脂質異常症の食事療法~間食やアルコールとの付き合い方~

この記事のポイント

  1. 脂質異常症治療中は、原則間食・アルコールを控えることが望ましい
  2. 間食やアルコールの摂取によるデメリットを把握する
  3. 適切なエネルギー量の食事をとることが大切

脂質異常症の治療中、間食やアルコールとどのように付き合っていったらいいのだろう?と、お悩みの方もいらっしゃいますよね。
こちらのコラムでは、脂質異常症の治療中の方へ向けた間食やアルコールとの付き合い方についてお伝えします。

脂質異常症の食事療法のポイント

  1. 摂取エネルギー量を守り、バランスよく食べる
  2. 脂質の質と量に注意する
  3. 食物繊維を摂る
  4. 糖質が多く含まれている食品に注意する

これらの基本をもとに、脂質異常症のパターンによって、より注意すべきポイントが異なります。

LDLコレステロールが高い場合

総エネルギー摂取量を守り、LDL(悪玉)コレステロールを上昇させる飽和脂肪酸やコレステロール、トランス脂肪酸の摂取を減らすことが大切です。

脂肪含有量の多い肉、脂身や動物性の脂、臓物類、卵類などの摂取制限と緑黄色野菜を含む野菜類や大豆・大豆製品の摂取が推奨されています。飽和脂肪酸は、バターなどの乳製品や肉類、ココナッツオイルなどに多く含まれています。

トランス脂肪酸は植物油などからマーガリンやショートニングなどを製造する際に、植物油を脱臭する工程で生じます。また、天然でも牛や羊などの反すう動物に由来する乳製品や牛肉・羊肉には、微量のトランス脂肪酸が含まれています。

HDLコレステロールが低い場合

総エネルギー摂取量を守り、炭水化物エネルギー比率をやや低めにして、トランス脂肪酸を減らすことが推奨されています。合わせて運動療法との併用が効果的です。

※炭水化物エネルギー比率とは、1日の総摂取エネルギー(カロリー)のうち、炭水化物から得られるエネルギーの割合です。一般的には、50~65%が推奨されています。

TG(中性脂肪)が高い場合

総エネルギー摂取量を守り、炭水化物エネルギー比率をやや低めにして、アルコールの過剰摂取に注意しましょう。果物や果糖含有加工食品の過剰摂取は、中性脂肪を上昇させる可能性があるため要注意。n-3系脂肪酸(青魚、アマニ油、えごま油などに多く含まれる)の摂取が推奨されています。
炭水化物エネルギー比率についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

間食やアルコールとどう付き合う?

基本的には、間食やアルコールなどは原則、控えた方が望ましいです。

間食やアルコールの摂取により、適切なエネルギー摂取量での食事が難しくなります。間食やアルコールから余分なエネルギーを摂取することで、体重増加のリスクや脂質異常症の悪化に繋がります。

「そんなこと言われても間食したいし、アルコールも飲みたいよ!」という方は、まずは間食やアルコール摂取による影響について知ることから始めましょう。

間食との付き合い方

間食とは、朝昼夕食以外で食べるもののことを指します。したがって、おにぎりを朝昼夕食以外で食べることも間食に入りますが、ここでは、間食のうち、お菓子を食べる場合についての付き合い方をお伝えします。

お菓子といえば、スナック菓子・お煎餅・洋菓子・和菓子など色々と種類があります。

まず、いずれのお菓子を選択しても、前述した通り、お菓子を食べることで適切なエネルギー摂取量範囲での食事が難しくなってしまいます。

なかには、お菓子を食べた分食事を減らし、エネルギー過多にならないよう調整する方がいらっしゃいますが、食事よりもお菓子を優先することによって、栄養バランスが乱れる原因となってしまいます。栄養バランスの悪い食事のせいで、脂質異常症を悪化させる可能性もあるので、お菓子を食べるために食事量を減らすなどのエネルギー管理方法は避けましょう。また、お菓子の特徴として、糖質が多く含まれています。

高TG血症の食事療法の場合、やや低めの炭水化物エネルギー比率に設定することがポイントになるため、お菓子の摂取によって食事療法の遵守が難しくなります。脂質が少ないからという理由でお煎餅や和菓子を選択する方もいますが、勘違いしやすいポイントであり、脂質異常症の食事の基本は「エネルギー量を守ること」であるためお菓子などの間食は避けるようにしましょう。

スナック菓子や洋菓子については、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が多く含まれているため、LDLコレステロールの上昇に繋がります。また、お煎餅や和菓子と比較してエネルギー量が高い傾向もあり、やはり「エネルギー量を守る」ことが困難となります。

飽和脂肪酸はスナック菓子や洋菓子以外に、菓子パンや揚げ物、カレールーにも多く含まれているため注意が必要です。

どうしても間食がしたい方へのおすすめ食品

「どうしても間食がしたい!」という方におすすめの食品は、果物や乳製品(牛乳や無糖ヨーグルト)です。

果物や乳製品は1日1回程度の摂取が推奨されています。

果物には、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富に含まれており、1日あたり握りこぶし1つ分程度の量が適量です。特に、果物の摂取には新鮮な生果物がおすすめです。果物缶は、シロップ漬けになっているため糖質量が多く、さらに水溶性のビタミンやミネラルは、果物からシロップへと移行しています。

また、果物缶での摂取だと、総死亡率や心血管疾患脂肪が増加することが報告されているため、果物は新鮮な生果物を選択するとよいでしょう。乳製品には、カルシウムが豊富に含まれており、1日あたり200ml(g)程度が適量です。

「いやいや、お菓子が食べたいんだ!」という方は、前述した間食によるデメリットを理解した上で、お菓子を食べるようにしましょう。たとえば、お菓子を食べるならば遅い時間は避ける、◯kcal以内のものにするなどのルールを決めてから食べるようにしてみましょう。

アルコールとの付き合い方

まずは、アルコールを摂取しても良いのか主治医へ確認しましょう。

許可が下りれば問題ありませんが、アルコール摂取時にも飲み方のポイントがあります。

脂質異常症の治療目的は動脈硬化の進行を防ぐことにあります。動脈硬化性疾患の予防のためには、多量飲酒を避けることが大切です。

また、アルコールを摂取すると血圧が上昇し、脂質異常症に加えて高血圧のリスクを抱え、動脈硬化性疾患の進行リスクとなるため注意が必要です。

アルコール摂取の許可がある場合は、1日あたりアルコール25g以下に抑え、週に2回以上の休肝日を設けましょう。

たとえ適量を守ったとしても、アルコールを摂取することで食事療法の基本である「エネルギー量を守ること」から外れやすくなるので節度ある飲酒が大切です。

また、アルコールと一緒に摂るおつまみにも注意しましょう。

アルコールの目安量

ビール(5%) 中ジョッキ1杯(500mL)、焼酎(25度) 1杯(100mL)、ワイン(11%) 2杯(240mL)、日本酒(15度) 1合(180mL)、ウイスキー(40%) ダブル1杯(60mL)、チューハイ(7%) 1缶(350mL)

サルスクリニックには管理栄養士がいます

私たち管理栄養士が栄養指導で心がけていることは、無理しすぎず、続けられる提案をすることです。食生活だけでなく、ライフスタイルや職業などの背景を踏まえ、実行できる内容を患者さんと共に考え、その継続をサポートします。生活習慣病について栄養指導を受けたい方は、一度当院を受診し医師へご相談ください。

保険適用の栄養指導では、1日の総エネルギー摂取量や塩分量など、医師の指示に基づいて栄養指導を行います。2回目以降はオンラインでの指導も可能ですので、ご来院が難しい方はお気軽にお申し出ください。

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【参考文献】

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

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