塩と血圧の関係性
高血圧の方が食事面で一番に気をつけるべきことは、減塩です。塩辛いものを食べたときに、普段よりたくさん水を飲みたくなった経験はありませんか?人間の身体には、塩分と水分のバランスを一定に保とうとする機能が備わっています。そのため食塩を摂りすぎると、体内の塩分濃度を下げようとして、喉が乾きます。すると、血液の量が増えて血管に加える圧力が高くなる、つまり血圧が上がるという仕組みです。このように血圧と食塩には密接な関係があるため、高血圧の方は食塩摂取量を減らすよう心がける必要があるのです。
どれくらい減らせばいいの?
日本人は一日に、平均10g前後の食塩を摂取しているという調査結果があります。これに対して高血圧の方が目指すべき一日の食塩摂取量は、6g未満です。生きていく上で一日に必要な食塩の量は1~2gなので、6g未満に抑えることで健康に悪影響が出ることはありません。しかし、急に極端な減塩をすると一時的に体調を崩してしまう恐れがあるので、少しずつ取り組みましょう。
食事に含まれる食塩量
食塩「6g」と言われてもイメージがつきにくい方も多いかと思いますので、いくつか例を挙げてみます。商品や材料、レシピによっても異なりますが、標準的なものでは、以下の通りの食塩が含まれています。
- 梅干し1個(10g)…約2.0g
- 塩鮭1切れ…約3.5g
- カレーライス1人前…約3.3g
- カップ麺1個…約5.5g
つまり、カップ麺を1個完食したら、その日の他の食事は食塩をほとんど含まないものにしないと、目標値を達成できないということになります。
反対に、梅干しを2つ食べたり塩鮭を1切れ食べたりするよりも、カレーライス1人前の方が塩分が少ないことについて、意外に感じた方もいるのではないでしょうか。カレーは塩だけに頼らずスパイスによっても味付けがされているため、濃い味の料理の割には食塩含有量が少ないのです。日本食は寿司も醤油をつけて食べますし、うどんや蕎麦のつゆにも食塩が多く含まれます。まずは、自分が普段どれくらい食塩を摂取しているのか、確認してみると良いでしょう。
食塩摂取量の確認方法
これまで食品の栄養成分表示では、食塩の含有量は直接的には表記されておらず、「ナトリウム量」の表示から計算して食塩量を求めなければなりませんでした。しかし、日本高血圧学会減塩委員会の働きかけにより、2020年からは「食塩相当量」で表示する決まりになりました。よって、食品のパッケージを見れば、どれくらいの食塩が含まれているかがひと目でわかるようになりました。今日食べたもの、これから食べるものなど、お手元に食品パッケージがあれば、ぜひ見てみてください。このように表記改定がなされたのは、食塩摂取量を習慣的に確認することが、多くの人にとって必要であると判断されたということです。減塩の大切さが再確認できますね。
食塩を摂りすぎてしまう理由
では、なぜ多くの人が食塩を摂りすぎてしまうのでしょうか。そもそも味というのは、まず舌の表面で感知されます。舌はよく見るとざらざらとしていますよね。そのざらざらの中には、味蕾という味のセンサーがあります。食べ物を口に入れると、味蕾の中にある味細胞が味の成分を感知して、その情報が脳に伝わり、「甘い」「しょっぱい」などと感じられる、というのが味覚の流れです。
強い塩味でないと物足りなく感じてしまう理由としては、次のようなパターンが挙げられます。
①「塩味」に慣れてしまった
ハムやソーセージなどの加工食品、スナック菓子、先にも挙げたカップ麺などは、食塩が大変多く含まれています。そういったものを多く食べていると、強い塩味に味センサーが慣れてしまい、薄味のものを物足りなく感じるようになってしまうのです。
②加齢
味蕾は加齢によって減少します。味覚は、塩味・甘味・酸味・苦味・旨味の5つに分類され、どれも味蕾で感じ取りますが、特に塩味と甘味は加齢によって感じにくくなると言われています。すると、以前と同じ味付けだと物足りなくなってしまうので、調味料をたくさんかけたり、濃い味付けのものを選択して食べたりするようになります。「濃い味が好きになった」と思っているのではなく、濃い味にしないと以前と同じように味を感じ取れなくなっている、ということです。
③亜鉛不足
味蕾が正常に新陳代謝するには、亜鉛が必要です。亜鉛不足で味蕾が新しく生まれ変われずにいるせいで味を感じにくくなり、食塩の過剰摂取につながっている場合があります。過度なダイエットや極端に偏った食生活をしていると、亜鉛不足に陥ることがあります。また、降圧剤や糖尿病治療薬などの中には、亜鉛を体外に排出してしまうものがあります。薬を服用している方で味覚が鈍くなったと感じる場合は、主治医に相談してみましょう。
④入れ歯
味蕾の大部分は舌にありますが、上顎の入れ歯が被さる部分にも存在するため、入れ歯をしてから味を感じにくくなったと思う人もいるようです。また、入れ歯の材質によっては食べ物の温度等が伝わりにくくなることから、より物足りなさを感じて濃い味付けのものを求めてしまうことがあるようです。このような場合は一度歯科で相談してみましょう。
減塩するには?
以上のように強い塩味に慣れてしまっている人は、減塩を心がけた食事に切り替えると、最初は物足りなく感じるかもしれません。しかし、2週間〜12週間ほど減塩食を続けると、味センサーがその味に慣れて、十分おいしく感じるようになるのです。具体的な減塩のコツは、以下の通りです。
- 香辛料・香味野菜などを利用する
- 「減塩」「低塩」等の表記がある調味料を使う
- 塩分量のわからない外食や、加工食品、スナック菓子を控える
- 麺類の汁を残す
などが挙げられます。別の記事でも紹介しているのでぜひご覧ください。
減塩はサルスクリニックにご相談を!
今回は高血圧治療に必須の減塩のポイントとそもそもなぜ塩分を摂りすぎてしまうのか、味の感じ方に焦点をあててご説明しました。濃い味に慣れてしまった味センサーを、薄い味でも感じ取れるように慣れさせることで、おいしく減塩を続けられるはずです。それでも慣れるまでは難しかったり、一人で取り組むのは挫折してしまいそうだという方もいらっしゃるでしょう。
サルスクリニックには医師や看護師だけでなく、管理栄養士が常駐しており、食事に関するアドバイスも受けながら、高血圧を治療することができます。全員に「毎日自炊をするように!」などの指導ではなく、その方のライフスタイルに合わせてできるだけストレスなく実現可能な方法を一緒に考えてご提案いたします。ぜひお気軽にご相談ください。