血糖自己測定の方法は?~自分でできる血糖測定の種類とメリット~

この記事のポイント

  1. 糖尿病やその合併症と上手に付き合っていくためには、血糖コントロールが大切
  2. 通院時に測定する検査値だけでは、日常生活における血糖値の変化を把握することは難しい
  3. 糖尿病になると血糖値の変動幅が大きくなるため、自己測定器を正しく活用し、自分の血糖変動について知ろう

血糖値測定とは?

血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度を示す数値のことです。「空腹時血糖値」は、前日の夕食後から翌朝まで何も摂らずに、空腹時の血糖値を測定します。「随時血糖値」や「HbA1c」は、採血をして血糖値を測定します。「ブドウ糖負荷試験後の血糖値」は、10時間以上絶食し採血をおこなったあと、さらに75gのブドウ糖液を摂取してから2時間後に血糖値を測定します。

糖尿病の診断はこのような検査を病院などで実施し、結果をもとに「正常型」、「境界型」、「糖尿病型」のいずれかに分類されます。
その中でも、日本の糖尿病患者の95%以上を占める2型糖尿病は、多くの場合、痛みなどの自覚症状がないうちに病気が進行していき、気がつかないうちに合併症を引き起こすリスクが高まります。これが糖尿病のおそろしい点です。定期的に病院で検査を受け、早期発見につなげましょう。

病院で受ける検査の他に、自宅でできる検査もあります。こちらのコラムでは、自分でできる糖尿病検査と血糖測定機器についてご紹介します。測定によって得られる情報を活用し、より良い治療に役立てましょう。

自分でできる糖尿病の検査

  1. 血糖自己測定(SMBG:self monitoring of blood glucose)
    簡易血糖測定器を用いて、自分で血糖値を測定します。血糖値を測定することで病状を的確に分析することができます。最近では、痛みの少ないものや測定しやすいものなど、様々なタイプの測定器があります。
  2. 尿糖検査
    簡易尿検査キットを用いて、尿中の糖の濃さを調べることができます。食前に排尿したうえで、食後2時間の尿を市販の検査用試験紙につけ、色の変化をみて尿中のブドウ糖の有無を確認します。個人差はありますが、通常、血糖値が160から180mg/dLまで高くなると、尿の中に糖が漏れ出すといわれています。血糖値を下げる薬には、尿中に糖を出すものもあります。自宅で使用する場合は、主治医に相談してから使用するようにしてください。尿糖検査キットは薬局でも購入できます。取扱説明書をよく読み正しく使用しましょう。
  3. 血中ケトン体測定
    血液中のケトン体を調べることができます。インスリンの欠乏や作用不足を検査する方法として注目されており、ケトン体も測定できる血糖自己測定器もあります。陽性であれば、からだの中でブドウ糖の利用が少なく、脂肪がエネルギー源として利用されているということです。尿中のケトン体については試験紙で簡単に調べられますが、さらに正確に調べる場合は、血液中のケトン体を測定します。
  4. 体重測定
    食事管理の指標とするために、体重測定は重要です。
    できるだけ1日の決まった時間、タイミングで体重を測定するのが理想です。

血糖自己測定のメリット

  • 自分で血糖値の変化を正確に知ることができる
  • 1日の血糖値の変動をつかむことができる
  • インスリン注射の量を調節できる
  • 主治医の治療計画に役立ち、より良い治療を受けることができる

糖尿病の方には、低血糖予防のためにも血糖自己測定がおすすめですが、「痛そう」「大変そう」と感じている方も多いのではないでしょうか。
現在は測定器も改良され、痛みも少なく使いやすい、新しいタイプの測定器も登場しており、インスリン療法をおこなうすべての方へ公的医療保険が適用されています。

血糖変動を調べる機器について

糖尿病でなくても、血糖値は変動します。日常生活で血糖値がどのように変動しているかを知るために、それぞれの機器の違いを理解するところからはじめましょう。

持続血糖モニター(isCGM rtCGM)  

連続測定ができ、測定期間中でもセンサーは装着したままにできるため、数日間にわたる血糖変動の傾向をみることができます。夜間低血糖や食後高血糖を把握しやすいという特徴があります。
測定対象は皮下組織間質液中の糖濃度から血糖値を推定した値です。

isCGM:スキャン式持続血糖測定
対象者:血糖値を下げる注射薬を使用している方、糖尿病かつ妊娠中の方など
上腕の後ろ側にセンサーを装着すると、センサー部分に自動で測定値が記録されます。リーダーあるいはモバイル機器をスキャンすると測定値を見ることができます。

rtCGM:リアルタイム持続血糖測定
対象者:急性発症1型または激症1型の糖尿病の方、インスリンポンプ使用者など
腹部などに、専用のセンサー、トランスミッターなどを装着します。専用のモニターや
モバイル機器、インスリンポンプのいずれかの画面に測定値が表示されます。

血糖自己測定器(SMBG)

測定した時点での血糖値がわかります。
1日7~8回測定することにより、血糖トレンドをある程度推測することも可能です。

SMBG:血糖自己測定器
対象者:血糖値を下げる注射薬を使用中の方、糖尿病かつ妊娠中の方など
刺針を用いて指先などから採血をおこない、血液をチップ(血糖測定電極)に付着させます。数秒後、機器のモニターに血糖値が表示されます。測定ごとに機器の交換が必要です。
※各機器には保険診療上の算定要件があり、検査用途の要件は除いています。

インスリン治療を行っている場合

インスリン療法を行っている人は、決められた範囲内でインスリンの注射量を調整します。食事や運動、薬によってもインスリンの効きが変化するため、リアルタイムで血糖値を測ることができる血糖自己測定は、より厳格な血糖コントロールを行ううえでも役立ちます。

  1. 低血糖と感じた時
    低血糖の症状を感じたら、すぐにブトウ糖(もしくはブドウ糖を含む飲み物)または砂糖を摂取しましょう。血糖自己測定をおこなって血糖値を確認し、低血糖症状と血糖値の関係を理解して今後の低血糖予防につなげましょう。
  2. インスリン注射の前後
    インスリン治療の効果、投与量の調整を確認する場合は、医師に指示されたタイミングで測定をおこないます。食事や運動の量が変わるとインスリンの効きも変化するため、血糖自己測定をおこなうことで治療の参考になります。
  3. 体調不良のとき
    発熱や体調不良のとき、または生活に変化があったときに測定すると、血糖値に影響している事柄を確認できます。
  4. 運動時
    運動前後に測定することで、運動による効果と低血糖の有無などが確認できます。

インスリン治療を行っていない場合

飲み薬、あるいは食事療法・運動療法だけの治療を受けている方でも、血糖自己測定をすれば治療の効果を確認することができます。治療効果が分かれば治療への意欲も高まります。同じカロリーの食べ物でも、ものによって血糖値の上がり方が異なるため、血糖値が上がりにくいものを分析し、日々の血糖コントロールに役立てましょう。新しい薬を飲み始めた時や、体調不良のときも測定するようにしましょう。

血糖自己測定の結果の活かし方

血糖自己測定を行い、ノートなどに記録します。結果を十分に活用するためには、数値を記入するだけでなく、数値とともに測定したタイミング、食事や運動のタイミングや内容、薬の使用、症状の有無などのエピソードも記載しておくとよいでしょう。

大切なのは、自分で行った検査の結果を記録し、主治医に伝えることです。もちろん病院でも詳しい検査をしますが、日常生活の中で得られる測定値は、医師や管理栄養士が食事指導や治療方法を計画するための参考となる重要な情報となります。

また、定期的に健康診断を受けて、糖尿病や糖尿病予備群を早期発見することが大切です。 糖尿病予備群と言われた場合、まずは生活習慣を見直しましょう。 糖尿病と診断された場合は、医師の診察を受けた上で、定期的に検査と治療をおこなうようにしましょう。

糖尿病の食事療法や運動療法についてはこちらの記事でもご紹介しています。

サルスクリニックにはいつも管理栄養士がいます

サルスクリニックには医師や看護師だけでなく、管理栄養士が常駐しています。
食生活だけでなく、ライフスタイルやご職業などの背景を踏まえ、実行できる食事療法を患者さんと共に考え、その継続をサポートします。お気軽にご相談ください。

【参考文献】
日本糖尿病学会編著:糖尿病治療ガイド2021-2022.文光堂,2022
糖尿病ネットワーク: 血糖トレンドの情報ファイル 1996-2023 soshinsha.
糖尿病ネットワーク: 糖尿病セミナー 1996-2023 soshinsha.

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