貧血になるとどうなるの?
前述したように、貧血とは血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態を指しますが、ヘモグロビンは主に、鉄を含む「ヘム」という色素と「たんぱく質」が結合した「ヘムタンパク質」で構成されています。このヘムタンパク質が酸素と結合することで、血管内で酸素を全身に運ぶ役割を果たします。
そのため、ヘモグロビン濃度が減ると、酸素を運搬する能力が低下し、易疲労感(疲れやすい)、めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛、息切れ、耳鳴りなどのさまざまな症状が現れたり、運動機能の低下につながります。自覚症状を伴わないままゆるやかに進行することもあります。
どうして貧血になるの?
鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビンの主な材料である鉄が不足し、ヘモグロビンが作られなくなるために起こります。では、どのような状況で起こるのでしょうか。主な原因を大きく分けて4つ説明します。
- 鉄や栄養素の不足
欠食・偏食、ムリなダイエット、外食やインスタント食品のた多食などの食生活の乱れにより、鉄や栄養素が不足することで起こります。 - 需要の増加
妊娠・授乳期は、胎児の成長や母乳分泌に鉄が多く必要になるため、不足しやすくなります。また、思春期の女性は、急激な成長により血液量が増え、鉄の需要も増加するため貧血になることがあります。 - 過剰な損失
腫瘍、痔、ガンなどによる消化管からの出血が原因で起こります。女性の場合は、月経(生理)過多などが原因になることもあります。 - 吸収障害
胃切除などにより胃酸分泌が不足し、鉄の吸収が阻害されることで起こります。
偏食やムリなダイエットは大敵!バランスの良い食事が貧血を改善
貧血を改善するには、たんぱく質・鉄・ビタミン類など、さまざまな栄養素が欠かせません。そのためには、主食・主菜・副菜がそろったバランスの良い食事を摂ることが大切です。
食事は1日3食、主食・主菜・副菜をそろえる
過剰なダイエットや欠食(特に朝食)をすると、栄養素が不足し、貧血の要因になるため、1日3食、バランスの良い食事をとり、たんぱく質・炭水化物・脂質・ミネラル・ビタミンが不足しないようにすることが大切です。1食で全てそろえることが難しいようであれば、間食で補うのも良いでしょう。
良質なたんぱく質を含む食品を選ぶ
たんぱく質は、筋肉を作ったり、血液中の赤血球やヘモグロビンの材料となったりする大切な栄養素です。中でも良質なたんぱく質は、魚介類、肉類、卵、大豆製品、乳製品などに含まれています。たんぱく質は、1度にたくさん摂取しても体内にためておくことはできないため、毎食、主菜に取り入れて食べるようにしましょう。
鉄分を十分に摂り、ビタミンCも一緒に摂る
代謝により、成人男性では約1mg/日、女性では約0.8mg/日の鉄を損失しています。さらに女性は、月経により1日あたり0.5mgの鉄が損失していると言われています。(※1)そのため、この損失分を食事から補う必要があります。
1日に推奨される鉄の量は、月経のある女性(18-49歳)の場合は1日10.5mg、男性(18-74歳)の場合は7.5mgです。食品中に含まれる鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があり、ヘム鉄のほうが体内での吸収率が高い性質があり、次の表のようなものに多く含まれています。
このような良質な動物性たんぱく質と結合しているヘム鉄は、緑黄色野菜やくだものに含まれるビタミンCと一緒に摂ると、鉄の吸収を高めることができます。
他にも鉄は胃酸の分泌によっても吸収されやすくなります。そのため、柑橘類や酢などの酸っぱいものを食べたり、よく噛んだりして胃酸の分泌を促すことでより鉄の吸収率が高まります。
控えた方が良い食品について
鉄の合成を妨げたりするものとして、以下のものには注意が必要です。
緑茶やコーヒー、紅茶などに含まれる「タンニン」
タンニンは、鉄が腸から吸収されるのを妨げる作用があります。食事中や食事前後に、渋いお茶や濃いコーヒーを飲むことは控えましょう。それ以外で適度に飲むには問題ありません。心配な方は、麦茶などタンニンを含まないものを選ぶと安心です。なお、鉄剤を服用している場合は、鉄の摂取量が多くなるため、お茶を避ける必要はありません。
インスタント食品・加工食品
ハムやソーセージ、練り製品、その他加工食品やインスタント食品、スナック菓子に使用される添加物の一種「リン酸塩」は鉄の吸収を阻害するため、過剰な摂取は控えましょう。
貧血を軽く考えないで!
ヘモグロビン濃度が低い場合、単純に、食事から摂る鉄の不足が原因とは限りません。食事以外の消化器系の病気や痔、子宮内膜症などの婦人科系の病気が隠れていることもあります。たかが貧血と軽く考えず、一度きちんと医師の診察を受け、原因を探ることが大切です。
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食生活だけでなく、ライフスタイルやご職業などの背景を踏まえ、実行できる内容を患者さんと共に考え、その継続をサポートします。お気軽にご相談ください。
【参考文献】
- 厚生労働省. (2025). 健康日本21アクション支援システム 生活習慣病などの情報
- 伊藤貞嘉・佐々木敏(監修). (2020). 『日本人の食事摂取基準(2020年版)』第一出版.