食べて防ぐ!動いて守る!フレイルの予防と対策~人生100年時代をすこやかに生きるために~

この記事のポイント

  1. フレイルとは健康と要介護の中間の状態のこと
  2. 食事は、筋肉の材料になるたんぱく質と、エネルギー源になる糖質などをセットで摂取するのが基本
  3. 運動はスキマ時間の活用からはじめて、若いうちから習慣化しておくことが大切
  4. 社会交流での良い刺激や口腔ケアでフレイルの加速を阻止できる

加齢によって身体能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態が「フレイル」です。
東京都健康長寿医療センターによると、日本人高齢者の8.7%がフレイルに、さらに40.8%がフレイルの前段階に該当していた、という研究結果が出たそうです。
誰にでも平等に訪れる「老い」を緩やかに受け止め、しなやかに過ごすために、「フレイルとはなにか?」「どう対処すればよいのか?」を一緒に考えてみましょう。

1.フレイルとは

そもそも「フレイル」とは何なのでしょうか?
フレイルの語源は、英語で「虚弱」や「老衰」を意味する「frailty(フレイルティ)」です。
フレイルとは「健康」と「要介護」の中間の状態で、心身の活力は低下しているものの、適切な予防や治療をおこなうことで、健康な状態に戻れる段階とされています。

疲れやすい・やる気が出ない・食が細いなどの症状を「歳だから仕方ない」と放置していると、さらに活力が低下してしまいます。動かない→お腹が空かない→食べない→筋肉減少→さらに活力低下、というフレイルサイクルに陥り、介護が必要になったり疾患にかかるリスクが高まります。

まずは下記の基準に当てはまるものがないか、ご自身や周りの方の状態をチェックしてみましょう。

改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)

【体重減少】
6か月で、2kg以上の(意図しない)体重減少(基本チェックリスト #11)

【筋力低下】
握力:男性<28kg、女性<18kg

【疲労感】
(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする(基本チェックリスト #25)

【歩行速度】
通常歩行速度<1.0m/秒

【身体活動】
① 軽い運動・体操をしていますか?
② 定期的な運動・スポーツをしていますか?

上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答

(出典:国立長寿医療研究センター「改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)」より引用)

(より詳細なチェックリストはこちら↓)
イレブンチェックとは?東大教授が考案したフレイル度チェック法

上記基準に当てはまる方は今できることから、当てはまらなかった方は今後も当てはまらないように、「フレイル予防の3本柱+α」を意識して生活してみましょう!

「フレイル予防の3本柱+α」

①フレイル予防 第1の柱「食事」

(1)いろいろな食材を取り入れ、しっかり食べる

人は何をするにもエネルギーを必要としますが、そのエネルギーを自分の体内だけで作り出す事はできません。そのため、食事から摂取した栄養を代謝しエネルギーに変換することで活動することができます。

世の中にはさまざまな食材がありますが、「これさえ食べていれば完璧」という万能な食材はありません。多くの種類の食材を食べることで、体に回る栄養のバリエーションも増えていきます。

日々の食事に旬のものや地方の名産品などを取り入れ、栄養バランスのいい食事を美味しく楽しく食べましょう。

(2)たんぱく質

たんぱく質は、体を支える筋肉や骨、血液、髪の毛など、ありとあらゆる部位をつくるための材料になります。
特に、たんぱく質から筋肉を作る力は年齢とともに低下するため、効率よく十分な量のたんぱく質を摂取する必要があります。
たんぱく質は1日3食均等に摂取するほうが、1食でまとめて摂るよりも筋肉の合成量が高まったとの報告もあります。

たんぱく質を豊富に含む食材(肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など)を、片手掌に乗る量を1食の目安として、しっかりと摂取しましょう。
※主治医よりたんぱく質の摂取を制限されている方は医師の指示に従ってください。

(3)糖質

エネルギーが不足した状態でたんぱく質を摂っても、筋肉にはなりません。
ご飯やパン、麺などの炭水化物から糖質を摂取し、からだを動かすために必要なガソリンを充足させて初めて、たんぱく質は筋肉をつくりだすことができます。

1食あたり、ご飯なら茶碗1膳分(約150g)、食パンなら5~6枚切り1枚、麺なら1束もしくは1袋分を目安に、糖質を摂取しましょう。

②フレイル予防 第2の柱「運動」

もともと筋肉は怠けものです。
そのため、いくらたんぱく質を摂っても、動かなければ筋力や体力が低下し、より動くのが億劫になってしまいます。

動けなくなってから動こうとするのはとても大変です。
動ける今のうちに運動習慣を身につけておきましょう。

フレイルを予防するための効果的な運動については、こちらの記事でもご紹介しています。

(1)有酸素運動

全身の筋肉を使い、心肺機能を高める効果が期待できます。
有酸素運動には、ウォーキングやサイクリング、エアロビ、水中ウォーキングなどがあります。

近年では、早歩きと普通歩行を組み合わせた「インターバル速歩」も、筋力や持久力の向上、睡眠の質改善、認知機能改善などの効果があるとして注目されています。

(2)レジスタンス運動(筋力トレーニング)

いわゆる筋トレには、筋肉量の増加や骨粗鬆症予防、血糖値や血圧の改善などの効果が期待されています。
平均年齢90歳の方を対象にした研究でも、筋トレによって筋肉量と筋力がアップしたとの結果が報告されています。週2~3回を目安に、無理のないペースで筋肉を使う運動をおこないましょう。

(3)隙間運動

運動するのは良いことだと分かっていても、運動習慣がない方にとって新しく習慣化することは容易ではありません。まずは、食事を電子レンジで温めている間にスクワット、ドラマ視聴中のCMの間だけ足踏み、歯磨きをしながら踵の上げ下げなど、1日5分からでも体を動かす時間を増やしてみましょう。

普段なら寝転がっているところを座ってみたり、座っているなら立ってみたり、立ったなら動いてみたり。
動けるうちから、重力に抗って過ごす時間を増やしてみませんか。

③フレイル予防 第3の柱「交流」

自分以外の人と交流を持つことは、非常に良い刺激になります。年齢や生活環境など、自分とは異なる背景を持った人との付き合いが多い方ほど、認知症になりにくいという研究報告もあります。

また、人との関わりを持ち、協力しあうことで自立した生活を続ける事もできます。
いろいろな人と関わる機会を得るために、家にこもらず積極的に外に出かけましょう。

お口のフレイルも忘れずに

「口内環境」と「フレイル」は結びつきにくいですが、虫歯や歯周病で口腔内の環境が悪化すると、「噛みにくさ」や「飲み込みにくさ」を感じて食欲の減退につながったり、「話しにくさ」から人との会話を避け、交流が減ってしまったりと、フレイルの加速につながる可能性もあります。

食事を奥歯でしっかり噛めていますか?お口の中は乾いていませんか?食事中にむせることはありませんか?
今一度、確認してみましょう。

さらに、残存歯数が少ないと認知症のリスクが上がるとも言われています。
日々のケアに加えて定期検診を忘れずに受け、いつまでも美味しく食べることができるようお口を守りましょう。

おわりに

サルスクリニックには医師だけでなく管理栄養士も常駐しています。
「わかってはいるけれど食べられない」「何を食べたらいいのかわからない」など、お困りのことがございましたらお気軽にご相談くださいね。

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参考文献