1型糖尿病と歩む、おいしく自由な食事療法の新常識とは?~食事は「制限」から「調整」へ~

この記事のポイント

  1. 糖尿病はインスリンの欠乏による「1型糖尿病」と、インスリンの分泌不全・抵抗性による「2型糖尿病」に大きく分けられる
  2. 自由な食事を実現するためには「カーボカウント」を用いた血糖値コントロールが最も有効
  3. たんぱく質・脂質による「時間差高血糖」にも注意
  4. テクノロジーを味方に、食べ物との相性を記録して「判断材料」を増やそう

1型糖尿病と診断されたとき、多くの方が抱く不安の一つが「食事について」ではないでしょうか。「甘いものは一生禁止?」「家族と同じメニューは食べられないの?」と、かつての厳しい食事制限が主流だった時代の名残から、心配される方もいるかもしれません。
しかし、インスリン製剤の進歩や血糖測定デバイスの普及により、現在の1型糖尿病治療では食事を一律に「制限」するのではなく、自分の体に合わせた「調整」へとシフトしています。
本コラムでは、混同されやすい2型糖尿病との違いや最新の知見に基づいた「カーボカウント」の活用法、血糖値に影響を与えるたんぱく質・脂質との付き合い方などについて詳しく解説します。

似ているようで全く違う「1型糖尿病」と「2型糖尿病」

糖尿病は、その成り立ちによっていくつかの種類に分類されますが、大きく分けると「1型糖尿病」「2型糖尿病」「その他の特定の機序、疾患によるもの」、そして「妊娠糖尿病」があります。

特に「1型」と「2型」は、数字の違いだけですが、発症のメカニズムは全く異なります。糖尿病と診断されると、周囲から「不摂生をしたからではないか」といった誤解に基づいたアドバイスを受け、傷つく方もいらっしゃるかもしれません。しかし、不摂生が原因ではない糖尿病もあります。糖尿病の違いについて正しく理解し、自分だけでなく周囲にも共有していきましょう。

1型糖尿病:インスリンの「欠乏」

1型糖尿病は、自己免疫疾患などをきっかけに、血糖値を下げるホルモン「インスリン」を合成・分泌する膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが全く(あるいはほとんど)出なくなる病気です。生活習慣とは関係なく、子供から高齢者まで誰にでも発症する可能性があります。
そのため、1型糖尿病では注射やポンプでインスリンを補う治療(インスリン療法)が必須となります。インスリン療法を適切におこなうことによって、健康な人と変わらない日常生活を送ることができ、合併症を予防することが可能です。

2型糖尿病:インスリンの「分泌不全・抵抗性」

2型糖尿病は、遺伝的な要因に加えて過食・運動不足・ストレスなどの生活習慣が重なり、インスリンが出にくくなったり、効きが悪くなったり(インスリン抵抗性)することで血糖値が高くなります。2型糖尿病と診断されたすべての方に生活習慣の問題があるわけではありませんが、食事や運動の見直しで体重をコントロールすると、インスリンの分泌能力や効き目を改善しやすくなります。

血糖コントロールにおけるコンパスの役割「カーボカウント」

自由な食事を実現するための最も有効な手段が、「カーボカウント(Carbohydrate Counting)」です。炭水化物(Carbohydrate)を計算(カウント)するという意味で、食後血糖値に最も影響を与える「糖質量」に注目する手法です。

なぜ糖質量だけに注目するのか?

食事に含まれる三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)のうち、炭水化物は摂取後短時間(約2時間以内)で100%近くが糖になり、血糖値を急激に押し上げます。一方、食物繊維はほとんど消化吸収されないため、食後血糖値は「糖質摂取量」に大きく依存します。したがって、糖質量を把握することは、食後血糖値の「頂点(ピーク)」を予測することに直結するのです。

<「炭水化物」と「糖質」の違い>

厳密には「炭水化物=糖質+食物繊維」ですが、一般的な主食や甘いものは食物繊維を含んでいる割合が少ないため、基本的には「炭水化物量 ≒ 糖質量」と考えて差し支えありません。

基礎カーボカウント(把握と安定)

毎食の糖質摂取量を一定にすることで、食後血糖値の安定化を図る方法です。

  • メリット: 補うインスリン量を固定できるため、計算の負担が少ない。
  • 対象: 食事療法のみの方、内服薬や一定量のインスリンで治療する方、インスリンの計算が苦手な方。
  • 注意点:好きなものを好きなだけ食べることが難しく、決まった糖質量に合わせて食事をとる必要があります。

応用カーボカウント(食事に合わせて調整)

応用カーボカウントとは、食事に含まれる糖質量に合わせて「超速効型インスリン」の投与量を都度調整する方法です。

  • メリット: 外食、旅行、急な会食など、ライフスタイルに合わせた自由な食事が楽しめます。
  • 対象: 食前に超速効型インスリン(またはインスリンポンプ)を使用している方。
  • 注意点: 食事の糖質量(カーボ量)と食前の血糖値に応じて、インスリン量を自分で計算・調整しますが、糖質さえ計算すれば「何をどれだけ食べても良い」というわけではありません。食べ過ぎによるカロリーオーバーや、体重増加には注意しましょう。

※カーボカウントに興味がある場合は、自己判断ではおこなわず、一度医師にご相談ください。具体的な実施方法については、管理栄養士が栄養指導にて詳しく説明いたします。

たんぱく質と脂質がもたらす「時間差高血糖」の正体とは

カーボカウントを実践して正しく糖質を計算していても、数時間後に血糖値が上がってしまうことがあります。これは、たんぱく質や脂質の吸収・変化の「時間差」による影響です。

  • たんぱく質: 体内でゆっくりと糖に変化(糖新生)するため、食後2.5〜5時間ほど経ってから血糖値が上昇します。
  • 脂質: 胃の排泄能(動き)を低下させることで、全体の消化吸収を遅らせます。これにより、食直後はむしろ低血糖になりやすく、食後4時間以降になってからじわじわと血糖を上昇させる要因になります。そして、少なくとも7時間以上にわたり血糖値の上昇が続きます。

例えば、夕食に焼肉や天ぷら、ピザなどの「たんぱく質や脂質を多く含む食べ物」をたくさん食べた日は、就寝前から翌朝にかけて血糖値が上昇しやすくなります。

たんぱく質や脂質が血糖値にどう影響するかは、患者さんごとの病態・体調、摂取した食品の種類などによって異なり、糖質のように、綺麗に「摂取量と血糖値が比例する」というわけではありません。そのため、インスリンの追加投与や注入パターンの変更については、自身のデータを蓄積し、経験を重ねながら調整していく必要があります。

テクノロジーを味方につけてストレスを軽減

現在の治療では、持続血糖測定器(CGM)や、FreeStyleリブレなどを使用したフラッシュグルコースモニタリング(FGM)が欠かせません。これらは単に血糖値を知るための道具ではなく、自分自身と食べ物の「相性」を知るための「答え合わせツール」にもなります。「このラーメンを食べると、自分の場合は4時間後に血糖値が上がってくる」「運動後は血糖値がいつもより低い」といった傾向を可視化・認識できれば、それは貴重な「判断材料」になります。数値の上下に一喜一憂するのではなく、「貴重なデータとして認識し、次に活かす」というスタンスを持つことが、心の安定に繋がります。

血糖自己測定の方法についてはこちらの記事でもご紹介しています。


私たちは味方であり、あなたの「伴走者」です

1型糖尿病の食事管理は毎日必要です。しかし、完璧を目指して自分を追い込む必要はありません。食事の仕組みと自分自身の血糖変動の特徴を理解し、適切なインスリン調整や食事管理を身につけることで、食生活の選択肢を広げることができます。

「たまにはケーキを食べたい」「旅行先のご当地グルメを楽しみたい」。そんな思いも含めてぜひ相談してください。当院では、医師、看護師、管理栄養士がチームとなり、一人ひとりのライフスタイルや希望に合わせたコントロール方法を一緒に考えていきます。自分に合った血糖管理の方法を見つけながら、おいしく豊かな食生活を楽しんでいきましょう。

サルスクリニックにはいつも管理栄養士がいます

サルスクリニックには、医師や看護師だけでなく、管理栄養士が常駐しています。
食事や栄養についてお悩みのことがございましたら、お気軽にご相談ください。
みなさまが健康で充実した生活を送れるようサポートいたします。

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参考文献

  • 大阪市立大学院医学研究科発達小児学,大阪市立大学医学部附属病院栄養部編 さらにかんたん!カーボカウント 初版,2019,クリニコ出版
  • 日本糖尿病学会 編・著 [医療者のための]カーボカウント指導テキスト「糖尿業食事療法のための食品交換表」準拠 第3刷,2023,文光堂
  • 小須田南,日本大学医学部内科学系糖尿病代謝内科学分野,「各種病態における栄養管理・治療の最近の展開」トピックス:カーボカウント,日大医誌 78 (4): 247–250 (2019)
  • 日本病態栄養学会編集 病態栄養専門管理栄養士のための病態栄養ガイドブック 改訂第8版,2025,南江堂
  • 日本糖尿病療養指導士認定機構 編・著 糖尿病療養指導ガイドブック 2023 糖尿病療養指導士の学習目標と課題 第1版,2023,メディカルレビュー社