何を食べればいいの?
糖尿病をコントロールしながら充実した生活を送るためにも、食事の改善は欠かせない要素です。しかし、糖尿病患者さんのための最適な食事というものは明確には決まっていません。最適な食事を考えるためには、ご自身の健康上の注意点、減量の目標、食の好みなど、を踏まえなければならないのです。
一般的な推奨事項
果物、野菜、全粒穀物、豆類、低脂肪乳などの炭水化物を含む食事が推奨されます。一方で、砂糖入りの飲料(フルーツジュースを含む)を避ける必要があります。
食物繊維を多く含んだ食事は、血糖値のコントロールにつながるため、豆類やイモ類、キノコ類などを食べることもおすすめです。また、ナトリウムが少なく、果物、野菜、低脂肪の乳製品を多く含む食事は、血圧のコントロールにつながります。
一般的には、自分の好きな食べ物を多く含む健康的な食事をすることで、食事療法が続けやすくなるため、様々な食事のパターンが認められています。
食事療法というと、食事制限をして体重を減らすというイメージが強いですが、極端な食事制限によるダイエットは禁物です。病状によってはおすすめできない食事制限もあるので、医療機関に相談しましょう。
食事制限をすることばかり考えるのではなく、3大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質、そしてビタミン、ミネラル、食物繊維などを、バランスよく摂ることを大切にしましょう。
- 炭水化物
炭水化物はお米やパンだけでなく、野菜、果物、乳製品、糖類などにも含まれます。
血糖値を管理し必要に応じてインスリンの投与量を調整するためには、炭水化物の摂取量を把握することが重要です。特に、経口糖尿病薬や長時間作用型インスリンを服用している場合は、毎食一定量の炭水化物を食べることで、血糖値をコントロールすることができます。
炭水化物は脳などのエネルギー源となる大切な栄養素です。極端な炭水化物の制限は、かえって体に悪影響を及ぼします。また、炭水化物を制限することで、脂肪やタンパク質を摂りすぎてしまうこともあります。主治医の指導を受けながら、ご自身にあった炭水化物の摂取量を把握し、炭水化物、たんぱく質、脂質をバランスよく食べることが重要です。
- 脂質
糖尿病は心臓病や脳卒中のリスクを高めます。これらのリスクを減らすために飽和脂肪酸やトランス脂肪酸、コレステロールの少ない食事をすることも大切です。
摂取する脂肪の種類は、脂肪量よりも重要視する必要があります。飽和脂肪酸(肉、チーズ、アイスクリームなど)の代わりに、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸(魚、オリーブオイル、ナッツなど)を摂取するとよいでしょう。また、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の摂取量を減らすことも重要です。肉類、鶏肉、乳製品にも少量のトランス脂肪酸が自然に含まれていますが、これらを懸念する必要はありません。
また、脂肪分の多い食品をまれに食べることは問題ありませんが、その場合血糖値をより注意して観察しましょう。高脂肪、高タンパク質の食事は、低脂肪、低タンパク質の食事よりもゆっくりと分解されます。食前に速効性インスリンを使用すると、高脂肪のものを食べた直後に血糖値が低くなり、数時間後に上昇することがあるのです。よって、通常よりもタンパク質や脂肪を多く含む食事をした場合は、この血糖値の上昇の遅れを管理するために、食事時のインスリン投与量を調整する必要がある場合もあります。
- 人工甘味料
人工甘味料は、血糖値に大きな影響を与えないため、適度に摂取する分には問題ありません。そのため、砂糖入りの飲料を定期的に摂取している方の場合は、人工甘味料を含む飲料(ダイエットソーダなど)を代わりに飲むことをおすすめすることがあります。しかし、より良い方法は、砂糖入り飲料と人工甘味料入り飲料の両方を避け、水を飲むようにすることです。
我慢を続けることはストレスにもなるので、人工甘味料を含む飲料と水をうまく組み合わせて飲んでみましょう。
- アルコール
実は、アルコールの摂取は適度な量(女性は1日1杯まで、男性は1日2杯まで)であれば、血糖値に大きな影響はありません。
しかし、アルコールのカロリーは栄養価が低いため、減量の妨げになったり、体重増加の原因になったりします。また、アルコールを摂取すると血糖値がわずかに上昇し、数時間後には血糖値が低下することがあります。そのため、アルコールに対する血糖値の反応を観察し、インスリン投与量の変更が必要かどうかを判断することが重要です。
- 低カロリー食品
無糖ゼリーや無糖ガムなどの無糖食品の中には、カロリーや炭水化物があまり含まれていないものがあります。基本的にカロリーが20キロカロリー以下、炭水化物が5グラム以下の食品は低カロリー食品と言ってよいでしょう。これらを食しても体重に影響を与えず、薬の調整も必要ありません。
フリーフードを食生活に取り入れることで、ストレスなく食事療法を続けることができるでしょう。
しかし、「砂糖不使用」や「脂肪不使用」と表記された製品は、注意が必要です。これらは必ずしもカロリーや炭水化物の量が少ないとは限りません。すべての栄養成分表示をよく読み、他の類似製品と比較して、どの製品が一食分のカロリー、炭水化物、脂肪、および食物繊維の数のバランスが最も良いかを判断することが大切です。
食事のタイミング
毎日同じ時間に食事をすることは、長時間作用型インスリンや血糖値を下げる経口薬(スルホニル尿素薬またはグリニド系〈メグリチニド〉)を服用している人にとって重要です。食事を抜いたり、時間を遅らせたりすると、低血糖を起こす危険性があります。
一方で、1日に何度もインスリン注射をしたり、インスリンポンプを使用したりしている場合や、他の種類の経口糖尿病薬(例:メトホルミン)を服用している場合は、食事を抜いたり時間を遅らせたりしても、低血糖のリスクは高まりません。
無理なく続けたい方はぜひサルスクリニックにご相談ください
食事療法は簡単なものではありません。食事をどのように管理したらよいかを考え、毎日の献立を考えることは難しく、時にはそれがストレスになることもあります。しかし、時間をかけて練習し、サポートを受ければ、無理なく続けることができます。
毎日の食生活に細心の注意を払わなければならないのは想像以上に大変なことです。管理栄養士と協力して、ご自身の病状、ライフスタイル、好みに合わせた計画を立てることが最も大切です。
サルスクリニックには管理栄養士が常駐しているので、食事療法について相談できるのはもちろん、患者さんそれぞれの好みに合わせた内容を提案し、継続をサポートいたします。ぜひ一度お越しください。