オーラルフレイルとは
「最近、固いものが食べづらい」「よくむせる」「滑舌が悪くなった」…
こうした小さな変化を感じることはありませんか?
これらは「オーラルフレイル」と呼ばれる、口の老化の初期サインかもしれません。オーラルフレイルを放っておくと、食事量が減ったり、食べられる食品が限られたりして、栄養不足から全身の筋力低下やフレイル(心身の活力が低下した虚弱な状態)につながる可能性があります。
他にも、話す力の低下がきっかけで、社会参加が減少することもあります。
つまり、口の健康を維持することは「食べること」だけでなく、「栄養」「筋力」「生活の質」すべてに影響を及ぼす重要な要素なのです。
食生活とオーラルフレイルの関係
口の健康と食生活は切っても切り離せません。噛む力や飲み込む力が弱まると、やわらかい食品や単調な食事に偏りがちになります。その結果、「たんぱく質不足による筋肉量の低下」「ビタミン・ミネラル不足による免疫力の低下」「食欲の低下や体重減少」といった悪循環につながってしまいます。
一方で、バランスのよい食生活は、栄養を補うだけでなく、噛む・飲み込む動作そのものを鍛える役割も果たします。
つまり「よく食べること」「しっかり噛むこと」そのものが、オーラルフレイルの予防につながるのです。
オーラルフレイルの予防・対策「食生活」
オーラルフレイルが進行すると食が細くなりやすいため、普段の食事から効率よく「筋肉や口腔機能を支える栄養素」を摂ることが重要です。
1.たんぱく質を毎食摂る
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などをバランスよく食べましょう。
食べにくさがあるときは、煮る・ほぐす・あんかけにするなど工夫して食べやすくしましょう。
過去の研究では、1日に摂るたんぱく質の量は同じでも、朝・昼・夕の3食で均等に摂取したグループと、夕食に多く偏って摂取したグループで筋肉の合成量を比較したところ、3食均等に摂取したグループの方が筋肉が多く合成されたという研究結果もあります。
一度にたくさんのたんぱく質をとるのではなく、毎食少しずつたんぱく質を取り入れることを心がけましょう。
2.噛む力を意識した食材を取り入れる
すべてやわらかい食品にすると噛む力が弱まります。
根菜の煮物やきのこ、昆布など「少し噛む必要のある食材」を無理のない範囲で取り入れることで、自然と噛む回数が増え、噛む力の維持・向上につながります。
【食事の例】
- 根菜(ごぼう、たけのこ、れんこんなど)を煮物にする(軟らかくしつつ、適度な噛みごたえを残す)
- 昆布やきのこなど繊維質の食材を細かく刻んで料理に加える
- 噛む力がある方は小魚やナッツ類をおやつに少量取り入れる
- 雑穀(玄米やもち麦)を主食に混ぜる
- 食材の繊維に沿って大きめに切る(乱切りやくし形切り)ことで、噛み応えを出す
3.ビタミンやカルシウム、鉄なども忘れずに
たんぱく質だけを摂取しても、筋肉や体づくりは十分に行えません。
たんぱく質を効率よく取り込むためには、ビタミン(特にビタミンC)やカルシウム、鉄を一緒に摂ることが大切です。
ビタミンC:野菜や果物から摂る→歯ぐきや粘膜の健康維持
カルシウム:乳製品や小魚で摂る→歯や骨を丈夫にする
鉄・亜鉛:赤身肉や魚介類(カツオや赤身の魚)、海藻類から摂る→免疫力や味覚の維持を助ける
4.食べやすい調理の工夫
「食べにくいから」と避けるのではなく、調理方法で工夫しましょう。
- 煮込みや蒸し料理で軟らかくする
- あんかけにしたりとろみをつけて飲み込みやすくする
- 刻む、ほぐす、ペースト状にするなど形態を調整する
- 少量でも軟らかくたんぱく価が高い食品(卵、豆腐、納豆など)を活用する
※たんぱく価(プロテインスコア)とは、食品に含まれるタンパク質の栄養価(質)を示す指標。 - 少量しか食べられないときは、たんぱく質やエネルギーを補えるゼリー飲料を活用する
5.水分をこまめに摂る
口の乾燥は、咀嚼・嚥下を妨げます。
汁物やゼリー飲料なども活用しながら水分を補いましょう。
一度に水分を多くとるのではなく、こまめに口を潤すことを意識しましょう。
この5つのポイントを意識して食生活を見直してみましょう。
東京都では、これらの「毎日摂りたい食品」の頭文字をとって、以下の合言葉にしています。
この合言葉を意識することで、栄養バランスの偏りを防ぎ、フレイルの予防を目指しています。
フレイル予防の食事のポイントについてはこちらの記事でもご紹介しています。
オーラルフレイルの予防・対策「かみかみ体操」
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所のホームページでは、噛むために必要な口周りの筋肉の動きをよくするストレッチや、口の筋肉を鍛える体操を紹介しています。
- 口周りをリラックスさせる「首回しストレッチ」
首を左右に3回ずつ回す。大きくゆっくり行って。 - かむ力をつける「かみかみ体操」
口を閉じて、口の上・下・右・左に空気を入れて順番にふくらませる。
すばやく10回ずつふくらませて。 - 口の動きをなめらかにする「ウ〜イ〜運動」
「ウ〜イ〜」と言いながら、リズミカルに足踏みをする。4回くり返す。
(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所 パンフレット「かみかみゴクゴク体操」より引用)
首や肩の周囲には、嚥下に必要な筋肉が集まっています。
「首まわしストレッチ」で筋肉の緊張がほぐれ、血行が促されると、噛む力や飲み込む力がアップします。
「かみかみ体操」は口周りの筋肉を鍛え、噛む力をアップさせます。ほっぺをふくらませることで、筋肉が気持ちよく伸び、口を動かしやすくなります。食べこぼしを防いだり、食べ物が鼻に流れ込んだりするのを防ぐ効果があります。
「ウ〜イ〜運動」は、体と口を使いながら、動きをなめらかにします。大きくしっかり動かすとより効果的です。
(詳しいやり方についてはこちら)
食べることを楽しみ続けるために
オーラルフレイルの予防には「誰と食べるか」「楽しく食べているか」なども重要なポイントです。
【ポイント】
- 誰かと一緒に食べる
- テーブルで食べる(椅子に深く腰を掛け、踵がつく高さにし、首と背筋をまっ直ぐにして座って食べる)
- 一口ごとによく噛んで、箸を休めながらゆっくり食べる
- 「テレビを見ながら食べる」などの「ながら食い」をしない
誰かと一緒に食事をすれば、食事中の会話も自然と口の運動(咀嚼や発声のトレーニング)になります。
孤食を避け、地域の食事会や家族との食事を大切にしましょう。誰かと食事をすることは、心身の健康を守ることにもつながります。
まとめ
オーラルフレイルは、全身のフレイルへの入口であり、心身からの重要なサインです。
口の健康を守ることは、栄養の確保に役立つだけでなく、社会参加や生きがいを維持することにもつながります。
「食べにくい」「噛みにくい」と感じたときこそ、食生活を見直すチャンスです。
今回ご紹介した食生活の工夫を取り入れ、栄養不足を防ぎ、調理法や食品の選び方を工夫すれば、「食べやすさ」と「口の筋肉の維持」を両立することができます。
食べる楽しみを守ることが、健康寿命を延ばす第一歩です。
サルスクリニックには管理栄養士がいます
管理栄養士は、噛む力や飲み込む力に合わせて「食べやすく、かつ栄養を満たす方法」を一緒に考える専門家です。口から食べることを最後まで支えるために、無理なく続けられるちょっとした工夫をともに考え、その継続をサポートします。お悩みのことがございましたら、お気軽にご相談ください。
【参考文献】
- 東京都福祉局.”知っておく!からはじめる 人生100年時代の介護予防・フレイル予防 東京都介護予防・フレイル予防ポータル” .東京都福祉局
- 日本老年歯科医学会.”オーラルフレイルを知っていますか?”.一般社団法人 日本老年歯科医学会.2024-04-01
- 照山裕子・浦長瀬昌宏.”かみかみゴクゴク体操 |誤嚥性肺炎の予防”.公益財団法人ライオン歯科衛生研究所
- Mamerow MM, et al. J Nutr. 2014: 144(6): 876-880.
