腹膜透析と寿命の関係とは?
透析を含む腎臓の機能を補う治療(腎代替療法)のうち、もっとも予後がよいのは腎移植です。また、血液透析と腹膜透析を比べた場合は、残腎機能(残った腎臓の機能)が保持されている間は腹膜透析のほうがよいとされ、それ以降は血液透析と腹膜透析の間に寿命への影響の差はないとされております。
また透析導入後は、尿から過剰な塩分や水分を排出するなどの残腎機能が維持されている人のほうが、寿命が長いというデータがあります。さらに、腹膜透析は血液透析と比べて残腎機能を維持しやすいとされていることから、患者さんの寿命を延ばすのに有効とされておりますが、残腎機能がなくなった後は2つの透析方法の間に差はないとされています。
腹膜透析をできる期間
以前は酸性透析液という腹膜により負担がかかる透析液が主流だったこともあり、透析膜として使う腹膜の機能が低下することを理由に長期間の腹膜透析を続けることは困難とされていました。一方で、2000年代以降は中性透析液が広く使用されるようになったことから、比較的残腎機能を保てるようになりました。現在は、適切な水分・塩分管理や腹膜炎の予防を行った場合は10年以上、腹膜透析を継続できる場合もあることが分かっています。
ただし、水分や塩分の管理が不十分だったり、腹膜炎を繰り返したりすることで腹膜の機能が低下した場合は、数年で血液透析に移行することもあります。また、残存腎機能が低下したときには、週1~2回の血液透析を併用します。
腹膜透析で寿命を延ばすためには
残腎機能は寿命に影響することが分かっています。つまり、残腎機能をできるだけ長く保つことが、寿命を延ばすポイントの1つです。また、透析患者の死因でもっとも多いのは心不全です。そのため、リンの管理や水分・塩分管理、血圧管理などの動脈硬化因子、水分血圧負荷のリスク軽減が重要です。
PD(腹膜透析)ファースト
これまでは患者さんに透析が必要となった場合、腹膜透析か血液透析のどちらかを選択するのが一般的でしたが、最近では残腎機能が多いうちに腹膜透析の導入を優先的に検討する“PDファースト”という考え方が広まりつつあります。
これは、腹膜透析の利点を十分に生かすために、透析導入時はまず腹膜透析を選択。その後は、最終的に血液透析に移行するという考え方です。
生活習慣の改善
腎機能障害の進行を抑えて可能な限り残腎機能を維持するには、血圧の適正化や腎臓に負担をかける食事の制限、適度な運動など生活習慣を見直すことが大切です。
特に塩分や水分の過剰摂取には注意しましょう。また、喫煙や過度の飲酒も腎機能を悪化させるので制限が必要です。
手順どおりの透析液交換操作を
腹膜透析は自分で透析液の交換を行うため、交換時の不衛生やカテーテルの出口部分からの感染により腹膜炎を引き起こすことがあります。腹膜が炎症を起こすと、腹膜の機能が低下して腹膜透析を続けられる期間が短くなってしまったり、残腎機能に影響を与えたりする可能性があります。
そのため、透析液の交換は清潔な手で正しい手順のもと行いましょう。また、カテーテルの出口部のケアや日頃のチェックも大切です。
腹膜透析の患者さんの場合、腹膜炎は透析液の排液が濁っていることで見つかることが多く、腹痛や発熱などの症状がみられることもあります。心当たりがある方は、すぐに受診してください。
可能な限り腎臓の機能を残すことが大切
腹膜透析は寿命に影響するという残腎機能を比較的維持しやすい透析方法ですが、いつまでも継続できるわけではありません。そのため最近では、透析導入が必要になった際にまず腹膜透析を検討、そのメリットを生かした後に血液透析に移行するという考え方も広まってきています。
透析患者さんは、同年代の一般の人と比べると寿命が短くなってしまうことが多いですが、こうした工夫で透析をしながら長く暮らしている人も少なくありません。
日本橋、武蔵境、有明にあるサルスクリニックは、腹膜透析の導入を始めとしたさまざまなサポートも行っています。また、各種検査、健診も行っていますので、透析が必要になるまで病気を悪化させないという予防の観点でもアドバイスが可能です。
サルスクリニックでは、たとえ病気であっても患者さんがその人らしく生活できるようにサポートします。ご自身に合った透析方法についてのご相談などをご希望でしたら、ぜひ一度ご相談ください。
※サルスクリニックの健康診断について、詳しくはこちらをご覧ください。