その一振りで未来が変わる?“塩分の正体”を管理栄養士が解説!~塩分・ナトリウムについて~

この記事のポイント

  1. 塩分とは、食品などに含まれる食塩相当量のことを指し、「食塩」や「塩分」と呼ばれている
  2. ナトリウムは、体の水分バランスを保つ大切なミネラルの一種ですが、摂りすぎると体に水分がたまり血圧が上がりやすくなる
  3. 日本人はナトリウムが不足する可能性は低く、むしろ摂りすぎないよう注意が必要
  4. 尿中に排泄されたナトリウムとカリウムのバランスを示す指標「尿ナトカリ比」は、それぞれ単体での測定値よりも血圧との関連が強いといわれている
  5. 尿ナトカリ比を下げる、つまり血圧を下げるためには、野菜や果物の摂取が有効

「高血圧予防のため塩分を控えましょう」とよく耳にしますよね。

塩分は料理の味を整える大切な存在ですが、気づかないうちに摂りすぎてしまうことも多く、健康への影響が心配される栄養素のひとつです。

そもそも、塩分とは何なのでしょうか?

食塩?ナトリウム?なぜ塩分を摂りすぎてはいけないのでしょうか?

こちらのコラムでは、身近な塩分について解説します。

塩分とは

塩分とは、一般的に調味料に含まれる食塩量や食品に含まれるナトリウムに由来した食塩相当量のことを指します。「食塩」や「塩分」はその通称です。

つまり、食塩=ナトリウムではありません。

ナトリウム(Na)と塩素(Cl)が結合した塩化ナトリウム(NaCl)が食塩であり、ナトリウムはその成分のひとつです。

そのため、同じ量のナトリウムを⾷塩相当量(食塩や塩分)に換算するには塩素の重さを加える必要があります。食塩相当量は以下の計算式で算出することができます。

◆食塩相当量(g)=ナトリウム(㎎)×2.54÷1000

ナトリウムとは

ナトリウムは人体に必要なミネラルの一種で、体液中では塩化ナトリウム・重炭酸ナトリウム・リン酸ナトリウムとして存在しています。

主に食塩(塩化ナトリウム)として摂取し、小腸で吸収されます。

ナトリウムは、糞便や汗からもわずかに排泄されますが、90%以上は腎臓を経由し尿中に排泄されます。

腎臓では、糸球体でのろ過と尿細管での再吸収により体内のナトリウムを一定に保たれることから、ナトリウム摂取量が増加すれば尿中への排泄量も増加し、摂取量が減少すれば尿中への排泄量も減少します。

ナトリウムの排泄を調整している一連のホルモンは、血中のナトリウム量を増やして浸透圧を高め、血圧を上昇させる働きがあるため、これらのホルモンの作用をおさえる薬は高血圧治療薬としてよく利用されています。

ナトリウムの働き

ナトリウムは主に細胞外液の中に存在しています。

細胞外液の量はナトリウムの影響を受けており、ナトリウムの濃度に応じて細胞外液の浸透圧を調節します。

細胞外液の量を調節することで、血圧を適切に保っているのです。

つまり、ナトリウムが増加すると体は浸透圧を一定に保つため血液量を増やし、その分血管の壁を押す力が強くなり、血圧が上昇したりむくみが生じたりします。

また、ナトリウムは身体のエネルギー源であるブドウ糖やアミノ酸の吸収、筋肉の収縮や神経伝達などにも関わっています。

ナトリウムの欠乏

本人のナトリウム摂取量は食塩摂取量に依存しており、その摂取レベルは高いです。そのため、通常の食生活ではナトリウムが不足・欠乏する可能性はほとんどありません。

また、腎機能が正常であれば、腎臓におけるナトリウムの再吸収機能により体内のナトリウム量は適切に維持されるため、ナトリウムが欠乏することはありません。

しかし、大量飲水(1L/時 以上)・下痢・嘔吐・過度な運動・高齢・心不全・肝不全・腎不全・薬物使用などが原因で、低ナトリウム血症になることがあります。

ナトリウムの過剰摂取

前述した通り、ナトリウムの過剰摂取は血圧を上昇させるだけでなく、心血管疾患・胃がん・肥満・骨粗しょう症・メニエール病・腎臓病などのリスクが高くなることが多数報告されています。

さらに、ナトリウムの過剰摂取が原因で毎年189 万人もの人々が死亡していると推定されています。(日本WHO協会HPより)

どのくらい塩分を摂ってもいいの?

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、食塩相当量の目標量は、成人1人1日当たり男性7.5g未満、女性6.5g未満と設定されています。

なお、高血圧及び慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のための目標量は、男女とも1日当たり6.0g未満です。

令和元年度の国民健康・栄養調査の結果では、20歳以上の1日の平均食塩摂取量は、男性10.9g、女性9.3gであり、目標値を大きく上回っています。

さらに、国立健康・栄養研究所の報告では、日本人の食塩摂取量の約7割は調味料からの摂取とされています。まずは、調味料の使用量を減らすことから始めてみましょう。

高血圧を改善する食事や減塩で血圧を下げるコツについてはこちらの記事でもご紹介しています。

ナトリウムとカリウム

カリウムは、ナトリウムの血圧上昇作用に対して拮抗的に作用するため、野菜や果物などカリウムを多く含む食品を摂取することで、降圧効果が認められています。

カリウムは、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制し、尿中へのナトリウム排出を促進します。その結果、血液中の水分量が減少し、血圧が下がります。

減塩に加え、カリウム摂取を増やすことで、降圧効果がさらに高まることも報告されています。

尿ナトリウム/カリウム比(尿ナトカリ比)

近年、減塩とカリウム摂取を組み合わせて評価する「尿ナトカリ比(尿ナトリウム/カリウム比)」という指標が注目されています。

尿ナトカリ比は、尿中に排泄されたナトリウム濃度(mmol/L)とカリウム濃度(mmol/L)のバランスを示す指標であり、この値が高い場合、ナトリウム摂取量が多い、あるいはカリウム摂取量が少ないことを表します。尿ナトカリ比は、以下の計算式で算出できます。

◆尿ナトカリ比=尿中ナトリウム濃度÷尿中カリウム濃度

通常、摂取したナトリウムの約90%、カリウムの約70~80%が尿中に排泄されるため、尿ナトカリ比は、食事から摂取したナトリウムとカリウムの量比を客観的に評価することができます。

実際に、日本人の地域住民を対象とした大規模な研究では、尿ナトカリ比と血圧値との間に正の関連が認められています。

また、尿ナトリウムや尿カリウム単独の測定値よりも、尿ナトカリ比の方が血圧値との関連がより強いことも報告されています。

さらに、尿ナトカリ比が低いほど、高血圧のリスクが低いことが研究により明らかになっています。

健常な日本人における目標値として、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」の食塩とカリウム両方の目標量を満たす2未満を至適目標 、また複数の日本人一般住民集団における平均値である4未満を実現可能目標として設定しています。

尿ナトカリ比を下げ、血圧を下げるためには、野菜や果物の摂取が有効です。

例えば、塩分の多いラーメンにほうれん草やもやしをトッピングしたり、カレーにトマトピューレを追加する、ざるそばではなくとろろそばを選択する、味噌汁には野菜を追加し具だくさんにする等の工夫をすることで、尿ナトカリ比を下げることができます。

日本人は塩分摂取量が多いことから、塩分について気にされている方も多いと思います。

減塩をしつつ、カリウムが豊富な野菜や果物を積極的に摂取して健康的な食生活に取り組みましょう。

管理栄養士がおすすめする具体的な減塩レシピについてはこちらの記事でもご紹介しています。

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【参考文献】