「肥満」と「メタボ」の違いとは?
体型が大きい人のことを「肥満」や「メタボ」というように表現することがありますが、そもそも「肥満」や「メタボ」は何が違うのでしょうか?
「肥満」とは、体に必要以上の脂肪が溜まっている状態のことを指します。現在はBMI(体格指数)が基準に用いられ、BMI25以上が肥満と判定されます。
そのなかでも、肥満によって健康が害されている、または害されてしまいそうな状況のことを「肥満症」と呼びます。肥満症は疾患になるため、減量などの治療が必要です。「メタボリックシンドローム」は肥満症の一つで、別名「内臓脂肪症候群」といいます。高血圧、高血糖、脂質異常症のうち二つ以上にあてはまると、メタボリックシンドロームと診断されます。
肥満の診断方法
体脂肪量はどのようにしてはかることができるのでしょうか。
実は、体脂肪量を簡単かつ正確に測定する方法はありません。そのため、体脂肪組織量に相関するとされているBMIが肥満の判定に用いられます。
BMIは次のように求めます。
BMI=体重(kg)÷(身長m×身長m)
例えば、身長170cmで体重70kgの場合、70÷(1.7×1.7)=24.22
つまり、BMIは24.22となるわけです。
日本では、BMIが25以上を肥満症と定められており、またBMIが35以上を高度肥満症と定められています。
メタボリックシンドロームの診断方法
メタボリックシンドロームは、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm、女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、診断されます。血圧・血糖・脂質の詳しい数値は以下の通りです。
①高トリグリセライド血症…≥ 150mg/dL
かつ/または
低HDLコレステロール血症…< 40mg/dL
②収縮期(最大)血圧…≥ 130mmHg
かつ/または
拡張期(最小)血圧…≥ 85mmHg
③空腹時高血糖…≥ 110mg/dL
肥満がもたらす健康リスク
肥満は他の病気より軽く捉えられがちです。「少し太ってきたかな?」と思っても病院に行く人はほとんどいらっしゃらないでしょう。
しかし、肥満を放置しておくと、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病、腎不全など、深刻な病気になる危険が高くなります。
「肥満に起因したり関連する11の健康障害」として日本肥満学会が「肥満症治療ガイドライン」に掲げているものが以下の通りです。
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症、痛風
- 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)
- 脳梗塞、脳血栓症、一過性脳虚血発作(TIA)
- 脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患、NAFLD)
- 月経異常、不妊
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
- 変形性脊椎症、変形性関節症
- 肥満関連腎臓病
以上のように、肥満はさまざまな問題を引き起こすことがわかってます。「ダイエットは明日から」などと肥満を放置することは、これらの病気を引き起こすことになるのです。
リスクの増加の程度は、肥満である期間がどれくらいであるか、また、他にどのような疾患を抱えているかによって異なります。健康診断を受け自分の肥満度を知り、自身にあった治療を行うことが大切です。
肥満の治療
肥満の改善とは、すなわち減量です。はじめの減量目標は、「これ以上体重を増やさないようにすること」です。体重をキープできるようになったら、肥満症と診断された方は、現体重の3%以上の減量目標を設定します。高度肥満症と診断された方は、現体重の5~10%の減量目標を設定します。(合併する健康障害をお持ちの方はそれに応じて減量目標を設定します。)肥満と診断された方は、「体重を5%減らす」ことが適切です。
食事療法
肥満を改善するために食生活を見直します。健康的でしっかりと持続ができて、かつ過度の制限のない計画を管理栄養士と一緒に立て、実践していきます。
自己流の厳しい食事制限をおこなえば、体重はすぐに減るかもしれません。一方、無理な制限は長く続かないため、やめたとたんに体重が元に戻りやすくなります。無理に制限したり、いきなり厳しい目標を立てるのではなく、自分の好きな食べ物を含んだ食事で無理のない計画を立てることが大切なのです。
例えば、次のようなことに気をつけるだけでも食生活は改善されます。
- 赤身の肉やチーズの代わりに、鶏肉や魚、豆類を選ぶ。
- 菜種油、えごま油、オリーブ油など、多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸を含む油を使って調理する。
- マーガリン類は、部分水素添加のされていないものを選ぶ。
- クラッカーやクッキー、カップケーキなど、部分水素添加油脂を含む市販の焼き菓子は控える。
- 甘い飲み物やアルコールの過剰摂取を避ける。
以上のようなことに気を付けると、脂肪を減らすことにつながります。
一般的には、十分なタンパク質、炭水化物、必須脂肪酸、ビタミンを含む食品を選ぶと良いのですが、必要なカロリーは、現在の体重、性別、運動量によって異なります。自身にあった食生活の改善は、管理栄養士などの専門家と一緒になって行うことが最適です。
運動療法
食生活の改善と並行して、運動も行っていくと効果的に減量することができます。定期的に体を動かすことは、他の病気の予防にもなります。体を動かすことは、健康増進に加え、ストレスも軽減されます。ウォーキングをはじめ、さまざまな種類の運動を取り入れるのが効果的です。まずは1日数分から始めて、体力や持久力がつけば、少しずつ増やしていきましょう。激しい運動をしたり、毎日ジムに通ったりする必要はありません。エレベーターの代わりに階段を使う、デスクワークの人は仕事の合間に立ち上がるようにするなど、小さな変化でも健康増進につながります。
薬物療法
食事療法、運動療法、生活習慣の改善と併用して、薬物療法を行うこともあります。しかし、BMIが35以上という高度肥満症が対象であり、副作用もあることから長期処方が認められておりません。
減量に使われる薬としては、食欲抑制薬であるマジンドールが承認されています。この薬は食欲にかかわる神経に働きかけて、食欲をおさえる効果があります。また、体の消費エネルギーを促進したり、代謝をよくしたりします。
薬を飲んだからといって肥満が治るわけではありません。あくまでも食事療法と運動療法の補助として服用します。
手術療法
命を落とすような危険性が高い患者さんに対して手術を行う場合もあります。しかし、この手術は決して楽をしてやせるための手術ではなく、患者さんの命を守るための手術です。
減量手術の対象者は以下の通りです。
- BMIが30以上の方
- 肥満に起因する合併症をお持ちの方
- 内科治療を行ったが効果が無かった方
- 18歳~65歳の方
スリーブ状胃切除術を受け、加えて決められた食生活を守り、継続的に運動をすると50%以上の体重減少も可能です。
健康診断の結果で気になることがあればご相談ください
健康診断の結果で不安に思うことがあれば、ぜひサルスクリニックまでご相談ください。肥満は放置すれば大きな病気を引き起こすリスクがあります。早期予防、早期治療が最も大切です。当院では必要に応じてより詳しい検査を受けていただくこともできます。減量外来も行っており、食事療法、運動療法、薬物療法など、様々な選択肢から治療を提供することができます。自身の健康状態で気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。