脂質について解説!~摂りすぎで起こるリスクと上手なコントロール法~

この記事のポイント

  1. 3大栄養素でもっとも高カロリーな栄養素が「脂質」
  2. 脂っこいものをつい摂りすぎてしまう理由は、脳内で「幸せホルモン」が分泌されるから
  3. 調理法や食材選びにより脂質・カロリー摂取量をコントロールできる

脂質は体に欠かせない栄養素で、エネルギー源や細胞作り、ビタミンの運搬に役立ちます。しかし、1gあたり9kcalと高カロリーなため、摂りすぎると肥満や生活習慣病のリスクが高まります。
加工食品や外食には脂質が多く含まれ、食べると脳内で「幸せホルモン」が分泌されるため、つい食べすぎてしまうことも。
こちらのコラムでは、脂質の基本情報や上手なコントロール法について解説します。

脂質とは?

脂質は主要なエネルギー源であり、体の細胞を作る材料となるほか、ビタミンを運ぶ重要な役割を担っています。脂質は様々な食品に含まれているため、極端に食事量を減らさない限りは不足しないと考えられています。一方で、脂質を摂りすぎてしまうと肥満や生活習慣病につながる恐れがあります。

3大栄養素と言われる糖質・脂質・たんぱく質の中で、脂質がもっとも高カロリーです。脂質は1gあたり9kcal、糖質やたんぱく質は1gあたり4kcalなので、糖質やたんぱく質と比べて2倍以上のカロリーがあります。少ない量でも摂取カロリーが消費カロリーを上回りやすいため、脂質の摂取量には注意が必要です。

また、加工食品には目に見えない形で多くの脂質が含まれていることがあり、外食や市販のお弁当・お惣菜なども脂質を多く含む傾向があります。そのため、現代の食生活では脂質を過剰に摂取しやすい状況にあります。普段から加工食品や外食などを利用することが多い人は、より注意が必要です。

脂質の適正摂取量や種類ごとの役割についてはこちらの記事てもご紹介しています。

つい食べすぎてしまう!?脂質の中毒性に注意!

食べすぎは健康に良くないとわかっていても、揚げ物やスナック菓子などについ手が伸びてしまいますよね。なぜなのでしょうか?

実は、油脂を多く含む食品を摂ると、脳内で「幸せホルモン」と呼ばれる「β-エンドルフィン」が分泌され、幸福感や満足感をもたらします。つまり、油脂を多く含む食品は手軽に得られる「幸せ」であり、「もっと食べたい!」とつい手が伸びて食べすぎてしまうのです。

前述した通り、加工食品や外食には脂質が多く含まれることが多いですが、その理由は「売上を伸ばすために、よりおいしく感じるものを作る必要があるから」です。

結局「脂っこいものやおいしいものは食べすぎないように注意しましょう」ということにはなりますが、このような「食欲の仕組み」を知っておくことで、食べ過ぎを防ぐことができるかもしれません。

特に疲れているときは、手軽に“幸せ”を感じられる、ファストフードなどの「おいしい食事」を求めてしまい、その結果、脂質を多く含む高カロリーなものを食べすぎてしまいます。手軽な食事や間食に頼らず、別の方法で疲労回復ができないか考えることが大事です。

自炊でもお肉の脂に注意!

では、加工食品や外食だけを控えていれば安心なのでしょうか?実はそうとも言い切れません。

加工食品や外食を控え、基本的には自炊をしているという方でも注意が必要です。特にお肉を使った料理を作る機会が多い人は、お肉から脂質を摂りすぎているかもしれません。

例えば、スーパーなどで手に入りやすい豚バラ肉は、100gあたり395kcal、脂質35gと、脂がたっぷり含まれています。これを脂の少ないもも肉に変えると、100gあたり148kcal、脂質6gとなり、選ぶお肉の種類を変えるだけで同じ量でも約250kcalの摂取カロリーを減らすことができます。

調理方法を工夫して脂を削減

選ぶ食材ももちろんですが、調理方法によってもカロリー・脂質の量は変化します。

一般的には、以下のような順でカロリー・脂質が増えやすくなると言われています。

茹でる < 網焼き < 煮る < 炒める < 揚げる

それぞれの調理法による摂取カロリー・脂質について、さらに詳しく解説します。

茹でる

熱湯で加熱することで脂が溶け出します。とはいえ、すべての脂が溶け出すというわけではなく、生肉のうち約15%の脂が落ち、カロリーとしては10%ほど減らすことができます。しかし、豚バラ肉は100gあたり395kcalのため、茹でたとしても40kcal程度のカロリーが減るだけです。大幅にカロリー・脂質を減らすことはできないため、食べる量や部位には気をつけましょう。

炒める

炒める際には調理油を使用しますよね。そのため、使用した調理油の分だけカロリー・脂質も増えます。フッ素樹脂加工のフライパンを用いて調理をおこなうと、少量の調理油で済むためカロリー・脂質を減らすことができます。また、炒めた肉から出た脂は、キッチンペーパーなどに吸収させるのがおすすめです。例えば、肉野菜炒めを作る際は、最初に肉だけを炒めて、溶け出した脂をしっかりと拭き取ってから野菜を炒める、などと調理手順を一工夫することで、余分な脂を摂らずに済みます。

揚げる

食材の表面から油を吸収するため、表面積が増えれば増えるほど油の吸収量も増えます。例えば、細かく切った素材をまとめて揚げる「かき揚げ」は、他の天ぷらよりもカロリー・脂質が多くなります。

お肉料理は調理前に脂身を取り除く

前述の通り、もっともカロリーを減らすことができる「茹でる調理」でも、10%程度のカロリーしか減らすことができません。そのため、調理前に脂身を取り除くなどのひと手間も有効です。

例えば、豚ロース肉100g(263kcal)から、肉の周りについている脂身を取り除くと、約10gの脂、つまり約30%のカロリーを減らすことができます。「茹でる調理」よりも大幅にカロリーを削減できるため、ぜひ試してみてください。

体に良いとされる油でもカロリーは変わらない

オリーブオイルやアマニ油など、健康やダイエットに良いといわれる油はありますが、どの油も1gあたり9kcalであることには変わりありません。摂りすぎるとカロリーオーバーにつながるため、注意して使用しましょう。

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参考文献

  • 日本栄養・食料学会誌 第71巻 第5号 231-235(2018) 油脂の嗜好性のメカニズムに関する研究