前回とココが違う!高血圧ガイドライン2025年改訂の要点まとめ

この記事のポイント

  1. 「高血圧治療の専門書」から「高血圧管理・治療の手引書」へ
  2. これまでと変わらず血圧を守る基本は生活習慣にある
  3. 家庭血圧がより重要視され、一人ひとりに合わせた血圧管理が重要となる時代へ
  4. 一般の方向け資料「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」で血圧管理をより身近に

近年、健康診断などで「血圧が少し高め」と指摘される人が増加していることはご存知でしょうか?
日本高血圧学会が、前回の発表から6年ぶりとなる2025年8月に、「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」を発表しました。
これまでのガイドラインは「医療従事者が治療の方針を決めるための専門書」という印象が強い傾向にありましたが、新しいガイドラインは「日常生活の中でどのように血圧を管理していくか」を重視し、医療知識のない人でも理解しやすく、実践しやすい内容になっています。また、ガイドラインの名称も、「高血圧治療ガイドライン2019」から「高血圧管理・治療ガイドライン2025」へ変更されました。これには、「薬による治療だけでなく、日々の生活を通して血圧を管理していく」という考え方が反映されています。
こちらの記事では、管理栄養士の視点から、ガイドライン改訂の主なポイントと、日常生活における血圧管理のコツをご紹介します。

高血圧ガイドラインの7つの改訂ポイント

1血圧の目標値を統一

今回の改訂では、年齢や病気の有無に関わらず、すべての人が共通して目指すべき血圧の目標値が示されました。

【血圧の目標値】

  • 診察室での目標値:130/80 mmHg 未満
  • 家庭での目標値:125/75 mmHg 未満

これまでは年齢や病気の有無により目標値が異なりましたが、改訂により誰もが同じ目標値に統一され、目指すべき目標値がよりシンプルでわかりやすくなりました。

2.家庭での血圧測定がより重要に

病院やクリニックで測定する「診察室血圧」だけでなく、自宅で測定する「家庭血圧」がこれまで以上に重視されるようになりました。家庭血圧は朝起きてすぐと夜寝る前に測るのが理想です。家庭血圧の記録を続けることで、自分の血圧の傾向を知ることができます。最近では、スマートフォンで簡単に記録できるアプリや血圧計の自動記録機能なども普及し、以前よりも簡単に血圧の管理や記録ができるようになっています。

3血圧だけでなく、体全体のリスクをみる時代へ

これまでの「血圧の数値だけを見る」という考え方から、年齢・糖尿病・腎臓の状態・喫煙状況なども含めた「心血管リスク全体」を評価する考え方に変わりました。同じ血圧値でも体の状態によってリスクが変わるため、一人ひとりに合わせた治療方針を決めることがより重要になります。

4生活習慣改善の強化・薬物治療の早期併用

 これまでと同様、まずは生活習慣の改善が基本であることは変わりませんが、改善後も血圧が下がらない場合は、早めに薬の力を借りる考え方が強調されました。

【まずは生活習慣を見直しましょう】

  • 減塩(食塩摂取量の目標:1日6g未満)
  • 運動(有酸素運動の推奨:週150分程度)
  • 体重管理(体格指数の目安:BMI25未満)
  • 禁煙と適度な飲酒(適度な飲酒量の目安:日本酒1合または中瓶ビール1本程度)

【改善が見られない場合は早めに薬物治療へ】

医師の指示に従い、生活習慣を見直しても変化が見られない場合は、早めに薬物治療の併用を検討しましょう。

5生活習慣の改善を促すデジタルツールやサポートの導入

「改善しなきゃいけないのはわかっているけど、なかなか続かない…」という方も多いと思いますが、今回の改訂では、行動変容を支える仕組みも提案・推奨されています。例えば以下のようなものがあります。 

  • スマートフォンアプリや家庭血圧記録機器の記録機能を使用して現状を手軽に見える化する。
  • 医療機関での尿検査により食塩摂取量やカリウム摂取量を推定し、食事内容を評価する参考指標として活用する。

こうしたデジタルツールやサポートを活用することで、自分の行動や、現状の数値が確認でき、継続しやすくなります。

6一人ひとりに合わせた血圧管理へ

高齢者(特にフレイルの方)や女性(妊娠や更年期)、がん治療後の方など、ライフステージや背景によって、血圧に対する考え方も異なります。新しいガイドラインでは、それぞれの状況に応じた柔軟な血圧管理が重要視されています。

高齢者の場合

フレイルの有無や体調に応じて目標値を調整する。
低血圧になりすぎないように調整し、転倒リスクを避ける。

女性の場合

妊娠中は母体と胎児の両方を守るバランスの取れた血圧管理を、更年期では状況に配慮した管理をおこなう。

【がん治療中・治療後の場合】

がん関連高血圧(オンコ・ハイパーテンション) に注意し、より個別化を重視する。
がん治療薬による血圧への影響も考慮する必要がある。

7一般の人も参加するガイドラインへ

今回は、ガイドライン作成の段階から患者や市民の意見も取り入れ、「行動につながる内容」になるよう工夫されています。また、「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」という、一般の方向けにまとめた資料も公開され、誰もが血圧管理をより身近に感じられるようになりました。

(「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」について詳しくはこちら

普段の食事で高血圧を予防するコツについてはこちらの記事でもご紹介しています。

毎日の生活習慣を見直すきっかけに

今回のガイドライン改訂では、これまでの食生活を大きく変えなければいけない、というような大きな変更はありません。ガイドライン改訂後も、改めて、日々の生活習慣こそが血圧を守る基本であるということが示されています。これまでと同様、高血圧は、食事・運動・睡眠・ストレスなど、日常生活と深く関係しています。

ここでは、今日から取り入れやすい実践ポイントをご紹介します。

食事編

1.減塩する

高血圧などの治療・予防が必要な場合、1日の塩分摂取目標は6g未満です。つまり、食事を1日3食摂る場合、1食の塩分摂取量は2g未満を目指すことになります。「1食2g未満」と聞くと難しいことのように感じますが、以下のように、毎食少しずつ工夫をすれば、おいしく無理なく減塩が可能です。次の食事から、ぜひ試してみませんか。

①減塩の基本!だしや香味野菜、スパイスを活用する

味わいがぐっと広がり、塩分の高い調味料(塩、醤油、味噌など)の使用量を減らすことができます。

②低塩の調味料を使用する(ケチャップやマヨネーズ、低塩調整された塩・醤油・味噌 など)

低塩に調整された調味料であれば、いつもの味から大幅に変わることはないため、無理なく減塩できます。

③むやみに調味料を使わないようにする

調味料を使う際は、直接料理に「かける」よりも「小皿に出して少量つける」ことで舌に味がしっかりと伝わり、一口ごとの摂取塩分量を減らすことができます。

④麺類などのスープ(残り汁)は基本飲まない

麺類などのスープは塩分が高いものが多いため、飲み干さずに残すことを習慣化させましょう。

2.カリウムを意識して摂る

私たちの体は、塩分(ナトリウム)を摂りすぎると、水分を溜め込んでしまい血圧が上がりやすくなります。そのため、カリウムの摂取が重要になります。カリウムは、体の中の余分な塩分(ナトリウム)を、尿と一緒に体の外へ出す働きがあります。つまり、カリウムを摂ることで体内の塩分を減らすことができるため、血圧が下がりやすくなります。カリウムは、野菜や果物、海藻や豆類に多く含まれます。例えば、間食にバナナやみかんを食べたり、サラダや味噌汁に海藻を足すなど、日々の食事に追加するのがおすすめです。また、カリウムは水に溶けやすい特徴があり、長時間煮たり茹でたりすると煮汁にカリウムが流出するため、電子レンジ調理や短時間の蒸し料理にするのがおすすめです。

3.お酒は適量で

多くの研究で、摂取するアルコール量が多くなればなるほど、血圧が上昇しやすいことが指摘されています。そのため、アルコールは適量で、休肝日を週2日以上設けることが大切です。

※適量の目安:日本酒1合(180ml)またはビール中ジョッキ1杯(500ml)

生活習慣編

1.家庭での血圧測定を習慣化する

血圧は、緊張や不安、時間帯によって大きく変動します。そのため、病院やクリニックだけでなく、家庭で測ることも大切です。朝起きてすぐと夜寝る前に測り、手帳やアプリなどに記録してみましょう。数値の変化を知ることで、自分の生活と血圧の関係が分かりやすくなります。毎日同じ条件(起床後・就寝前)で測った家庭血圧のデータは、医師が治療方針や薬の量を決めるための、最も信頼できる情報にもなります。

2.体重を減らす

肥満(BMI25以上)は、血管や心臓に負担がかかるため、BMI25以上の人は減量がポイントです。肥満を放置すると、血管が広がり、血液をサラサラにするアディポネクチンというホルモンが減ったり、大きくなった体全体に血液を送り届けなければならないため、血液量が増えて血圧が上がったりします。また、ある研究では、体重が 1kg減るごとに、血圧が 1mmHg程度下がったとされるデータもあります。体重を減らして標準体型(BMI25未満)を目指すことは、薬を使わずに血圧を下げるための効果的な生活習慣の改善方法とも言えます。 肥満に該当する方は、BMI25未満を目標に、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。1食ごとに「主食・主菜・副菜」をそろえると栄養の偏りが少なくなります。食べすぎを防ぐためには「腹八分目」を意識することがポイントです。

3.禁煙する

 タバコに含まれるニコチンは交感神経を刺激するため、血圧が上昇します。また、タバコの煙に含まれる一酸化炭素も、心拍数の増加や血圧を上昇させるリスクが複数確認されています。喫煙は高血圧だけでなく、動脈硬化も悪化させるため、禁煙することを強くおすすめします。

4.体を動かす習慣を少しずつ取り入れる

ガイドラインでは週150分の有酸素運動が推奨されていますが、「まとめてこの時間を確保するのは難しい・・・」という方も多いですよね。ウォーキングや自転車などの有酸素運動を、1日30分、週5日程度を目標に続けてみましょう。とはいえ、「1日30分でもハードルが高い」と感じられる方もいらっしゃるかと思います。そのような方は、いきなり運動をはじめるのではなく、まずは「じっとしている時間を短くする」「動く意識を持つ」「座らない工夫をする」ことを意識してみましょう。慣れてきたら、ウォーキングや自転車などの有酸素運動を1日10分からでも取り入れてみると良いでしょう。忙しい方は、「帰りは一駅分歩く」「エスカレーターではなく階段を使う」「エレベーターはジャンプをしながら待つ」「いつもより早歩きでスーパーへ向かう」など、隙間時間の活用や日常生活の中でもできるよう工夫して取り入れると続けやすくなります。

5.睡眠とストレスを整える

寝不足や強いストレスは血圧を上げやすいです。就寝前のスマホ利用を控え、リラックスできる時間を設けましょう。好きな音楽を聴いたり深呼吸をするなど、自分に合ったリフレッシュ方法を見つけることが大切です。

サルスクリニックには管理栄養士がいます

血圧の管理といっても、難しいことをするわけではありません。一人ひとりに合った、小さな習慣を積み重ねることが大切です。今回ご紹介した高血圧管理・治療の例はほんの一部です。サルスクリニックには、医師や看護師だけでなく管理栄養士も常駐しているため、食事や栄養についてお悩みのことがございましたらお気軽にご相談ください。治療だけでなく、無理なく続けられる生活習慣づくりを一緒に考え、その継続をサポートします。

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参考文献