普通の方でも中性脂肪は食後に増える
脂質の一種である中性脂肪はエネルギー源であるとともに、臓器の保護や体温の維持、ビタミンAなどの脂溶性ビタミンの吸収を助けるなどのはたらきがあります。しかし、中性脂肪が増え過ぎるとエネルギーとして全てを消費することができないため、脂肪として体に蓄えられて肥満や動脈硬化などを引き起こす原因となります。
中性脂肪は食後だんだんと高くなり、3~4時間後にもっとも上昇し、それから6時間ほどは高い状態が続きます。
増え方が著しく戻らない場合は食後高脂血症かも?
通常であれば食後4時間ほどがもっとも中性脂肪が高く、その後は徐々に中性脂肪は低下します。しかし、食後6時間以上経っても中性脂肪が高い状態のままであった場合には脂質異常症の1つである食後高脂血症である可能性が考えられます。
食後高脂血症の正体とは?
通常であれば食後に上昇した中性脂肪は十二指腸で胆汁によって乳化され、分解されていきます。しかし、分解がスムーズに進まないと、レムナントという中性脂肪の塊が血液中に長くとどまることになります。つまり、食後TG(中性脂肪)を含んだレムナントがたまっている状態が食後高脂血症の正体です。
これまで動脈硬化性疾患の中心は悪玉コレステロールの1つであるLDLが原因であると考えられてきましたが、最近の研究ではTGがまだ残っているレムナントも動脈硬化を発症させることが報告されています。レムナントが血液中に長くとどまり血管壁に入り込んでしまうと、コレステロールがたまって動脈硬化を引き起こす恐れがあります。また、中性脂肪の値が高いほど、心筋梗塞を引き起こす危険性が高まることも分かっています。
中性脂肪の検査方法とは? ~空腹時の検査では食後高脂血症は見つからないことも~
中性脂肪は血液検査でTGを調べることで確認できます。TGの基準値は30~149mg/dLと決められており、それ以上である場合に中性脂肪が高いと判断されます。
健康診断の場合、10時間以上絶食した後の中性脂肪を検査しますが、食後高脂血症が疑われる場合には食後の中性脂肪を検査する必要があります。そのため、食後高脂血症が疑われる場合には、別日程で食後の中性脂肪を調べることが推奨されます。
食後高脂血症への食事療法とは?
食後高脂血症の治療は基本的に食事療法を行います。脂質摂取量の減少に加えて調理に用いる油 や一緒に摂取する食物を考慮することが重要です。
以下の5つの栄養素には中性脂肪の吸収を抑えるはたらきがあるので、献立を立てる際にご活用ください。
- 食物繊維
食物繊維は小腸での脂質の吸収を遅らせ、食後のTG値およびカイロミクロン(小腸から吸収されたTGを含む栄養素)の形成を抑制します。食物繊維が多く含まれる食品としてオートミール、小麦粉、ライ麦などが挙げられます。 - ポリフェノール
ポリフェノールには、抗酸化作用や酸化ストレス抑制に効果があり、空腹時および食後TG値の上昇を抑制します。ポリフェノールは玄米や豆類、かんきつ類などに多く含まれます。 - 炭素数10以下の中鎖脂肪酸
炭素数10以下の中鎖脂肪酸であれば、小腸上皮でTGへの再合成なく吸収されカイロミクロンが形成されないため、食後高脂血症が改善されます。 - ジアシルグリセロール
ジアシルグリセロールが多く含まれる食用油は、TGと異なり小腸上皮でα-グリセロリン酸経路を通るため、カイロミクロンの産生がゆっくりと行われます。その結果、ジアシルグリセロールが多く含まれる食用油を長期間使うと内臓脂肪・皮下脂肪および脂肪肝を改善させ、動脈硬化プラークを改善することが知られています。 - エイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサヘキサエン酸(DHA)
魚油などに多く含まれるEPAやDHAは、小腸で吸収されにくく、カイロミクロンの形成を抑える効果があるとされています。
中性脂肪に関する検査やご相談はサルスクリニックへ
中性脂肪が高かったとしても自覚症状がほとんど現れません。また、食後高脂血症は通常の健康診断では見つかりにくいことに加え、治療せずにいると心筋梗塞や狭心症を発症しやすいことが分かっています。病気の早期発見・早期治療のためにも、肥満や生活習慣病のある方は積極的に食後の中性脂肪も検査していただきたいと思います。
サルスクリニックでは検診・健診と診療をワンストップで行っており、スマートフォンでの予約と決済にも対応しています。中性脂肪について気になることがある方はぜひ一度サルスクリニックを受診ください。
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