お酒とタバコは血圧にどう影響を与えるの?
お酒が血圧に与える影響
- 血管の拡張により一時的に血圧が下がる
- 長期間にわたる飲酒を続けていると、量によっては高血圧の要因となる
アルコールを摂取すると、アルコール分解酵素によってアセトアルデヒドという物質に変化します。このアセトアルデヒドが血中に増えることで血管が拡張するため、一時的に血圧が下がります。しかし、アルコールには血管を収縮させる作用や、心臓の拍動を速めて交感神経を活発にする作用もあるため、長期間お酒を飲み続けることで血圧の平均値が上昇してしまいます。
また、お酒を飲みながら食べるおつまみには、塩分の高いものが多いです。塩分が多いと血中のナトリウム濃度が上がり、ナトリウム濃度を薄めようと身体中の水分が血管内に集まります。そのため、血管内が過密になり、更に血圧が上昇してしまいます。ちなみに、アルコールを制限したことによる降圧効果は「収縮期血圧で約-3mmHg、拡張期血圧で約-2mmHg」というデータも示されています。
タバコが血圧に与える影響
- タバコの煙の中に含まれる有害化学物質が、交感神経を刺激して血圧を上げる
- 紙巻きタバコを1本吸うと、15分以上血圧の上昇が持続する
- 体の様々な箇所で動脈硬化のリスクが高まる(末梢や手足、頸動脈など)
ニコチンや一酸化炭素などは、心拍数の増加や心筋の収縮を引き起こし、血管の収縮によって血流量が低下し、酸素や栄養の供給も減少します。また、タバコに含まれる活性酸素は血管内皮の組織障害などを引き起こし、動脈硬化や血栓の形成につながることで血圧が上昇します。
高血圧治療に関する基本的なことについては、こちらの記事でも解説しています。合わせてご覧ください。
お酒の飲み過ぎによるデメリット
- 高血圧を引き起こす要因になる
- 脳卒中や心臓病のリスクが高まる
- 肝機能障害などを引き起こす
- 睡眠の質が下がる
1.高血圧を引き起こす要因になる
前述の通り、毎日の飲酒や飲み過ぎは血圧を上げることがわかっています。血圧が上がると、やがて動脈硬化を進行させ、様々な病気に繋がっていきます。
2.脳卒中や心臓病のリスクが高まる
お酒の飲み過ぎにより、心不全の発症率が上がることがわかっています。また、不整脈を誘発し、心房細動の罹患リスクが約2倍に上がるとも言われています。もしアルコール心筋症を発症した場合は、飲酒を断つことが必要になります。
3.肝機能障害を引き起こす
肝機能障害として、アルコール性障害を引き起こす可能性が高まります。飲み過ぎによって肝臓に負担がかかり、中性脂肪の蓄積によって脂肪肝になります。飲酒をやめれば肝臓の状態は良くなりますが、量を減らさずに飲み続けると、アルコール性肝炎やアルコール肝線維症になり、その状態が続くと肝硬変へと進行していきます。肝硬変が進行すると肝臓がんまで進展する可能性が高くなり、最終的には死に至る場合があります。
4. 睡眠の質が下がる
寝つきを良くするためにお酒を飲む方もいますが、実は少量のお酒でも寝る前に飲むことで睡眠障害を引き起こすと言われています。寝つきは良くてもいつもより早く目覚めたり、夜中に目覚めてその後なかなか眠れず、結果として睡眠不足につながります。また、良質な睡眠がとれないと、お酒を飲み過ぎたり食べ過ぎたりしてしまい、高血圧を含む様々な疾患の誘発に繋がります。特に晩酌は早朝高血圧の要因となるため、血圧が高い方は注意が必要です。
タバコのデメリット
- 高血圧を引き起こす要因になる
- がん、心疾患、脳卒中、喘息、歯周病などの発症率が高まる
- 周囲の非喫煙者にも健康影響を及ぼす
- 依存性がある
1.高血圧を引き起こす要因になる
タバコに含まれるニコチンには強力な血管収縮作用があるため、血圧を上昇させます。そしてタバコに含まれる活性酸素は、血管内の組織傷害を引き起こし、動脈硬化や血栓(血の塊)の形成を促進させます。そのため血圧が上昇し、高血圧になるリスクが高まります。
2.がん、心臓病、脳卒中、喘息、歯周病などの発症率が高まる
喫煙男性は、非喫煙者に比べて肺がんによる死亡率が約4.5倍高くなり、それ以外のがんについても発症率が上がることが報告されています。タバコの煙には発がん性物質が約70種類ほど含まれており、肺などの臓器だけでなく血液中にも流れることで全身に運ばれ、がんの要因となります。他にも、心臓病や脳卒中は、喫煙によって発症率が上がるといわれています。また、喫煙者は非喫煙者と比較して歯周病にかかりやすく、悪化しやすいことがわかっています。歯周病が悪化すれば、食べられるものが限られるのはもちろんですが、さらに血液や呼吸器内に入り込み、心筋梗塞や動脈硬化症などを引き起こしやすくなります。
3.周囲の非喫煙者にも健康影響を及ぼす
非喫煙者でも、副流煙を吸い込むことで肺がんや心疾患、脳卒中になりやすく、急性の呼吸器疾患に影響することが明らかになっています。特に子どもへの影響としては、乳幼児突然死症候群(SIDS)や喘息との因果関係があることがわかっています。タバコが社会全体に与える損失は約1.8兆円にものぼり、そのうちの約1.5兆円は医療費と言われています。
4.依存性がある
タバコに含まれるニコチンは、タバコへの依存性を高める化学物質です。コカインなどの麻薬と同じくらい依存性が高く、禁煙・節煙に困難を伴います。ニコチンは血管を収縮させて血液の流れを悪くするため、高血圧で治療中の方はさらに脳卒中や心疾患に罹りやすくなります。
一方で、禁煙を始めるとすぐに効果が現れ、その効果は長期間持続することがわかっています。
早く禁煙をはじめれば、非喫煙者と変わらない寿命を取り戻すことができるとも言われています。
ご家族やご自身のことを考えて、今日から実践してみましょう!
節酒や禁煙を成功させるコツ
節酒のコツ
- 自分の飲酒量を把握する
- お酒と同量の水を交互に飲む
- 2種類以上のお酒を飲んでいる場合は、1種類に減らす
- お酒の原液を割って飲んでいる場合は、原液量を半分に減らし薄くする
- 休肝日を週2日設ける
自分の飲酒量を把握する
自分が1日どのくらいのお酒を飲んでいるのか、意識しながら飲んでいますか?
男性の場合、1日の適量は「ビール ロング1缶(500ml)、ALC.7%のチューハイ1缶(350ml)、日本酒1合(180ml)、ALC.25%の焼酎(100ml)、グラスワイン2杯(200ml)」と言われています。
女性の場合は男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も少ないことや女性ホルモンの一種であるエストロゲンなどの働きにより、アルコールの影響を受けやすい可能性があるため、男性の半量という厳しい基準となっています。自分の飲酒量が基準を超えていないか確認し、基準内に収まるよう調節しましょう。
お酒と同量の水を交互に飲む
ビールを1缶飲み終えたら、次はビール1缶分の水分を摂るようにしましょう。
アルコールは脳の食欲中枢を直接刺激するため、酔うと食欲増進につながります。
お酒と水分を同量ずつ交互に飲むことでアルコールがゆっくり吸収され、酔うスピードを抑えることができるため、飲酒量や食事量のコントロールがしやすくなります。また、アルコールは強い利尿作用もあるため、お酒を飲むと脱水になりやすいです。脱水になると血圧も上がりやすくなるため、積極的に水分を摂りましょう。
2種類以上のお酒を飲んでいる場合は、1種類に減らす
飲み会などで自分が飲んだお酒の量を覚えていますか?
何種類ものお酒を飲んでいると、何をどれくらい飲んだのか、把握しにくくなります。
1種類だけに絞れば飲んだ回数を数えるだけで済むため、1日の適量をもとに、飲酒量を把握しやすくなります。
お酒の原液を割って飲んでいる場合は、原液量を半分に減らし薄くする
飲む量を変えずにアルコールの量を減らすことができるため、満足度が下がりにくくなります。
お湯割りや水割りで飲めば、水分の摂取量も増やすことができるため一石二鳥ですね。
休肝日を週2日設ける
事前にお酒を飲まない日を決めておきましょう。
カレンダーアプリなどで事前に休肝日を登録しておくのもいい方法です。
お酒を飲むと、肝臓はアルコールを分解しようと寝ている間も活発に働きます。
たとえば、ビールならロング缶2本、焼酎なら1カップ、これらを肝臓で分解するためには約6~7時間かかると言われています。女性や体質的にお酒が弱い人などは、さらに長い時間が必要になります。胃や腸などの粘膜も荒れるため、臓器を修復する期間を含めると週に2日程度の休肝日をつくることが大切です。2~3日飲んだら1日休む、という習慣をつけて肝臓を休ませてあげましょう。
禁煙のコツ
- ガムを噛んでみる
- 周囲に節煙・禁煙宣言をする
- 食後はすぐに歯磨きをする
- 禁煙外来を利用する
ガムを噛んでみる
「口寂しくてついタバコを吸ってしまう…」という方は、代わりにガムを噛んでみましょう。
ガムを噛むことで喫煙欲求を抑えることにつながります。また、口の中が唾液で潤うため、口臭を抑える効果も得られます。
周囲に節煙・禁煙宣言をする
周囲に宣言することで、目標の達成率を上げる心理効果があります。
他者からの応援があれば、節煙・禁煙に対するモチベーションも上がりますよね。
食後はすぐに歯磨きをする
口の中がスッキリするため、喫煙欲求を抑える効果があります。
口内を清潔に保ち、口臭を予防するためにもぜひやってみましょう。
禁煙外来を利用する
依存性の高いタバコは、本人の意識や気持ちだけで禁煙をするのは難しいことが多いです。
現在、サルスクリニックの禁煙外来では、貼り薬を使用した治療をおこない禁煙を促しています。また、保険の適応条件を満たしている方は、保険診療での治療が可能です。特に、喫煙が循環器疾患の危険因子となることはわかっているため、血圧が高い方はもちろん、心臓や脳血管に負担を与えたくない方は、ぜひ禁煙に取り組んでみましょう。
中には、禁煙をすると食事量が増え、体重が増加してしまうことを気にして、禁煙をためらう方もいらっしゃいます。
禁煙後は食生活の内容が変わりやすく、体重増加を招く可能性が高まりますが、それ以上に、禁煙を実行することで得られるメリットは大きいと言われています。また、サルスクリニックには管理栄養士が常駐しているため、禁煙治療に加えて栄養指導の実施も可能です。良好な血圧と体重を維持できるよう、節酒や禁煙、栄養改善に取り組みたい方は、医師や管理栄養士へ相談してみましょう。
サルスクリニックには管理栄養士がいます
当院では、食生活だけでなく、ライフスタイルやご職業などの背景を踏まえ、実行できる治療法を患者さんと共に考え、その継続をサポートします。お気軽にご相談ください。
【参考文献】
- 平野 公康 / 中村 正和.”喫煙と循環器疾患”.健康日本21アクション支援システム Webサイト.2022-12-13.
- 中村 正和.”禁煙の効果”.健康日本21アクション支援システム Webサイト.2025-10-15.
- 伊東 寛哲.”アルコールと循環器疾患”.健康日本21アクション支援システム Webサイト.2022-12-21.
- 厚生労働省 . “喫煙と健康問題について簡単に理解したい方のために(Q&A)” . 厚生労働省
- 国立研究開発法人国立がん研究センター.”「喫煙と健康 望まない受動喫煙を防止する取り組みはマナーからルールへ」”.国立がん研究センター がん情報サービス.2020-04
- 日本高血圧学会 高血圧診療ガイド2020作成委員会 . 高血圧診療ガイド2020 . 株式会社 文光堂 , 2020.
