清涼飲料水は血糖値を急上昇させる?~人工甘味料との上手な付き合い方~

この記事のポイント

  1. 炭酸飲料や果汁・香料・甘味料などを含む清涼飲料水により、血糖コントロールが乱れることがある
  2. 人工甘味料は、血糖値上昇や摂取カロリーを抑えるのに有効
  3. 人工甘味料の過剰摂取は、糖尿病や糖尿病合併症リスクを高める可能性があるため注意が必要

多量の糖分が含まれている清涼飲料水は、健康な人であっても常飲すると体重増加や糖尿病の発病リスクを高めます。また、清涼飲料水は血糖コントロールを乱すことがあるため注意が必要です。
一方、人工甘味料は低カロリーであり血糖値の上昇にほとんど影響を与えませんが、過剰に摂取すると健康リスクを増加させる可能性があります。したがって、糖尿病の人が安定した血糖コントロールをするためには、清涼飲料水と人工甘味料を控えるか、適切に管理する必要があります。
このコラムでは、清涼飲料水と人工甘味料が糖尿病に与える影響について説明します。

清涼飲料水とは

食品衛生法では「乳酸菌飲料、乳および乳製品を除くアルコール分が1%未満の飲料」と定義されていますが、一般的には、炭酸飲料や果汁・香料・甘味料などを含む飲料の総称です。これらの飲料はさわやかな味わいを感じられるため、暑い日や運動時の水分補給の際に人気です。しかし、一部の清涼飲料水には砂糖や人工甘味料が含まれているため、過剰摂取により健康リスクを引き起こす可能性があります。

人工甘味料とは

砂糖のような天然の甘味料とは異なり、人工的に化学合成された甘味料のことです。人工甘味料は大きく分けると「糖アルコール」と「合成甘味料」の2種類があります。

糖アルコール

自然界にも存在しているアルコール化合物で、ソルビトール、キシリトール、マルチトールなどがあります。熱や酸に強いため、低カロリーの代用甘味料として使用されています。

合成甘味料

アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどがあります。アスパルテームは砂糖と同じく1gあたり4kcalのエネルギー量がありますが、砂糖の約200倍の甘みがあります。アセスルファムカリウムやスクラロースは1gあたり0kcalで、それぞれ砂糖の約200倍、600倍の甘さがあります。これらの合成甘味料は熱に強く水に溶けやすいため、ダイエット飲料やガムなど、低カロリーの食品に広く使用されています。

これらの人工甘味料は、少量で砂糖と同じような甘さを感じられますが、ブドウ糖に変換されないため、血糖値の急上昇を抑えたい場合やカロリー摂取を控えたい場合に役立ちます。

清涼飲料水と糖尿病

清涼飲料水を日常的に摂取することは、砂糖を過剰に摂取することと同じで、血糖値を急上昇させる原因となります。特に、糖尿病の人にとっては血糖コントロールが難しくなり、長期的にみると糖尿病の合併症リスクを高める可能性があります。そのため、糖尿病の人は、清涼飲料水の摂取を制限するか、できるだけ糖分の少ないものを選ぶことが重要です。

清涼飲料水に含まれる砂糖の量(角砂糖1個あたり3 g)

糖尿病の治療についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。


人工甘味料と糖尿病

人工甘味料は低カロリーで甘さを感じることができるため、糖尿病の人にとって魅力的な選択肢となることがあります。しかし、人工甘味料によりカロリーが控えられ、血糖値にほとんど影響がないと言われていても、摂取量には注意が必要です。

食品のカロリーに関する表示のルールは健康増進法で定められています。

  • カロリーゼロ、ノンカロリー:100gあたり5kcal未満
  • 低カロリー、カロリーオフ、カロリー控えめ:食品100gあたり40kcal以上の低減、飲料100mlあたり20kcal以上の低減

これらの表示がある製品でも、人工甘味料が使用されていることが多く、上記のように「カロリーオフ」と表示されていても、エネルギー摂取量が増える可能性があります。
また、人工甘味料は、直接的に血糖値を上昇させることは考えにくいとされていますが、糖代謝に影響を及ぼし、糖尿病発症リスクを高めることが報告されています。

糖尿病の人が人工甘味料を過剰に摂取するリスク

糖尿病の人が人工甘味料を過剰に摂取すると、いくつかのデメリットが生じるリスクがあります。

  1. 食欲の増加
    人工甘味料の「甘み」によって食欲が増進し、エネルギー摂取量が増え、体重増加につながる可能性があります。
  2. 腸内環境への影響
    人工甘味料が腸内細菌のバランスを変化させ、消化器系の問題を引き起こす可能性があります。
  3. 健康リスクの増加
    心血管疾患や代謝症候群などの健康リスクを増加させる可能性があります。

人工甘味料がもたらす健康への影響は不明なことも多い

欧州肥満学会では「低カロリー甘味料の利用は、少なくとも1年間は体重管理に役立ち、2型糖尿病や心血管疾患のリスクを高めないことが示された。」と報告がありましたが、人工甘味料がもたらす健康への影響についてはまだ不明な点も多いことがわかっています。特に、長期的な使用は健康へ悪影響を及ぼす可能性も考えられます。

WHOでは、「糖尿病のある人がどうしても甘いものが欲しくなった時に、砂糖の代わりに人工甘味料を使用することは問題ない」とされていますが、上記のようなメリット・デメリットを理解したうえで、摂取の際は医師や管理栄養士に相談し、上手に付き合っていくことが大切です。

サルスクリニックにはいつも管理栄養士がいます

サルスクリニックには医師や看護師だけでなく、管理栄養士が常駐しています。
食生活だけでなく、ライフスタイルやご職業などの背景を踏まえ、実行できる内容を患者さんと共に考え、その継続をサポートします。

サルスクリニックの栄養指導はこちら

【参考文献】

  • 厚生労働省 生活習慣病予防のための傾向情報サイト:e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
  • 糖尿病ネットワーク 糖尿病ネットワーク Diabetes Net. (dm-net.co.jp)
  • 人工甘味料の使用に関するWHOガイドラインについて考える 002-005_satou2312_wadai_4.indd (alic.go.jp)
  • 『臨床栄養別冊 糖尿病の最新食事療法の なぜに答える 実践編』
フローティングバナー フローティングバナー