脳卒中とは?
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることでその先の細胞に栄養が届かなくなり、脳の働きに障害が起きてしまう病気です。脳血管障害とも言います。脳卒中という病名はあくまで総称で、大きく分けて脳の血管が詰まる「脳梗塞」(虚血性脳卒中)と脳の血管が破ける「脳出血」(出血性脳卒中)の二つがあります。
・脳梗塞
①アテローム血栓性脳梗塞……首や脳の血管の動脈硬化が進行し、血管が詰まる
②ラクナ梗塞……太い血管から枝分かれした細い血管(穿通枝)が詰まる
③心原性脳塞栓症……心臓で出来た血栓が血液に運ばれて、脳の血管に詰まる
・脳出血
①脳実質内出血……脳の組織自体に出血が起こる
②くも膜下出血……脳の表面であるくも膜下腔に出血が起こる
脳卒中にはどんな治療法があるの?
脳卒中は種類、発症してから治療までの時間、損傷を受けた場所などによって治療法が異なります。
それでは治療法について、脳卒中の種類ごとに説明していきます。
アテローム血栓性脳梗塞
発症から4.5時間以内ですと、t-PAという血栓を溶かす薬(血栓溶解剤)を使うことができます。これにより閉塞した血管を再開通させることができる場合があります。点滴で行う治療のため体への負担は少ないですが、点滴で投与された薬剤が血栓に対しピンポイントで作用するわけではないため、大きな血栓は溶けない場合もあります。t-PAは4.5時間を過ぎると期待できる効果が小さくなるため、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。
4.5時間以上経過したとしても、8時間以内であれば血管内治療による血栓回収療法ができる場合があります。血栓回収療法とは、カテーテル(医療用の細い管)を脚の付け根の血管から挿入し脳の血管が詰まっている部分まで進めて血栓を回収する方法です。血栓がある場所などによって異なりますが、血栓を砕きながら吸引をして血栓を回収する方法、ステント(筒状の網)で血栓を絡めとる方法を組み合わせて血栓回収をおこなうことが多いです。
それ以外の治療としては、血液の固まりがさらにできるのを抑える薬(抗血栓薬)や脳細胞を保護する薬(脳保護薬)などが使われます。
ラクナ梗塞
通常ですと手術が必要になることはなく、基本的に内科的治療を行います。主な治療には、抗血栓薬、脳保護薬などが使われます。薬に加えて、回復のためにリハビリテーションをおこなうことも重要な治療の一つです。リハビリは点滴治療中の早期から手足の関節を動かすなど、ベットの上でできるものから開始します。体の運動機能の回復だけでなく、心理的・社会的な回復を目指し、もともと行っていた日常生活にスムーズに戻れるよう継続的に行います。
心原性脳塞栓症
基本的にはアテローム血栓性脳梗塞と同様に、 発症から4.5時間以内であればt-PAを使用します。4.5時間以上経過したり、t-PAを使用しても再開通されない場合には、血栓回収療法を行う場合があります。
心原性脳塞栓症は、突然血管が詰まるため大きな梗塞巣(脳細胞が壊死した範囲)ができやすく、こうした治療がうまくいかないことがあります。そうなると、脳がひどく腫れ上がり、脳ヘルニア(脳圧が高くなり脳の中にある境界や隙間から脳の一部がはみ出す状態)になります。脳ヘルニアにより命を落としてしまうことを避けるために、頭蓋骨の一部を外して脳圧を下げる手術が行われることもあります。
脳実質内出血
出血の場所や出血量により治療法が変わります。多くの場合は脳の腫れを取る薬や血圧を下げる薬を使う薬物治療が行われます。出血が多く、脳が圧迫されている症状の場合には手術をおこないます。この手術には、頭の骨を外して顕微鏡を使って出血を治療する「開頭術」、頭の骨に小さな穴をあけてそこから内視鏡(数ミリの細いカメラ)を挿入して血液を取り除く「内視鏡手術」などがあります。
内視鏡では、術中の激しい出血がある場合などには出血点が見つけにくく、止血が難しいため開頭術に切り替える場合もあります。
くも膜下出血
くも膜下出血発症直後は、出血した部分を一時的に止血します。しかし、血圧の上昇などで再出血することがあり、その場合は脳全体がダメージを受けることが多いため、くも膜下出血の治療では、再出血を防ぐためにまず血圧の管理が必要となります。降圧薬を使用し、急激な血圧の変化を防ぐことで再出血を予防します。
次に出血の原因となった動脈瘤の部位と大きさを調べ、手術を行います。手術には、頭を開けて脳動脈瘤の根本に直接チタン製のクリップをかけ、脳動脈瘤へ血液が流れないようにする「開頭クリッピング術」、足の付け根の血管からカテーテルを挿入し、脳動脈瘤まで到達させ、脳動脈瘤内へコイルをくるくると詰めて塞栓する「コイル塞栓術」手術があります。これらの手術は年齢、動脈瘤の大きさ、形態、部位などに応じて行われることになります。
再び脳卒中を起こさないようにするには?
薬や生活習慣の改善によって、再び脳卒中を起こす可能性を低くすることができます。
そのためには、薬の服用と生活習慣の改善を同時に行うことが最も効果的です。医師から処方された薬をしっかりと服用し、また医師と相談しながら生活習慣を改めることが重要です。
薬の服用
脳梗塞の再発予防薬は、大きく分けて2種類あります。ひとつは抗血小板剤です。これは頸動脈や脳の血管に問題がある場合に、血小板が固まらないようにする薬です。もうひとつは抗凝固薬です。これは不整脈や重度の心疾患が原因で心臓の中で血液が滞ることによってできる血栓を防止する薬です。
その他にも、脳卒中の危険因子である血圧、血糖値、コレステロールを下げるための薬も使われます。
生活習慣の改善
生活習慣を改善することは、脳卒中のリスクを下げるためには必要不可欠です。なぜなら、正しい生活習慣が脳卒中の危険因子である血圧、血糖値、コレステロールなどをコントロールすることに役立つからです。さらに、脳卒中のリスクを下げるための生活習慣の改善は他の多くの病気の予防にもなります。
以下のことに気を付けて、生活習慣を改善しましょう。
- タバコを吸っている場合は、タバコをやめる。
- (医師が安全であると認めた場合)1日30分以上の運動を毎日おこなう。
- 太っている場合は、体重を減らす。
- 肉類、菓子類、パンや白米などを控え、果物、野菜、低脂肪乳製品を多く含む食事をする。
- 塩分(ナトリウム)を控える。
- アルコールを控える。(女性であれば、1日1杯まで。男性なら1日1~2杯まで。)
積極的に摂取すべき食べ物や控えなければならない食べ物、また運動量やその内容の詳細は患者さんそれぞれで異なります。自己判断せず、必ず医師や栄養士などの指示に従いましょう。
ひとりで悩まず、まずは相談を!
脳卒中の予防には、高血圧、脂質異常症、糖尿病の予防や治療が重要です。食生活を改めたり、運動する習慣をつけたりするなどして生活を整えましょう。一番の原因となる高血圧は自覚症状が現れにくく、知らず知らずのうちに身体に負担をかけてしまっていることが多いため、健康な身体を維持するためにも定期的な検査と早めの治療や生活習慣改善の取り組みは必要不可欠です。