気温だけでなく湿度にも注意!熱中症の予防と対策 ~夏が来る前に心と体の準備を~

この記事のポイント

  1. 熱中症とは、体温調節機能が低下することで体内に熱が溜まり、体温が上昇した状態のこと
  2. 「高齢者」「乳幼児」「高血圧や心臓の薬を飲んでいる人」「糖尿病の人」「肥満の人」は特に注意が必要
  3. おすすめの熱中症対策は「暑さに慣れる」「暑さ指数の確認」「体力を過信せず休む」「こまめな水分補給」
  4. 熱中症になってしまったら、水分を補給しながら涼しい場所で休み、必要に応じて救急車を要請または医療機関を受診する

総務省の発表によると、 記録的な猛暑となった2024年の5月から9月にかけて、熱中症で救急搬送された人は全国で97,578人でした。これは、2008年の調査開始以降、最も多い搬送人員数であり、2023年の同期間と比べると6,111人の増加となっています。
「わたしは大丈夫」「まだ大丈夫」ではなく、誰にでも、いつでも起こりうる熱中症を正しく理解し、暑い季節を安全に乗り切るコツをお伝えします。

熱中症とは

ヒトの体には、エアコンの自動運転のように、外気温が変動しても一定の温度を保つシステムが備わっています。そのため、外気温が低くなる、つまり「寒い」環境になると、毛細血管を収縮させて熱を逃さないようにしたり、筋肉を震わせて熱を作ろうとします。反対に、外気温が高くなる、つまり「暑い」環境になると、発汗を増やして気化熱を発生させたり、皮膚の血管を広げて温度の上がった血液を流すことで皮膚表面から熱を放出しやすくさせたりして体温を下げようとします。熱中症は、この自動運転機能が故障し、体温がぐんぐん上昇した状態であるため、体のあらゆるところに支障が出ます。

脳を含む重要な臓器が正常に働くのは概ね37℃以下であるため、体温が高くなりすぎると臓器は機能しにくくなります。また、体温を下げるために汗をかいて体から水分が減少すると、筋肉や脳、肝臓や腎臓などへの血液が不足し、足がつったり、意識を失ったり、肝臓や腎臓の機能が低下したりします。なかでも脳は熱に弱いため、熱中症によってダメージを受けやすく、重度の熱中症になると意識障害や痙攣などの症状も発現します。場合によっては後遺症が残ることもあります。

特に熱中症リスクが高い方

  1. 高齢者
    年齢と共に、温度や口渇の感覚が鈍くなるため、体内の水分量などが低下します。また、体内の熱を放出するための発汗や血流も減少するため、熱中症にかかりやすくなります。
  2. 乳幼児
    子どもは発汗能力が未発達のため、体内の熱を放散させにくいです。また、体重に対して体表面積が大きいため、周囲の環境の影響を受けやすく、熱中症のリスクが高まります。
  3. 高血圧や心臓の薬を服用している方
    薬の作用で体内の水分やミネラル(ナトリウムやカリウムなど)が排出されるため、脱水になりやすく、熱中症のリスクが高まります。
  4. 糖尿病の方
    糖尿病の合併症のひとつである「神経障害」によって、暑さを感じにくかったり、体温調整が上手くいかないなどの理由で熱中症にかかりやすくなります。
  5. 肥満の方
    重たい体を動かすために多くの熱が発生しますが、脂肪が断熱材となって熱を放散しにくく、体内に熱がこもりやすくなります。また、熱を発散する際に大量の汗をかくため、脱水になりやすいです。

熱中症予防にお勧めの対策

  1. 暑さに慣れる(暑熱順化)
    体が暑さに慣れることを暑熱順化といいます。日常生活の中で運動や入浴によって汗をかき、体を暑さに慣れさせましょう。軽い筋トレやストレッチでも効果的です。
    暑熱順化によって発汗量が増加し、熱放散がしやすくなり、体温の上昇を食い止められるようになります。個人差はありますが、暑熱順化には数日から2週間程度かかります。暑さから数日空くと効果は消えてしまうため、毎日継続することが大事です。
  2. 暑さ指数(WBGT)を確認する
    暑さ指数(WBGT)は「気温」「湿度」「日射・放射」「風」の要素をもとに算出された、熱中症の危険度を示す指標です。熱中症は、真夏だけでなく、梅雨の晴れ間に急速に気温が上昇した日や、梅雨時期の高温多湿な日などにも起こりやすいため、WBGTが25℃以上の時は熱中症に警戒しましょう。なお、WBGTは環境省の熱中症予防情報サイトやLINE公式アカウント、メール配信サービスなどで確認できます。
  3. 体力を過信しない
    普段は健康に問題がなくても、体調の悪い日は体温を調整する体の機能が通常どおりに働かず、熱中症のリスクが高まります。二日酔い、寝不足、風邪気味など体調が優れないときは休息をとり、安静に過ごしましょう。
  4. こまめな水分補給
    のどの渇きを感じたら既に脱水しているサインです。のどが渇く前に、こまめに水分を補給しましょう。体格などの個人差はありますが、1~1.5Lが1日の水分摂取量の目安です。

もし熱中症になってしまったら

  1. 体温を下げる
    クーラーの効いた涼しい室内または風通しの良い場所に移動し、休みましょう。体にこもった熱が発散されやすいよう、ベルトや衣服を緩め、氷や水、風などで体温を下げましょう。首や太ももの付け根、脇の下など、大きな血管が通っているところを中心に冷やすと効果的です。
  2. 水分を補給する(ただし意識がない場合はNG)
    できれば汗で失った塩分も補給できる「経口補水液」がおすすめです。スポーツドリンクは、ナトリウムの吸収を高めるために糖分も非常に多く含まれており、飲みすぎるとかえって持病などが悪化するリスクがあります。中には炭酸飲料と同量の糖分が含まれているスポーツドリンクもあるため、注意が必要です。通常時の水分補給は、水や麦茶にしましょう。
    ※特に、血糖値や血圧が高い方、治療を受けている方などは、スポーツドリンクの常飲は避けましょう。
  3. 必要に応じて救急車の要請または医療機関を受診する意識がもうろうとしていたり、受け答えがおかしいなどの異常を感じたら、すぐに救急車を呼ぶか医療機関を受診しましょう。

特に6月は湿度が高く、蒸し暑く感じられる日もあるでしょう。今から熱中症に対する準備をおこない、夏を安全に乗り切りましょう。

サルスクリニックにはいつも管理栄養士がいます

サルスクリニックには、医師や看護師だけでなく、管理栄養士が常駐しています。熱中症だけでなく、持病やお薬、食事に関するお困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。みなさまが健康で充実した生活を送れるようにサポートいたします。

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【参考文献】