善が見られるという報告もあるため、喫煙習慣があって脂質異常が見られる方は、まず禁煙を試みましょう。喫煙自体も動脈硬化を促進させてしまうので、場合によっては禁煙外来なども利用して、重大な疾患になる前に対処しましょう。
  6. 過度な飲酒によるもの
    アルコールはトリグリセライドを増加させ、過度な飲酒により肝臓にトリグリセライドが溜まると脂肪肝の原因となります。また、過度なアルコール摂取は高血圧など脂質異常症と同じく動脈硬化を引き起こす原因を引き起こすため、そういった意味でも注意が必要です。
    一方、適量の飲酒であればHDLコレステロールが増加するという良い影響もあります。お酒が好きな方は一気に断酒してストレスを溜めてしまうよりも、少しずつ減らしていけると良いかもしれませんね。

治療の目標値

冠動脈疾患の既往歴がない人の場合、年齢・性別・喫煙・血圧・早発性冠動脈疾患家族歴などから低リスク・中リスク・高リスクと分類され、それぞれに対して脂質管理目標値が設定されています。それぞれのLDLコレステロール目標値は、
 

  • 低リスク 160mg/dL未満
  • 中リスク 140mg/dL未満
  • 高リスク 120mg/dL未満

となっています。治療はまず生活習慣の改善からはじめ、場合によっては薬物療法を適用していきます。
冠動脈疾患の既往歴がある方は、LDLコレステロール目標値は100mg/dL未満で、生活習慣の改善と並行して薬物療法を考慮します。
いずれの場合も、トリグリセライドの目標値は150mg/dL未満、HDLコレステロールの目標値は40mg/dL以上とされています。

まずは血液検査で現状を把握!

血中のコレステロールやトリグリセライドの値は、血液検査をするだけで簡単にわかります。検査の結果脂質異常症であった場合、お一人おひとりの治療目標値を見極めて、無理のない範囲で着実な治療をすることが大切です。
サルスクリニックには管理栄養士が常駐しているため、検査結果を踏まえての栄養指導が可能です。土日祝も開院していますので、平日は仕事で忙しいという方もぜひお待ちしております。

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