生活習慣病と肥満
食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が発症の要因となる疾患の総称を生活習慣病といいます。よく知られているものとして高血圧、糖尿病、脂質異常症などがあげられます。これらの病気の多くはかなり進行するまで自覚症状がほとんどなく、病気に気付きにくいという共通点があるので注意が大切です。
生活習慣病を改善・予防するために大切なことの一つとして、体重が基準範囲内であることがあげられます。
体重の基準範囲とは…
BMI(Body Mass Index:体格指数)が一つの目安になります。
BMIの基準範囲は18.5以上~25未満です。
算出方法 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
(例)身長150 cm 体重54 kgの方
54÷1.5÷1,5=24⇨BMI=24
※すでにBMI25未満の方は、22を目指すことが勧められています。
BMI22は統計上、高血圧・糖尿病・脂質異常症になりにくい数値といわれています。
また、単に体重を基準範囲にするだけではなく、体脂肪も減らすことが大切です。
生活習慣病について詳しくはこちらのコラムでもご紹介しています
ダイエットに運動は必要?
体重を減らすだけなら食事量を減らすことで多くの場合、達成することができます。しかし、それでは筋肉量が減り、体脂肪率が上昇するケースが多く、体重が減っていても筋肉と体脂肪のバランスの「質」は下がっているといえるでしょう。
筋肉量が低下すると基礎代謝量※も低下し、結果としてエネルギー消費量が少なくなり、太りやすい身体になってしまう可能性があります。そのため、運動を取り入れてダイエットすることが勧められます。
※基礎代謝量はエネルギー消費量のおよそ70%を占めているといわれています。
有酸素運動と筋トレどちらが良いの?
一般的に脂肪を減らすためには有酸素運動が勧められています。有酸素運動はウォーキング、ジョギング、ランニング、自転車、水泳などさまざまありますが、比較的日常に取り入れやすいものとしてはウォーキングがおすすめです。
ウォーキングの場合、20~30分/回✕週3~4回から始め、慣れてきたら1回の時間や頻度を増やし、30~90分/回✕週5回を目指しましょう。
スピードは「ややきついが誰かと話しながら歩ける」速さが目標です。
ウォーキングのポイント
- 目線は少し高めにして遠くを見る
- 胸を張る
- かかとから着地する
- しっかりつま先で地面を蹴る
- 歩幅はやや広めにする
ただし、筋肉量が少ない方は並行してレジスタンス運動(筋トレ)も実施することが望ましいとされています。レジスタンス運動(筋トレ)は大筋群(お尻、太もも、胸、背中)を中心に取り組みましょう。ダイエットで減りやすい筋肉量を維持するためにも重要です。
自宅でも簡単に取り組めるレジスタンス運動(筋トレ)としてはスクワットがあげられます。
10~12回 ✕ 2~3セット/日を目標に取り組みましょう。
※上記を楽にこなせてしまう方は、両手に水の入ったペットボトルなどを持って実施するとより効果的です。
スクワットのポイント
- 足は肩幅に開く
- 曲げた膝がつま先より前に出ないようにする
- 曲げた膝がつま先と同じ方向を向くようにする
運動強度は高ければ高いほどいい!?
運動強度は高いほうが良いとは一概に言い切れません。
例えば、運動強度が高いレジスタンス運動(筋トレ)は血圧を上昇させやすいため、あまりお勧めできないといわれています。では、どのくらいの強度が良いのでしょうか。
生活習慣病の改善、予防のためには中等度の運動が良いとされています。
中等度とは、下記の自覚的運動強度(RPE)13「ややきつい」と思うレベルのことを指します。
有酸素運動は毎日30分程度、レジスタンス運動(筋トレ)は10~15回✕2~3セット✕週2〜3回実施することが勧められます。
運動開始前に必ず実施!体調チェック
※1つでも当てはまったら運動は控えるか、医師に相談しましょう。
- 風邪症状がある、熱っぽい、37.5℃以上の熱がある
- 血圧180/110 mmHg以上、または普段より20mmHg以上高い
- 脈拍が100拍/分以上、または普段より20拍/分以上多い、普段の半分以下しかない
- 身体がだるい、疲れが続いている、ふらつきがある
- 眠れていない、二日酔いである、食欲がない、下痢をしている
- 体のどこかに痛み、または違和感がある(頭痛、腹痛、腰痛、関節痛、胸部違和感など)
- 運動する意欲がわかない
生活習慣病別!運動時の注意点
高血圧
- 運動前に血圧を必ず測ること
- 運動前の血圧が180/110以上の場合は降圧剤を飲んでから運動すること
- 降圧剤を服薬中の方は心拍上昇が抑制される場合があるため、運動強度を心拍数で判断しないこと
- 運動終了後、運動誘発性の低血圧を起こすことがあるためクールダウンを長めに実施すること
糖尿病
- 空腹時、食事の直後を避けて運動すること
- 運動前の大腿部へのインスリン注射は避けること
- 低血糖に備えて飴などを常備すること
- 強度の高い運動や長時間の運動後は夜間、翌朝、飲酒、入浴時にも低血糖を起こしやすいので気をつけること
脂質異常症
- スタチン系薬剤を使用している場合は稀に横紋筋融解症などの副作用が出ることがあるため、筋肉痛などの症状が出た場合は医療機関を受診をすること
サルスクリニックには管理栄養士がいます
サルスクリニックには医師や看護師だけでなく、管理栄養士が常駐しています。
私たち管理栄養士が栄養指導で心がけていることは、無理しすぎず、続けられる提案をすることです。食生活だけでなく、ライフスタイルや職業などの背景を踏まえ、実行できる内容を患者さんと共に考え、その継続をサポートします。生活習慣病について栄養指導を受けたい方は、一度当院を受診し、ご相談ください。
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【参考文献】
・文光堂 日本医師会編 健康スポーツ医学実践ガイド
・文光堂 日本糖尿病学会 編・著 糖尿病治療ガイド 2020-2021
・文光堂 高血圧診療ガイド 2020
・公益財団法人 健康・体力づくり事業財団 健康運動指導士養成講習会テキスト