65歳からはフレイル予防!~年齢による体組成の変化と食事について~

この記事のポイント

  1. 年齢とともに体組成は変化する!
  2. メタボ予防からフレイル予防に切り替える
  3. 1日3食、一汁三菜、たんぱく質摂取を心がけて!

年齢とともに体は変化します。変化に負けずに元気な体を保つためには、知ること、気づくことが大切です。この記事ではフレイル予防のポイントをご紹介します。

年齢とともに変化する体組成を知ろう!

健康な人でも加齢により筋肉量は減少し、脂肪の割合は増加します。筋肉量のピークは20代後半~30歳頃で、それ以降は徐々に低下します。つまり何もしないでいると筋肉は衰えていきます。筋肉量の低下は基礎代謝の低下に繋がり、中年期(40歳から64歳)の体重増加のほとんどが脂肪の増加によるものです。このため中年期はメタボ予防が注目されています。
その後、高齢期(65歳以上)では更に筋肉量の減少が加速し、中年期に比べ活動量が低下していきます。65歳頃はライフワークに変化が現れる時期です。

例えばお子さんが自立し、

  • 料理を作る気力がなくなってしまった
  • 外出がめんどうで家にいることが多い
  • 動かないから食欲がわかない
  • 食事量が減った
  • 定年退職を迎え活動量が減った
  • 生活リズムが乱れてしまった

これらは年齢を重ねると誰もが感じることが多いですが、加齢により筋肉が減り身体機能が低下し、精神的な側面や社会生活面も含む広範囲な機能低下がある状態を「フレイル」といいます。誰でもフレイルになる可能性がありますので、フレイルを予防するためには早めに気づくことが大切です。

フレイルの定義についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。

メタボ予防からフレイル予防に切り替える

高齢期の痩せは肥満よりも死亡率が高くなります。下記に示した目標とするBMIの範囲は年齢ごとに下限値が高くなっていることが分かります。ご自身の体格を確認してみると良いでしょう。

BMIの計算方法
BMI=体重(kg)÷(身長m×身長m)
例えば、身長170cmで体重70kgの場合、70÷(1.7×1.7)=24.22

目標とするBMIの範囲
18~49歳:18.5~24.9
50~64歳:20.0~24.9
65~74歳:21.5~24.9
75歳以上:21.5~24.9

目標とするBMIの範囲より低い場合は、フレイルに対して特に注意が必要です。
これ以外にも病気でないのに

  • 痩せてきた
  • 歩くのが遅くなり横断歩道を青信号のうちに渡れない
  • 握力が減りペットボトルのふたを開けるのが大変

などに当てはまる方はフレイルの前段階かもしれません。65歳を過ぎたらメタボ予防からフレイル予防に切り替えてみましょう。

フレイルに負けない!食事のポイント

ここからは食事のポイントをご紹介します。

1日3食を心がける

元気な体を保つためには栄養が不可欠です。1日に必要なエネルギーを満たすため、1日3食を基本としましょう。1日のエネルギー必要量は65〜74歳の男性は2050〜2400Kcal、65〜74歳の女性は1550〜1850Kcalです。
朝と昼を兼用したり、朝は食べなかったりすると、1日に必要なエネルギーを摂ることが難しくなります。

主食、主菜、副菜を揃える

主食、主菜、副菜に含まれる栄養素はそれぞれ役割が異なるため、毎食揃えることを意識しましょう。定食(一汁三菜)のイメージです。

  • 主食(ご飯、麺、パン)に多く含まれる炭水化物は脳や体を動かすエネルギー源になります。ご飯は1食あたり100~150g、パンは1食あたり食パン6枚切1枚、麺は1食あたりゆで麺1袋(200g)程度が目安です。
  • 主菜(肉、魚、卵、大豆製品)に多く含まれるたんぱく質は骨や筋肉、血などの体のもとを作ります。
  • 副菜(野菜、きのこ、海藻)に多く含まれる食物繊維、ビタミン、ミネラルは体の調子を整える役割があります。

加えて、果物や乳製品が1日1品あると更に栄養バランスが良くなります。乳製品はカルシウムの吸収率が高く、たんぱく質も含まれています。

たんぱく質の摂取

フレイル予防にはたんぱく質の摂取も重要です。加齢により筋肉量が減少している状態に加えて、歳を重ねるとたんぱく質の合成は遅くなるため、高齢期ではより一層たんぱく質を摂る必要があります。
1日のたんぱく質摂取量の目安は65歳以上の男性は60g、65歳以上の女性は50gです。肉、魚、卵、大豆製品が片手に乗る量を毎食1品+αとイメージしてみましょう。肉は小指程度の厚さが目安です。また、1日のたんぱく質の目安量は18歳以上ではほぼ同量で、65歳以上の方も成人と同じ量が必要です。
栄養指導をしていると、比較的夕食は主菜がありますが、朝食と昼食は簡単に済ませている方が多くいらっしゃいます。朝食はパンだけ。昼食は麺だけなど”それだけ”になっていませんか?
朝食のパンには牛乳やヨーグルトを足してみましょう。たまごは麺と相性が良いので追加してみるのも良いでしょう。少しの工夫でたんぱく質を摂ることができます。

運動でフレイル予防

フレイルは運動でも予防が可能です。心肺機能を高めて体力と持久力を高めるための有酸素運動や筋力を強くして筋肉量を増やすための筋力トレーニングなど、詳しくはこちらの記事でご紹介しています。

サルスクリニックにはいつも管理栄養士がいます。

フレイル予防には食事だけでなく、運動や活動量の増加、周りとのコミュニケーションが大切です。私たちが栄養指導で心がけていることは、無理しすぎず、続けられる提案をすることです。食生活だけでなく、ライフスタイルやご職業などの背景を踏まえ、実行できる内容を患者さんと共に考え、その継続をサポートします。

【参考文献】
「日本人の食事摂取基準」策定検討会、「日本人の食事摂取基準2020年版」 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf、厚生労働省

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